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「ん、・・・コルム、」
甘く、霞がかる脳内をなんとかしたくて自分の髪を引っ掻き回しては引っ張っていたけど。
その手を離し、コルムの体に手を置いた。力の入らない両手でやわやわとコルムの頭の輪郭をなぞり、髪を掴んだ。
好きか、とか。
そんな当たり前のことを聞くな。
いつもオレの側にいただろう。
オレは好きじゃない奴の側になんかいない。
もちろんコルムのいう“好き”とは違うけど。
お前の言い方に、オレはとってもとってもムカついたぞ。
「ベイラ、俺のベイラ。一言でいいんだ。俺を好きだと───ンがっ!」
渾身の頭突きが炸裂した。
「ひゃんっ!」
ざまあみろと思った瞬間、オレの息子は暴発していた。頭突きの衝撃で、コルムの手に擦られてイッてしまったのだ。
「「・・・・・」」
無言になる二人。
オレの脇にどさりと体を横たえたコルムは両手で鼻を押さえている。
鼻血案件かも。
オレはオレで、暴発してしまった羞恥に体を火照らせながら、両手で股間を隠した。
荒い息がなかなか収まらない。
ぷ。
「──はあ。オレたち、カッコわり」
ぷぷ。こみ上げてくる笑いを抑えきれない。
「アッコワウイノハオエラ・・・」
なんて?
だがどうやら正気に戻ったらしい。オレに背を向け鼻を摘みフガフガいってるコルムにティッシュを投げてやった。もちろんオレ用のティッシュも確保してアレの始末をする。
シャツを直し、簡単に身仕度をしてベッドから降りた。
「シャワーしてくる」
「待て!俺も行くから!一人で行くなんて危ないだろう!」
ふんがーっとすごい勢いでコルムがオレの前に立ちふさがった。
「危ないって。一人でも大丈夫だし」
この学園に寮は4つあって、第1寮は1年生、第2寮は騎士科の2、3年生、第3寮は文系の科の2、3年生。
そしてここ、第4寮は騎士科と文系の2、3年生が入り混じった寮だ。
もちろんそれぞれに女子寮、男子寮と分かれているわけだが。
数年前から平民も多く受け入れるようになった学園側が急遽増築した寮だ。設備も整っているし、トイレやシャワー室が新しくて綺麗なのがとても嬉しい。
だが、ここ最近は騎士科に進む生徒が多く、40人が定員のこの寮で、文系はオレの他にほんの数人しかいない。
だからコルムも荒っぽい騎士科の生徒たちに絡まれたら大変だと心配なのだろう。
が、いくらひょろひょろだからってオレだって男だ。自分の身ぐらい一人で守れるのに。
いつも夕食前に二人で連れ立ってシャワー室に行くが、こんなことの後だ、一人で行きたい。
なのにコルムはささっと二人分のお風呂セットを用意し、鼻の詰め物をぺっとごみ箱に捨てた。
──そういえば、オレ、何も持たずに出るところだった。
「・・・ま、まあ、一緒に行ってやってもいい、けどさ。おい、エスコートすんな」
不満はあるが行き先が同じならしょうがない。
かなり気まずいけど。
二人で黙り込んで廊下を歩いていると、前から体格の良い生徒が歩いてきた。シャワー帰りなのだろう。濡れた髪をガシガシとタオルで拭いている。
一つ上の3年生で、コルムと同じ騎士科の生徒だ。同じ寮だからか、何度か声を掛けられたことがある。が、苦手な先輩だ。
「よお、お前たちはこれから?相変わらず仲良しだな──コルム、天使ちゃんはそんなにいいのかい?」
これだ。この先輩は文系のオレのひょろひょろ体形が気に障るのか、いつもいつもオレの体をじろじろ見ては“天使ちゃん”だの“お嬢ちゃん”だのうるさいのだ。
「へえ・・・、よくよく見れば綺麗な顔してんのな。瞳の色も、茶に金が散って、」
「先輩」
ずい、とコルムがオレと先輩の間に割って入った。
オレの背はコルムより少しだけ、いや今やかなり低いし、横幅もかなりあれなので、まるで山が立ちふさがったかのように前が何も見えなくなった。
「お?退けよ。先輩の邪魔すんじゃねえよ」
「人のものに手を出すっていうなら俺も容赦しませんよ?」
唸るようなコルムの低い声。
騎士科は上下関係が厳しいと聞くが大丈夫なのか?
息を詰めてコルムの背中を見守っていると、ち、舌打ちする音がして先輩は離れていった。
「・・・先輩にあんな態度、良かったのか?」
「俺の方が強いから何とかなる」
「そうか?──あ、部活の腐女子先輩、侯爵令嬢だそうだから絡まれるようなら頼ろう!」
「あー・・・、あの先輩か。逆に借りを作りたくないような」
「まあ、な。オレたちに変なポーズとれとか言いそうだな。はは・・・」
ってこんな会話気まず過ぎる!笑いごとじゃないだろうオレ!さっき何をされたか忘れたのかオレ!
「や、やっぱり腐女子先輩に相談するのはやめておこう。絡まれたらオレも行くからな。オレだってそこそこ強いし」
ふんっと力こぶを作りコルムを見ると、さっと顔を背けられた。
「ん。・・・さっき、良い頭突きだったよ」
「おう」
声震えてるのバレバレなんだよ。
とりあえず今夜から筋トレに励む。オレをちっちゃい、弱っちいと思っている奴等を見返してやるんだ。
お前もだぞ、コルム!
甘く、霞がかる脳内をなんとかしたくて自分の髪を引っ掻き回しては引っ張っていたけど。
その手を離し、コルムの体に手を置いた。力の入らない両手でやわやわとコルムの頭の輪郭をなぞり、髪を掴んだ。
好きか、とか。
そんな当たり前のことを聞くな。
いつもオレの側にいただろう。
オレは好きじゃない奴の側になんかいない。
もちろんコルムのいう“好き”とは違うけど。
お前の言い方に、オレはとってもとってもムカついたぞ。
「ベイラ、俺のベイラ。一言でいいんだ。俺を好きだと───ンがっ!」
渾身の頭突きが炸裂した。
「ひゃんっ!」
ざまあみろと思った瞬間、オレの息子は暴発していた。頭突きの衝撃で、コルムの手に擦られてイッてしまったのだ。
「「・・・・・」」
無言になる二人。
オレの脇にどさりと体を横たえたコルムは両手で鼻を押さえている。
鼻血案件かも。
オレはオレで、暴発してしまった羞恥に体を火照らせながら、両手で股間を隠した。
荒い息がなかなか収まらない。
ぷ。
「──はあ。オレたち、カッコわり」
ぷぷ。こみ上げてくる笑いを抑えきれない。
「アッコワウイノハオエラ・・・」
なんて?
だがどうやら正気に戻ったらしい。オレに背を向け鼻を摘みフガフガいってるコルムにティッシュを投げてやった。もちろんオレ用のティッシュも確保してアレの始末をする。
シャツを直し、簡単に身仕度をしてベッドから降りた。
「シャワーしてくる」
「待て!俺も行くから!一人で行くなんて危ないだろう!」
ふんがーっとすごい勢いでコルムがオレの前に立ちふさがった。
「危ないって。一人でも大丈夫だし」
この学園に寮は4つあって、第1寮は1年生、第2寮は騎士科の2、3年生、第3寮は文系の科の2、3年生。
そしてここ、第4寮は騎士科と文系の2、3年生が入り混じった寮だ。
もちろんそれぞれに女子寮、男子寮と分かれているわけだが。
数年前から平民も多く受け入れるようになった学園側が急遽増築した寮だ。設備も整っているし、トイレやシャワー室が新しくて綺麗なのがとても嬉しい。
だが、ここ最近は騎士科に進む生徒が多く、40人が定員のこの寮で、文系はオレの他にほんの数人しかいない。
だからコルムも荒っぽい騎士科の生徒たちに絡まれたら大変だと心配なのだろう。
が、いくらひょろひょろだからってオレだって男だ。自分の身ぐらい一人で守れるのに。
いつも夕食前に二人で連れ立ってシャワー室に行くが、こんなことの後だ、一人で行きたい。
なのにコルムはささっと二人分のお風呂セットを用意し、鼻の詰め物をぺっとごみ箱に捨てた。
──そういえば、オレ、何も持たずに出るところだった。
「・・・ま、まあ、一緒に行ってやってもいい、けどさ。おい、エスコートすんな」
不満はあるが行き先が同じならしょうがない。
かなり気まずいけど。
二人で黙り込んで廊下を歩いていると、前から体格の良い生徒が歩いてきた。シャワー帰りなのだろう。濡れた髪をガシガシとタオルで拭いている。
一つ上の3年生で、コルムと同じ騎士科の生徒だ。同じ寮だからか、何度か声を掛けられたことがある。が、苦手な先輩だ。
「よお、お前たちはこれから?相変わらず仲良しだな──コルム、天使ちゃんはそんなにいいのかい?」
これだ。この先輩は文系のオレのひょろひょろ体形が気に障るのか、いつもいつもオレの体をじろじろ見ては“天使ちゃん”だの“お嬢ちゃん”だのうるさいのだ。
「へえ・・・、よくよく見れば綺麗な顔してんのな。瞳の色も、茶に金が散って、」
「先輩」
ずい、とコルムがオレと先輩の間に割って入った。
オレの背はコルムより少しだけ、いや今やかなり低いし、横幅もかなりあれなので、まるで山が立ちふさがったかのように前が何も見えなくなった。
「お?退けよ。先輩の邪魔すんじゃねえよ」
「人のものに手を出すっていうなら俺も容赦しませんよ?」
唸るようなコルムの低い声。
騎士科は上下関係が厳しいと聞くが大丈夫なのか?
息を詰めてコルムの背中を見守っていると、ち、舌打ちする音がして先輩は離れていった。
「・・・先輩にあんな態度、良かったのか?」
「俺の方が強いから何とかなる」
「そうか?──あ、部活の腐女子先輩、侯爵令嬢だそうだから絡まれるようなら頼ろう!」
「あー・・・、あの先輩か。逆に借りを作りたくないような」
「まあ、な。オレたちに変なポーズとれとか言いそうだな。はは・・・」
ってこんな会話気まず過ぎる!笑いごとじゃないだろうオレ!さっき何をされたか忘れたのかオレ!
「や、やっぱり腐女子先輩に相談するのはやめておこう。絡まれたらオレも行くからな。オレだってそこそこ強いし」
ふんっと力こぶを作りコルムを見ると、さっと顔を背けられた。
「ん。・・・さっき、良い頭突きだったよ」
「おう」
声震えてるのバレバレなんだよ。
とりあえず今夜から筋トレに励む。オレをちっちゃい、弱っちいと思っている奴等を見返してやるんだ。
お前もだぞ、コルム!
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