オレの優しい幼馴染

mm

文字の大きさ
5 / 15

5

しおりを挟む
「ん、・・・コルム、」

 甘く、霞がかる脳内をなんとかしたくて自分の髪を引っ掻き回しては引っ張っていたけど。
 その手を離し、コルムの体に手を置いた。力の入らない両手でやわやわとコルムの頭の輪郭をなぞり、髪を掴んだ。

 好きか、とか。
 そんな当たり前のことを聞くな。
 いつもオレの側にいただろう。
 オレは好きじゃない奴の側になんかいない。
 もちろんコルムのいう“好き”とは違うけど。

 お前の言い方に、オレはとってもとってもムカついたぞ。

「ベイラ、俺のベイラ。一言でいいんだ。俺を好きだと───ンがっ!」

 渾身の頭突きが炸裂した。
 
「ひゃんっ!」

 ざまあみろと思った瞬間、オレの息子は暴発していた。頭突きの衝撃で、コルムの手に擦られてイッてしまったのだ。

「「・・・・・」」

 無言になる二人。
 オレの脇にどさりと体を横たえたコルムは両手で鼻を押さえている。
 鼻血案件かも。
 オレはオレで、暴発してしまった羞恥に体を火照らせながら、両手で股間を隠した。
 荒い息がなかなか収まらない。

 ぷ。

「──はあ。オレたち、カッコわり」

 ぷぷ。こみ上げてくる笑いを抑えきれない。

「アッコワウイノハオエラ・・・」

 なんて?
 だがどうやら正気に戻ったらしい。オレに背を向け鼻を摘みフガフガいってるコルムにティッシュを投げてやった。もちろんオレ用のティッシュも確保してアレの始末をする。
 シャツを直し、簡単に身仕度をしてベッドから降りた。

「シャワーしてくる」
「待て!俺も行くから!一人で行くなんて危ないだろう!」

 ふんがーっとすごい勢いでコルムがオレの前に立ちふさがった。

「危ないって。一人でも大丈夫だし」

 この学園に寮は4つあって、第1寮は1年生、第2寮は騎士科の2、3年生、第3寮は文系の科の2、3年生。
 そしてここ、第4寮は騎士科と文系の2、3年生が入り混じった寮だ。
 もちろんそれぞれに女子寮、男子寮と分かれているわけだが。
 数年前から平民も多く受け入れるようになった学園側が急遽増築した寮だ。設備も整っているし、トイレやシャワー室が新しくて綺麗なのがとても嬉しい。
 だが、ここ最近は騎士科に進む生徒が多く、40人が定員のこの寮で、文系はオレの他にほんの数人しかいない。
 だからコルムも荒っぽい騎士科の生徒たちに絡まれたら大変だと心配なのだろう。
 が、いくらひょろひょろだからってオレだって男だ。自分の身ぐらい一人で守れるのに。

 いつも夕食前に二人で連れ立ってシャワー室に行くが、こんなことの後だ、一人で行きたい。
 なのにコルムはささっと二人分のお風呂セットを用意し、鼻の詰め物をぺっとごみ箱に捨てた。
 ──そういえば、オレ、何も持たずに出るところだった。

「・・・ま、まあ、一緒に行ってやってもいい、けどさ。おい、エスコートすんな」

 不満はあるが行き先が同じならしょうがない。
 かなり気まずいけど。
 二人で黙り込んで廊下を歩いていると、前から体格の良い生徒が歩いてきた。シャワー帰りなのだろう。濡れた髪をガシガシとタオルで拭いている。
 一つ上の3年生で、コルムと同じ騎士科の生徒だ。同じ寮だからか、何度か声を掛けられたことがある。が、苦手な先輩だ。

「よお、お前たちはこれから?相変わらず仲良しだな──コルム、天使ちゃんはそんなにいいのかい?」

 これだ。この先輩は文系のオレのひょろひょろ体形が気に障るのか、いつもいつもオレの体をじろじろ見ては“天使ちゃん”だの“お嬢ちゃん”だのうるさいのだ。

「へえ・・・、よくよく見れば綺麗な顔してんのな。瞳の色も、茶に金が散って、」
「先輩」

 ずい、とコルムがオレと先輩の間に割って入った。
 オレの背はコルムより少しだけ、いや今やかなり低いし、横幅もかなりあれなので、まるで山が立ちふさがったかのように前が何も見えなくなった。

「お?退けよ。先輩の邪魔すんじゃねえよ」
「人のものに手を出すっていうなら俺も容赦しませんよ?」

 唸るようなコルムの低い声。
 騎士科は上下関係が厳しいと聞くが大丈夫なのか?
 息を詰めてコルムの背中を見守っていると、ち、舌打ちする音がして先輩は離れていった。

「・・・先輩にあんな態度、良かったのか?」
「俺の方が強いから何とかなる」
「そうか?──あ、部活の腐女子先輩、侯爵令嬢だそうだから絡まれるようなら頼ろう!」
「あー・・・、あの先輩か。逆に借りを作りたくないような」
「まあ、な。オレたちに変なポーズとれとか言いそうだな。はは・・・」

 ってこんな会話気まず過ぎる!笑いごとじゃないだろうオレ!さっき何をされたか忘れたのかオレ!

「や、やっぱり腐女子先輩に相談するのはやめておこう。絡まれたらオレも行くからな。オレだってそこそこ強いし」

 ふんっと力こぶを作りコルムを見ると、さっと顔を背けられた。

「ん。・・・さっき、良い頭突きだったよ」
「おう」

 声震えてるのバレバレなんだよ。
 とりあえず今夜から筋トレに励む。オレをちっちゃい、弱っちいと思っている奴等を見返してやるんだ。
 お前もだぞ、コルム!



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

冒険者の幼馴染と、ずっとその隣にいたい男の話

くろねこや
BL
お前の隣で、一緒に歳をとって生きていくんだと思ってた。 例えお前が誰かと結婚しても、子どもが生まれても。 ◇ 15歳になると神様から魔法が与えられる世界で、たった一人魔法が使えないイスト。 火魔法と氷魔法を授かった幼馴染は冒険者になった。 オレにあるのは畑や動物たちをちょこっと元気にする力だけ…。 ところが、そこへ謎の老婆が現れて…。 え? オレも冒険者になれるの? “古代種様”って何?! ※『横書き』方向に設定してお読みください。 ※『設定 こぼれ話』は情報を追加・修正することがあります。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

姫ポジ幼馴染の貞操を全力で守っていたのに、いつの間にか立場が逆転して伸し掛かられた件

イセヤ レキ
BL
タイトル通りのお話しです。 ※全七話、完結済。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

処理中です...