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「──そしたらコルムがこう言ったのよ。“俺にはずっと好きな人がいる。その人以外と付き合う気は全くない”って。昼休みの中庭で」
放課後、図書室脇の小さな資料室。歴史部の部室でもあるここで、オレは自分の研究テーマの“食文化の移り変わり”の資料整理をしつつ腐女子先輩から最近のコルムのやらかしのあれこれを聞いていた。
あれから1週間。オレは、警戒しつつも結局コルムと同室のまま暮らしている。
「あー、コルムって本当に一途。あんなにイケメンなのにちゃらちゃらしてないし」
「・・・先輩、コルムのこと好きになっちゃいました?」
「んん?何言っているのかなチミは。んなわけないよね。今そんな話してないよね。私はね、チミから聞きたいのだよ。そんなコルムに絆されて幼馴染みから恋人になったという報告が!!」
圧が強い。
慄くオレを見て、どうどうと周りの先輩方が腐女子先輩を押さえてくれた。
「コルムはなんで今日も休みなの!?ニコイチが見たいのにー!」
腐女子先輩が座りながら足をバタつかせる。侯爵家のご令嬢のはずなのに。
腐女子先輩の望む報告を上げる気は全くないが、最近のコルムとの関係は、・・・なんというかちょっとおかしくて正直戸惑っている。
コルムの気持ちを知ってしまった今、このままコルムにお世話されているのはどうなんだとオレは一念発起し「自分のことは自分でする」と宣言した。そしてオレは頑張った。
制服も自分で着るし髪も自分で整える。洗濯も自分でする。洗って干して取り込んで畳む。食事だって・・・とがんばってみたが、あまりにもあらゆる面で時間がかかり過ぎて、オレは自分自身に絶望した。そしてなんでも器用にこなすコルムにムキーッと殺意を覚えた。
そんなオレを見てコルムはこう提案してきたのだ。「最初から全部をやろうとするのは大変だよ。俺は今まで通りベイラの世話を焼くから、ベイラは俺の世話をしてみない?」と。「俺が色々出来るようになったのは、ベイラに何かしてあげたいと思ったからなんだ。だからベイラも色々覚えたいなら誰かの為に動くほうがいいかと思って。それが俺なのはちょっと我慢してもらって。それにほら、俺が相手なら時間が足りなくなったらそこまでにしたらいいし。その後は俺が自分で終わらせるから。そうやって徐々に色々出来るようになっていけばいいよ」と。
なるほど、と納得したオレは、従者のように、毎日せっせとコルムの身の回りを整えている。コルムはコルムで相変わらずオレをせっせと整えてくれているが。
1週間もすればボタンの止め方やネクタイの締め方なんかは手早くできるようになった。オレすごい。
コルムも「すごい」「さすが」とめちゃくちゃ褒めてくれる。
だけど、コルムが近くて。
それがなんか、変な気分になるというか───。
「ほ、報告できることは何もありません」
オレは広げていたノートや資料を手早く片付け席を立った。
いつもは博識で後輩の質問にも優しく答えてくれる腐女子先輩だがこと男同士の恋愛話になると突撃してくる闘牛のようになってしまう。
コルムから迎えに行くから部室で待つように言われていたが、今日はもう一人で寮に帰ろう。
騎士科に入ってからのコルムは自分を鍛えることに夢中で、放課後になると学園から徒歩で行ける距離にある第五騎士団の鍛錬場へと向かうのだ。週に一度しかない歴史部なのに最近はほとんど顔を出していない。
コルムはあれからほぼ変わりなく接してくる。特に迫られることはない。それに、あれこれしてくれても恩着せがましいところはなにもない。──これは前からだけど。
それに、腐女子先輩が話していたようなことをコルムがあちこちで言っているのか、週一のペースでコルムを好きな女子から呼び出されていたのにここのところそれはなくなった。
コルムとの関係を終わりにするんだとイライラと息巻いていたが、その怒りも鎮火した。
「・・・あ~。やばいなオレ」
コルムを意識してしまっている。
今まで一緒にいてもコルムを見ているようで見ていなかった。脳内では子供の頃のコルムの顔がいつもあった。
でも今は。
確かにコルムをカッコいいという女子の気持ちがわかる、・・・──気がしてきた、ような。
「うー。イケメン過ぎるんだよ」
人気のない研究棟を進みながら頭を掻きむしった。
その時だ。
いきなり背後から口を塞がれ引っ張られた。
抵抗する間もなく引きずり込まれたのはすぐ近くの理科室。
理科室には見覚えのない男子と見覚えのあるピンクのふわふわ髪の女子がいた。
「やっと捕まえたぜ。いつもあいつが一緒だから苦労したぜ」
とオレを拘束している男が言った。
ピンク髪の女子はつい最近グループでオレに文句をつけてきた内の一人だ。あの時は内気そうに他の子たちの後ろにいたのに、今日は近くまできてオレを睨みつけてくる。
「いつまでもコルム君の側にいるあんたが悪いんだからね」
「ははっ、女ってこえーよな」
「こちらの二人はね、女の子より男の子の方が好きなんですって」
「・・・ングっ」
「俺らもそこそこ体力あるからさ、一緒にうんと楽しもうなー」
ゾッと体中に鳥肌が立った。
放課後、図書室脇の小さな資料室。歴史部の部室でもあるここで、オレは自分の研究テーマの“食文化の移り変わり”の資料整理をしつつ腐女子先輩から最近のコルムのやらかしのあれこれを聞いていた。
あれから1週間。オレは、警戒しつつも結局コルムと同室のまま暮らしている。
「あー、コルムって本当に一途。あんなにイケメンなのにちゃらちゃらしてないし」
「・・・先輩、コルムのこと好きになっちゃいました?」
「んん?何言っているのかなチミは。んなわけないよね。今そんな話してないよね。私はね、チミから聞きたいのだよ。そんなコルムに絆されて幼馴染みから恋人になったという報告が!!」
圧が強い。
慄くオレを見て、どうどうと周りの先輩方が腐女子先輩を押さえてくれた。
「コルムはなんで今日も休みなの!?ニコイチが見たいのにー!」
腐女子先輩が座りながら足をバタつかせる。侯爵家のご令嬢のはずなのに。
腐女子先輩の望む報告を上げる気は全くないが、最近のコルムとの関係は、・・・なんというかちょっとおかしくて正直戸惑っている。
コルムの気持ちを知ってしまった今、このままコルムにお世話されているのはどうなんだとオレは一念発起し「自分のことは自分でする」と宣言した。そしてオレは頑張った。
制服も自分で着るし髪も自分で整える。洗濯も自分でする。洗って干して取り込んで畳む。食事だって・・・とがんばってみたが、あまりにもあらゆる面で時間がかかり過ぎて、オレは自分自身に絶望した。そしてなんでも器用にこなすコルムにムキーッと殺意を覚えた。
そんなオレを見てコルムはこう提案してきたのだ。「最初から全部をやろうとするのは大変だよ。俺は今まで通りベイラの世話を焼くから、ベイラは俺の世話をしてみない?」と。「俺が色々出来るようになったのは、ベイラに何かしてあげたいと思ったからなんだ。だからベイラも色々覚えたいなら誰かの為に動くほうがいいかと思って。それが俺なのはちょっと我慢してもらって。それにほら、俺が相手なら時間が足りなくなったらそこまでにしたらいいし。その後は俺が自分で終わらせるから。そうやって徐々に色々出来るようになっていけばいいよ」と。
なるほど、と納得したオレは、従者のように、毎日せっせとコルムの身の回りを整えている。コルムはコルムで相変わらずオレをせっせと整えてくれているが。
1週間もすればボタンの止め方やネクタイの締め方なんかは手早くできるようになった。オレすごい。
コルムも「すごい」「さすが」とめちゃくちゃ褒めてくれる。
だけど、コルムが近くて。
それがなんか、変な気分になるというか───。
「ほ、報告できることは何もありません」
オレは広げていたノートや資料を手早く片付け席を立った。
いつもは博識で後輩の質問にも優しく答えてくれる腐女子先輩だがこと男同士の恋愛話になると突撃してくる闘牛のようになってしまう。
コルムから迎えに行くから部室で待つように言われていたが、今日はもう一人で寮に帰ろう。
騎士科に入ってからのコルムは自分を鍛えることに夢中で、放課後になると学園から徒歩で行ける距離にある第五騎士団の鍛錬場へと向かうのだ。週に一度しかない歴史部なのに最近はほとんど顔を出していない。
コルムはあれからほぼ変わりなく接してくる。特に迫られることはない。それに、あれこれしてくれても恩着せがましいところはなにもない。──これは前からだけど。
それに、腐女子先輩が話していたようなことをコルムがあちこちで言っているのか、週一のペースでコルムを好きな女子から呼び出されていたのにここのところそれはなくなった。
コルムとの関係を終わりにするんだとイライラと息巻いていたが、その怒りも鎮火した。
「・・・あ~。やばいなオレ」
コルムを意識してしまっている。
今まで一緒にいてもコルムを見ているようで見ていなかった。脳内では子供の頃のコルムの顔がいつもあった。
でも今は。
確かにコルムをカッコいいという女子の気持ちがわかる、・・・──気がしてきた、ような。
「うー。イケメン過ぎるんだよ」
人気のない研究棟を進みながら頭を掻きむしった。
その時だ。
いきなり背後から口を塞がれ引っ張られた。
抵抗する間もなく引きずり込まれたのはすぐ近くの理科室。
理科室には見覚えのない男子と見覚えのあるピンクのふわふわ髪の女子がいた。
「やっと捕まえたぜ。いつもあいつが一緒だから苦労したぜ」
とオレを拘束している男が言った。
ピンク髪の女子はつい最近グループでオレに文句をつけてきた内の一人だ。あの時は内気そうに他の子たちの後ろにいたのに、今日は近くまできてオレを睨みつけてくる。
「いつまでもコルム君の側にいるあんたが悪いんだからね」
「ははっ、女ってこえーよな」
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ゾッと体中に鳥肌が立った。
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