オレの優しい幼馴染

mm

文字の大きさ
9 / 15

9

しおりを挟む
 理科室で複数人で楽しめるもの。多分それは、オレにとって全く楽しめないものだと思う。

「け、けど、こんなことがバレたら退学になっちゃうんじゃ・・・」
「退学どころか家の貴族位も危ないでしょうね」

 まともな奴が一人いた。
 だが体格の割にオドオドしていて頼りない。
 オレは伯爵の一人息子。それも父は伯爵位の中でも上の方に位置している。それでなくてもオレに甘い父はオレを害した奴らを徹底的に破滅させるだろう。
 だからオレをこのまま帰してくれ。そう伝えたいが口を塞がれているのでモガモガという音にしかならない。

「何度も言っただろ。告げ口できないほど酷くしてやればいいのさ。──それか、告げ口できないほどヨくしてやってもいい」

 耳元へ生温かい息がかかる。それはそのまま近づき右耳をぱくりと咥えられた。そのまま舐めしゃぶられ、オレは気持ち悪さに昏倒しそうになった。

「これがあいつを夢中にさせている奴の味か。大人しくしてればそう酷いことでもないさ。──おい、紐」

 背後の男は手渡された細い布の紐で手早くオレの両手を後ろで括り、理科室の実験用の広い机にオレを押し倒した。

「──コルムっ!!」

 口から手が離れた隙に大声を出したら平手打ちが飛んできた。反動で頭を机に強く打つ。グラグラする頭でそれ以上の抵抗ができずにいたら、口の中に布を突っ込まれ、シャツを左右に引っ張られた。
 ぶちぶちっと音を立て弾けるボタンに、ああ、ボタン付けが・・・と頭の片隅をよぎった。
 何か悪態をつかれているような気もするけど、よく聞き取れない。
 日が暮れてどんどん薄暗くなってきているのか辺りが急激に暗くなったように感じる。
 今は何時だろう。コルムが迎えに来る頃だろうか。オレが先に帰ったと知らされ真っ直ぐ寮に向かうだろうか。それともこんなことを想定して──ないよな。わざわざ他の教室を覗くなんてこと。

「おら、起きろよ」

 髪を引っ張られ頬を軽く叩かれた。平手打ちされた頬が熱い。一瞬意識が飛んでいたのかもしれない。薄く目を開けると凶悪な男の顔がすぐ近くにあった。

「元気がいいのは嫌いじゃないぜ。心を折ってやる楽しみがあるからな」

 クズ。
 人を痛めつけることを楽しむ正真正銘のクズだ。ピンクの髪の子に言われて嫌々オレを襲ってるとかそんなんではないようだ。
 オレは息を吸い込み、思いっきりおでこを男の鼻筋に叩き込んだ。コルムにも使ったオレの得意技、頭突きだ。
 浮いた体に蹴りも入れる。
 そのまま机から転がり落ちると、もう一人のオドオドしていた男がオレを捕まえようとやって来る。
 鈍い動きのそれを躱し、立ち上がった。
 ふらつきながらも教室のドアを目指すが両手を後ろで縛られているからドアノブは回せない。
 オレは何度かドアに体当たりした。
 誰か気付いてくれ。口に突っ込まれた布が取れれば叫べるのに。
 
「っざけやがってぇ!」
 
 髪を捕まれ床に引き倒された。
 鼻血を両方の鼻の穴から流したクズだった。顔面がオソロシイ。

「てめぇ、コロス!」

 頭に血が上りやすいタイプのようだ。オレから反撃されるなんて思ってもみなかったんだろう。オレに馬乗りになったクズの目がギラギラと血走っていた。

 ───その時だ。

 理科室のドアノブを回される音、そしてドアを激しく叩かれる音がした。

「ベイラ!?いるのか!?」

 コルムだ。
 声を出せない代わりにオレは足を床に打ち付けた。

「離れてろ!ドアを壊す」

 と言われた途端、ドアが大きな音を立て開いた。外開きで良かった。内開きなら危なかった。離れるヒマなかったぞ。ドアノブはどこかに吹っ飛んでいった。

 現れたのはやはりコルム。なんだけど、オレが床に転がっているせいかなんか大きく見えるというか。
 すごい威圧感にオレと多分クズも震えた。
 
 そしてクズは一瞬にしてコルムに回し蹴りされ終了。

「・・・騎士科3年フランツ=グロス、騎士科2年アルバン=マイヤー、公務科2年ミミ=メルクーリ」

 3人の名前だと思うが、ぶつぶつ唱えながらオレを抱き起こしてくれる。

「・・・殴られたのか」
「ああ、平手打ち。どってことない。オレは頭突きと蹴りを入れてやった」
「そうか。さすがだな」
「ん。オレだってもしもの時の護衛術は学んでいる」

 冷静に答えたが、我慢はそこまでだった。拘束されていた紐を解かれ、よしよしと頭を撫でられるとたまらなくなってコルムに体を預けた。

「先生を呼んできたわよコルム!ベイラは無事なの!?・・うおっ!!」

 ぐりぐりと頭をコルムの胸に押しつけているとけたたましく腐女子先輩が理科室に飛び込んできた。そしてくっついているオレたちを見て仰け反った。
 その後ろから険しい顔の先生方が数名続き、倒れたままの男子と蒼白の顔色で今にも倒れそうになっている2人を拘束し、部屋から連れ出した。

 どうやら3人は場所を変えて事情聴取されるらしい。オレには先ずは医務室へ向かうよう指示された。
 なのでオレはそのままコルムに抱きかかえられ、医務室に向かった。

 後ろで“おおおおお、おおおお・・・!!”と野太い謎の声がするが、腐女子先輩だったら怖いので振り向けなかった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

冒険者の幼馴染と、ずっとその隣にいたい男の話

くろねこや
BL
お前の隣で、一緒に歳をとって生きていくんだと思ってた。 例えお前が誰かと結婚しても、子どもが生まれても。 ◇ 15歳になると神様から魔法が与えられる世界で、たった一人魔法が使えないイスト。 火魔法と氷魔法を授かった幼馴染は冒険者になった。 オレにあるのは畑や動物たちをちょこっと元気にする力だけ…。 ところが、そこへ謎の老婆が現れて…。 え? オレも冒険者になれるの? “古代種様”って何?! ※『横書き』方向に設定してお読みください。 ※『設定 こぼれ話』は情報を追加・修正することがあります。

溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん

315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。  が、案の定…  対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。  そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…  三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。  そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…   表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

処理中です...