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理科室で複数人で楽しめるもの。多分それは、オレにとって全く楽しめないものだと思う。
「け、けど、こんなことがバレたら退学になっちゃうんじゃ・・・」
「退学どころか家の貴族位も危ないでしょうね」
まともな奴が一人いた。
だが体格の割にオドオドしていて頼りない。
オレは伯爵の一人息子。それも父は伯爵位の中でも上の方に位置している。それでなくてもオレに甘い父はオレを害した奴らを徹底的に破滅させるだろう。
だからオレをこのまま帰してくれ。そう伝えたいが口を塞がれているのでモガモガという音にしかならない。
「何度も言っただろ。告げ口できないほど酷くしてやればいいのさ。──それか、告げ口できないほどヨくしてやってもいい」
耳元へ生温かい息がかかる。それはそのまま近づき右耳をぱくりと咥えられた。そのまま舐めしゃぶられ、オレは気持ち悪さに昏倒しそうになった。
「これがあいつを夢中にさせている奴の味か。大人しくしてればそう酷いことでもないさ。──おい、紐」
背後の男は手渡された細い布の紐で手早くオレの両手を後ろで括り、理科室の実験用の広い机にオレを押し倒した。
「──コルムっ!!」
口から手が離れた隙に大声を出したら平手打ちが飛んできた。反動で頭を机に強く打つ。グラグラする頭でそれ以上の抵抗ができずにいたら、口の中に布を突っ込まれ、シャツを左右に引っ張られた。
ぶちぶちっと音を立て弾けるボタンに、ああ、ボタン付けが・・・と頭の片隅をよぎった。
何か悪態をつかれているような気もするけど、よく聞き取れない。
日が暮れてどんどん薄暗くなってきているのか辺りが急激に暗くなったように感じる。
今は何時だろう。コルムが迎えに来る頃だろうか。オレが先に帰ったと知らされ真っ直ぐ寮に向かうだろうか。それともこんなことを想定して──ないよな。わざわざ他の教室を覗くなんてこと。
「おら、起きろよ」
髪を引っ張られ頬を軽く叩かれた。平手打ちされた頬が熱い。一瞬意識が飛んでいたのかもしれない。薄く目を開けると凶悪な男の顔がすぐ近くにあった。
「元気がいいのは嫌いじゃないぜ。心を折ってやる楽しみがあるからな」
クズ。
人を痛めつけることを楽しむ正真正銘のクズだ。ピンクの髪の子に言われて嫌々オレを襲ってるとかそんなんではないようだ。
オレは息を吸い込み、思いっきりおでこを男の鼻筋に叩き込んだ。コルムにも使ったオレの得意技、頭突きだ。
浮いた体に蹴りも入れる。
そのまま机から転がり落ちると、もう一人のオドオドしていた男がオレを捕まえようとやって来る。
鈍い動きのそれを躱し、立ち上がった。
ふらつきながらも教室のドアを目指すが両手を後ろで縛られているからドアノブは回せない。
オレは何度かドアに体当たりした。
誰か気付いてくれ。口に突っ込まれた布が取れれば叫べるのに。
「っざけやがってぇ!」
髪を捕まれ床に引き倒された。
鼻血を両方の鼻の穴から流したクズだった。顔面がオソロシイ。
「てめぇ、コロス!」
頭に血が上りやすいタイプのようだ。オレから反撃されるなんて思ってもみなかったんだろう。オレに馬乗りになったクズの目がギラギラと血走っていた。
───その時だ。
理科室のドアノブを回される音、そしてドアを激しく叩かれる音がした。
「ベイラ!?いるのか!?」
コルムだ。
声を出せない代わりにオレは足を床に打ち付けた。
「離れてろ!ドアを壊す」
と言われた途端、ドアが大きな音を立て開いた。外開きで良かった。内開きなら危なかった。離れるヒマなかったぞ。ドアノブはどこかに吹っ飛んでいった。
現れたのはやはりコルム。なんだけど、オレが床に転がっているせいかなんか大きく見えるというか。
すごい威圧感にオレと多分クズも震えた。
そしてクズは一瞬にしてコルムに回し蹴りされ終了。
「・・・騎士科3年フランツ=グロス、騎士科2年アルバン=マイヤー、公務科2年ミミ=メルクーリ」
3人の名前だと思うが、ぶつぶつ唱えながらオレを抱き起こしてくれる。
「・・・殴られたのか」
「ああ、平手打ち。どってことない。オレは頭突きと蹴りを入れてやった」
「そうか。さすがだな」
「ん。オレだってもしもの時の護衛術は学んでいる」
冷静に答えたが、我慢はそこまでだった。拘束されていた紐を解かれ、よしよしと頭を撫でられるとたまらなくなってコルムに体を預けた。
「先生を呼んできたわよコルム!ベイラは無事なの!?・・うおっ!!」
ぐりぐりと頭をコルムの胸に押しつけているとけたたましく腐女子先輩が理科室に飛び込んできた。そしてくっついているオレたちを見て仰け反った。
その後ろから険しい顔の先生方が数名続き、倒れたままの男子と蒼白の顔色で今にも倒れそうになっている2人を拘束し、部屋から連れ出した。
どうやら3人は場所を変えて事情聴取されるらしい。オレには先ずは医務室へ向かうよう指示された。
なのでオレはそのままコルムに抱きかかえられ、医務室に向かった。
後ろで“おおおおお、おおおお・・・!!”と野太い謎の声がするが、腐女子先輩だったら怖いので振り向けなかった。
「け、けど、こんなことがバレたら退学になっちゃうんじゃ・・・」
「退学どころか家の貴族位も危ないでしょうね」
まともな奴が一人いた。
だが体格の割にオドオドしていて頼りない。
オレは伯爵の一人息子。それも父は伯爵位の中でも上の方に位置している。それでなくてもオレに甘い父はオレを害した奴らを徹底的に破滅させるだろう。
だからオレをこのまま帰してくれ。そう伝えたいが口を塞がれているのでモガモガという音にしかならない。
「何度も言っただろ。告げ口できないほど酷くしてやればいいのさ。──それか、告げ口できないほどヨくしてやってもいい」
耳元へ生温かい息がかかる。それはそのまま近づき右耳をぱくりと咥えられた。そのまま舐めしゃぶられ、オレは気持ち悪さに昏倒しそうになった。
「これがあいつを夢中にさせている奴の味か。大人しくしてればそう酷いことでもないさ。──おい、紐」
背後の男は手渡された細い布の紐で手早くオレの両手を後ろで括り、理科室の実験用の広い机にオレを押し倒した。
「──コルムっ!!」
口から手が離れた隙に大声を出したら平手打ちが飛んできた。反動で頭を机に強く打つ。グラグラする頭でそれ以上の抵抗ができずにいたら、口の中に布を突っ込まれ、シャツを左右に引っ張られた。
ぶちぶちっと音を立て弾けるボタンに、ああ、ボタン付けが・・・と頭の片隅をよぎった。
何か悪態をつかれているような気もするけど、よく聞き取れない。
日が暮れてどんどん薄暗くなってきているのか辺りが急激に暗くなったように感じる。
今は何時だろう。コルムが迎えに来る頃だろうか。オレが先に帰ったと知らされ真っ直ぐ寮に向かうだろうか。それともこんなことを想定して──ないよな。わざわざ他の教室を覗くなんてこと。
「おら、起きろよ」
髪を引っ張られ頬を軽く叩かれた。平手打ちされた頬が熱い。一瞬意識が飛んでいたのかもしれない。薄く目を開けると凶悪な男の顔がすぐ近くにあった。
「元気がいいのは嫌いじゃないぜ。心を折ってやる楽しみがあるからな」
クズ。
人を痛めつけることを楽しむ正真正銘のクズだ。ピンクの髪の子に言われて嫌々オレを襲ってるとかそんなんではないようだ。
オレは息を吸い込み、思いっきりおでこを男の鼻筋に叩き込んだ。コルムにも使ったオレの得意技、頭突きだ。
浮いた体に蹴りも入れる。
そのまま机から転がり落ちると、もう一人のオドオドしていた男がオレを捕まえようとやって来る。
鈍い動きのそれを躱し、立ち上がった。
ふらつきながらも教室のドアを目指すが両手を後ろで縛られているからドアノブは回せない。
オレは何度かドアに体当たりした。
誰か気付いてくれ。口に突っ込まれた布が取れれば叫べるのに。
「っざけやがってぇ!」
髪を捕まれ床に引き倒された。
鼻血を両方の鼻の穴から流したクズだった。顔面がオソロシイ。
「てめぇ、コロス!」
頭に血が上りやすいタイプのようだ。オレから反撃されるなんて思ってもみなかったんだろう。オレに馬乗りになったクズの目がギラギラと血走っていた。
───その時だ。
理科室のドアノブを回される音、そしてドアを激しく叩かれる音がした。
「ベイラ!?いるのか!?」
コルムだ。
声を出せない代わりにオレは足を床に打ち付けた。
「離れてろ!ドアを壊す」
と言われた途端、ドアが大きな音を立て開いた。外開きで良かった。内開きなら危なかった。離れるヒマなかったぞ。ドアノブはどこかに吹っ飛んでいった。
現れたのはやはりコルム。なんだけど、オレが床に転がっているせいかなんか大きく見えるというか。
すごい威圧感にオレと多分クズも震えた。
そしてクズは一瞬にしてコルムに回し蹴りされ終了。
「・・・騎士科3年フランツ=グロス、騎士科2年アルバン=マイヤー、公務科2年ミミ=メルクーリ」
3人の名前だと思うが、ぶつぶつ唱えながらオレを抱き起こしてくれる。
「・・・殴られたのか」
「ああ、平手打ち。どってことない。オレは頭突きと蹴りを入れてやった」
「そうか。さすがだな」
「ん。オレだってもしもの時の護衛術は学んでいる」
冷静に答えたが、我慢はそこまでだった。拘束されていた紐を解かれ、よしよしと頭を撫でられるとたまらなくなってコルムに体を預けた。
「先生を呼んできたわよコルム!ベイラは無事なの!?・・うおっ!!」
ぐりぐりと頭をコルムの胸に押しつけているとけたたましく腐女子先輩が理科室に飛び込んできた。そしてくっついているオレたちを見て仰け反った。
その後ろから険しい顔の先生方が数名続き、倒れたままの男子と蒼白の顔色で今にも倒れそうになっている2人を拘束し、部屋から連れ出した。
どうやら3人は場所を変えて事情聴取されるらしい。オレには先ずは医務室へ向かうよう指示された。
なのでオレはそのままコルムに抱きかかえられ、医務室に向かった。
後ろで“おおおおお、おおおお・・・!!”と野太い謎の声がするが、腐女子先輩だったら怖いので振り向けなかった。
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