オレの優しい幼馴染

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「え?」

 はっ、とコルムをふり返った。
 それはオレがいうはずの言葉だった。

「・・・終わりに、って」

 コルムの態度から、表情から、オレだけじゃなくコルムもそう思っているとは感じていたが、言葉にされるとなかなかの威力があって、オレの目にはじんわりと涙が滲んた。
 それを隠すようにコルムから顔を背ける。

「友達なんかじゃいられない。足りない」

 ふ、と体にかかっていた重みが消え、うつ伏せのまま振り返るとコルムが引き剥がすようにして自分の服を脱いでいた。力任せにするからボタンが何個か飛んだ。
 恐怖でベッドから転げるように降りようとしたら、その前に体を引き戻された。反動で仰向けになる。
 その力の強さ。
 圧倒されて、ベッドの上でコルムを見上げたまま震える。
 目に入る、はだけたシャツからのぞく肩の盛り上がった筋肉や胸筋、その下に続く腹筋と、その下のズボンの上からもわかる膨らみ───。
 
「うそ・・・」

 それから目を逸らした。
 今がどんな状況なのか、ようやく理解した。
 
「・・・オレ、女じゃない」

 声が震えた。

「知ってる。女なんか足元にも及ばないほど、綺麗だ。ずっと、前から」

 ベイラ、と耳元で囁きながら体を重ねてくる。
 コルムの体温が、火傷しそうなほど熱く感じる。

 耳たぶを咥えられた。
 そのまま吸われ、コルムの口の中で舐め回される。味わったことのない不思議な感覚に目眩がした。

「・・・っ、・・んっ、」

 でかい体にたやすく巻き込まれたオレのひょろりとした体は満足に抵抗もできない。何とかすき間から片腕を出すと、思い切りコルムの背に爪を立てた。
 はっ、と体を離したコルムはその一瞬後、不敵な笑みを見せた。

「煽るのが上手だね、ベイラ」

 がっ、とでかい両手で頭を固定され、口を塞がれた。荒々しい口づけ。痛いほど舌を吸われた。
 オレの抵抗なんて少しも響いていない。

「いいよ、もっと嫌がって。俺から逃げて。──俺は絶対にベイラを逃さないから」

「・・・ううっ、」

 ニヤリとするその表情が恐ろしい。
 オレの目からは、堪えきれず涙が溢れ出た。

 なんだコレ。
 コルムは、オレより小さくて不器用で、いや昔も今も不器用はオレだ。でもいつもオレが助けて、──たっけ・・・?。逆に助けられてたような。
 ──そうだ。よく泣きべそかいて抱きついてきた。いい子いい子と何度も頭を撫でてなぐさめてやったぞ。それなのに。
 なんでこんなにでかく育ってるんだ。しかも、全部筋肉に覆われてるのか、固くて重くて当たると痛い。

「コ、コルムのばがああっっ!オレがっ、お兄ちゃんなのにいいいぃーっ!」

 ふええぇぇっ、半泣きで爆発した。あまりにも恐くて。

「うおっ!急になんだ!お兄ちゃんって、同い年だろう。生まれ月だとしても俺が先だ」
「お世話した方がお兄ちゃんだぁーっ!ふえっ、ふえっ」
「世話をされた覚えはない」
「したもん!いい子いい子って!お兄ちゃんにひどいことしちゃダメでしょー!めーっ!」

 もう自分でもわけがわからない。
 本格的にふえふえ泣くオレにコルムも素にもどって目を丸くした。

「小さくて、あんなに可愛かったのにいいぃっ」
「どんだけ昔のこと言ってんの。今はベイラより大きいし。それに、可愛いのもベイラだ。ベイラの涙、危険すぎる!」

 俺以外に絶対に見せちゃダメだ、とぎゅうぎゅう絞め技をかけられる。

「ぐえ。お、終わりにするって、なんだよそれ!」
「それは、・・・」
「オレがいおうと思っていたのにいっ」
「・・・はあ!?」
「バカあっ!オレなんてお前のせいでいっつも女の子たちに冷たくされてるんだからなっ。
 お前に気を遣って黙ってたけど、もう終わりにするんだから。
 お前の欠点もみーんな喋っちゃうし。そしたら、もう放課後に呼び出されないもん。せ、せいせいするううっ!うっ、うっ」
「──放課後に呼び出されて、ってどういうことだ?いつも裏庭で告白されてたんだろ?」
「いっつも裏庭でいびられてたんだよっ。告白されてるのはお前だろっ」
「告白なんて最近は全然だ。──好きな人がいるって言ったから」

 噛み合わない会話の先に、まさかの発言だった。

「・・・え、言ったの?」

 混乱するオレにコルムは体をぴたりと寄せ、ぎゅっと抱きしめてきた。
 コルムの肌が熱い。

「──お前の好きな人って、だって。・・・オレの母様だよな?それも言ったの?それってけっこう変態だよ?」

 コルムがぷ、と吹き出す。

「笑い事?オレ、さすがにそこまでバラそうとは思ってなかったんだけど」
「いやだって、俺が好きになった人は本当に可愛い」
「・・・え、」
「変な勘違いまでして。なぜ今まで気付かないのか、本当に不思議だよ」
「え?」
「ベイラだよ。ベイラしかいないだろう?小さい時から好きだった。可愛くてわがままで、すぐ泣くのに強がって、可愛くて」

 可愛い2回言ったな。いや、あまりのことに涙が引っ込んだ。

「少しでもベイラに釣り合うようになりたくて俺なりに頑張っていたところだったのに──」

 コルムがぐっと声を落とし、耳もとで囁いた。

『駄目だろう?そんな俺の前にお尻を出したまま寝ているなんて』

「・・・っ」

 くすぐったさが背中を走りビクンと体が跳ねた。

「──嘘だっ。お前、母様の姿絵を部屋に隠してたじゃないか。しかも、今も大事に持っているの知ってるぞ」

 力を込めて身じろぐが、びくともせずにコルムは楽しそうに俺の上でくすくすと笑った。

「確かに昔から大事に持っている姿絵はある。でも俺が毎日眺めているのは聖女様に抱かれた天使のように可愛いベイラだ」
「──え?え?」

 ええええええぇぇぇっっ!!









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