【完結】ツンな猫君の恋愛事情

結城れい

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66 運動

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「運動しよう!」

 樹は小さくこぶしを握りしめ、決意を固めた。
 恋人同士ならこの先、迅に体を見せることもあるだろうが、幻滅されたくない。
 ただ、ご飯を制限するのは無理だ。迅に心配をかけたくはないし、進められるとついつい食べてしまう。それならば、食べた分は運動すればいいのだ。

 夕食後、運動着に着替えた樹は、リビングにいた迅に声をかけた。

「迅くん、僕ちょっとウォーキングしてくるね!」
「ん? 今からか?」
「うん!」

 気合を入れ玄関に向かう樹の後ろから、立ち上がった迅もついてくる。そして靴を履いて一緒に外に出た。

「あれ、迅くんも行くの?」
「ああ、もちろんだ」

 マンションの外に出た樹は、駅の方向へ向かって大股で歩き出す。自分では精一杯早く歩いているつもりだが、隣を歩いている迅は余裕そうだ。
 駅に着いた時には、樹は息が上がっていた。体感的には普段の倍ほどのスピードで歩けていたはずだ。

「迅くん、体力、あるんだね」

 隣にいる迅は、全く息切れしていない。樹が息を整えながら聞いてみると、迅から意外な回答が返ってきた。

「まあ、鍛えてるからな」
「え、そうなの?」
「この近くのジムに入会してるんだ」
「えー、そうだったんだ!」

 樹は驚きながらも納得した。鍛えていたから、あれほどの体だったのだ。

「でも、いつ行ってるの?」
「朝一に行ったり、出かけたついでに行ったりしてたけど、夏休み中はあまり行ってないな」
「へぇー」
「近くだから、行ってみるか?」
「え、いいの? 僕、会員じゃないけど……」
「ああ、俺の会員証で1人までなら一緒に入ることができるんだ」

 迅が見せてくれたスマホの画面には、そのジムのデジタル会員証が表示されている。真っ黒な会員証に金の文字で迅の名前が記入されており、とてもかっこいい。その下には注意事項が箇条書きで書いてあるが、確かに1人までなら一緒に入れるようだ。

「行ってみたい!」
「ああ、こっちだ」

 樹の手をとり、元気に歩き出した迅の横を、樹は小走りでついていった。

「ここだ」

 駅から少し南へ歩くと、迅の行きつけのジムに到着した。
 だが、パッと見ただけでは全くジムだと分からない。コンビニのような小さな店舗だ。この中に運動できる器具があるのかな、と首を傾げていた樹をつれて、迅は入り口まで進む。デジタル会員証を扉の横に設置されている小さな機械にかざすと、ガチャリと重い音が響きロックが解除された。扉を開けた迅は、建物の中へと進んでいく。
 樹は辺りを見渡すが、受付のような場所もなく、少し薄暗い。

「受付とかはないの?」
「ああ、受付はないし、24時間あいている」
「へぇー」

 進んだ先にまた扉があって、そこを開くと、下へと続く階段が現れた。どうやらジムは地下にあるようだ。
 長い階段を降りていくと、段々と運動しているような物音が聞こえてくる。この時間でも利用してる人は結構いそうだな、なんて思いながら、樹は階段を下りきり、迅の後に続いて入り口をくぐったところで、目を見開いた。

――思ってたジムとぜんぜん違う

 樹は、ダンベルを持って腕を鍛えたり、走る専用の機械が複数並んでいる場所を想像していたが、全く違った。

 想像の10倍は広く高い空間で、地上から天井までが複雑な形をしたパイプのようなものでつながっている。壁や天井にも突起や縄がついており、ジム内にいる人たちは、それらを掴みすごいスピードで移動してる。奥の方には機械らしきものも見えるが、一体どうやって使うのか検討もつかないものばかりだ。
 想像以上の光景に、樹があんぐりと口を開けていると、急に上から人が降ってきた。

「――わっ」

 飛び上がった樹に対し、降ってきた豹族と思わしき男性は軽く謝りながら、去っていった。

「大丈夫か?」
「……うん」

 ジム内にいるのは、どう見ても体を動かすことが得意そうな獣族ばかりだ。小柄な人もいるが、ヒョイヒョイとパイプを伝って上まで登っている。間違ってもウォンバット族のようなものが来る場所ではないだろう。
 場違いな感じに、樹は迅の方へと近づき、体を半分隠した。

「僕、運動神経悪いから、あんな風に登っていけないよ」
「ん? 簡単なルートもあるぞ」

 そう言って迅が指さした方向を、少しの期待とともに見てみる。確かに他の場所よりは登りやすそうだが、どう見ても樹には無理だ。

「無理無理!」

 首を横にブンブンと振る樹に、迅は、奥の方を指さした。

「なら、奥には簡単な機械もあるからそっちを使ってみるか?」
「うん」
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