【完結】ツンな猫君の恋愛事情

結城れい

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75 プレゼント

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 体調を崩したわけではないのに、樹は迅に甲斐甲斐しくお世話されながら朝食を済ませる。
 べったりと隣にくっついて座った迅とは、常に体の一部が触れ合っていた。肩や腕、それに尻尾はしっかりと腰に巻き付いている。

 樹と目が合うと、迅は幸せそうににっこりとほほ笑んだ。それにつられて、樹も自然と笑顔になる。心の奥から温かな感情が溢れ出てきた樹は、隣から聞こえるゴロゴロという小さな音を聞きながら、そっと迅の肩に寄りかかった。


「ちょっとトイレに行ってくるね」
「ああ」

 トイレに行きたくなった樹は、迅に断りを入れて立ち上がり、トイレに向かう。
 用を足して手を洗い、扉を開けると――

「――わぁ! びっくりした!」

 樹は驚いて声を上げてしまった。トイレの前に迅が立っていたのだ。

「迅くんもおトイレ? どうぞ」
「――いや」

 扉を開けたまま場所を譲るが、迅は手を伸ばしその扉を閉めてしまう。

「戻ろう」

 そう言った迅は、尻尾を樹の体に巻きつけ、手をつないで歩きだす。
 どうやら迎えに来てくれただけだったようで、樹はリビングまで一緒に戻った。
 
 外に出かけることもなく、コテージのソファでゆっくり過ごしていると、1つ忘れていたことに気づいた。

「迅くん、プレゼント渡すの忘れてた」
「あ、そうだ」

 立ち上がろうとした樹を止めた迅は、樹のリュックごと近くに持ってくる。お礼を言った樹は、リュックの中から大切にしまっていた袋を取り出した。
 同じように、自分のリュックから何かを取り出した迅と向かい合う。

「迅くん、お誕生日おめでとう!」
「ああ、ありがとう。樹も誕生日おめでとう」
「うん、ありがとう!」

 迅の誕生日は一昨日だし、樹の誕生日は明日だが、お互いにお祝いの言葉をかけてプレゼントを渡し合う。樹は袋の口をリボンで結ばれているプレゼントを渡し、迅は手のひらサイズの黒いケースの入った紙袋を渡す。中身はどちらともまだ見えない。

「じゃあ、俺から見ていいか?」
「うん」

 樹はどのような反応をされるのかドキドキしながら見守った。リボンをほどき中を確認した迅は、手を入れて中の布を取り出し、それを両手で広げた。

「エプロンか!」
「うん!」
「しかも、ウォンバットじゃないか」
「そうなの!」

 樹が送ったプレゼントは、ウォンバットがプリントされたエプロンだ。

「ありがとう! 帰ったらすぐ使う」

 そう言いながら、もうつけ始めた迅に、樹は後ろに隠していた布を見せた。

「実は、僕の分もあって、こっちにはウンピョウがいるんだ――」

 そう言って広げたエプロンは、迅のものと色違いで、ウンピョウのプリントがされている。

「お揃いか!」
「えへへ、僕も迅くんの料理を手伝おうと思ってね」
「樹!」

 エプロンをつけた迅に抱きしめられ、樹は予想以上に喜んでもらえたことに安堵した。
 色々と探していたが、迅がウンピョウとウォンバットのものを嬉々として集めていたため、できればお揃いで何か買いたいと思っていた。そんな時に見つけたのが、好きな画像を送ればエプロンにプリントしてくれるというオリジナルエプロンだった。迅は料理をするため、機能的に使いやすいエプロンを選び、そこに送った画像をプリントしてもらったのだ。2つで対になるプリントがあるが、それは実際に料理をするために隣に並んだ時に言うつもりなので、今は内緒にしておく。


「じゃあ、次は僕の番だね」
「ああ」

 エプロンをつけたまま緊張した面持ちで姿勢を正す迅に、樹も緊張しながら紙袋に手を入れる。中に入っていたケースを取り出すと、両サイドにへこみがあったため、そこに指をひっかけて蓋を開ける。

「わあ! おしゃれな腕輪だー」
「ああ」

 中に入っていたのは、黒いブレスレットだった。落ち着いた金属製のもので、光が当たる場所は微かに光沢を帯びている。少し幅の広いデザインで、小さなロゴがあり、シンプルでどんな時にもつけることができそうだ。 
 そっと中身を手に取ると、早速手首につけてみる。思ったよりも重さを感じたが、腕につけると特に気にならない。手首に通した後に片手で大きさを調整できるものだったため、1人でもつけ外しが簡単だ。

「かっこいい! ありがとう」

 おしゃれな人達がつけているようなかっこいいブレスレット。迅はおしゃれなので、このようなものをつけているのを見たことがあるが、樹自身はつけたことがなかった。大学にもつけていこうと決めた樹は、笑顔になる。

「実は、これはただのブレスレットじゃないんだ」
「え、そうなの?」
「ああ、なんと、つけている人の場所が分かるようにGPSが入ってるんだ」
「GPS!? えーすごい! こんなに薄いのにそんなのが入ってるんだー」

 中に何かが入っていそうな厚みではなかったため、樹は驚いた。

「ああ、それに丈夫で耐水性もあるから、お風呂とかでも外さなくていいんだ」
「へぇーいいね!」
「ああ、そうだろ?」

 壊れる心配もなくずっとつけていられるな、と喜んだ樹に、迅はもう一つ同じブレスレットをポケットから取り出して手首につけた。

「――実は、俺もお揃いで買ったんだ」
「あ、ふふっ、僕たち同じことを考えていたんだね」

 お互いに渡すプレゼントと同じものを買って、お揃いにしている。樹はブレスレットをつけた方の腕を、迅の腕に近づけた。同じ黒いブレスレットを合わせる。

「ずっとつけててくれ」
「うん!」

 最初手首に触れたときは、ひんやりとした冷たさがあったが、すぐに自分の体温と馴染んで気にならなくなった。

「スマホと連動してGPSを確認することができるんだ。早速入れてみるか?」
「うん、そうだね」

 自分のスマホを取り出した樹は、迅に言われるとおりに専用のアプリを入れて設定をおこなっていく。

「充電はどうするの?」
「電池は半年くらいで交換するんだ。その辺もアプリで確認できる」
「へぇー、そうなんだ」

 早速アプリで現在地を確認するボタンを押すと、場所が表示される。ちょうどコテージの上に2つのアイコンが重なっていた。

「一緒の場所にいるね」
「ああ」

 画面上でも重なるように同じ場所にいることが分かり、胸が温かくなった樹は、アプリをそっと閉じた。

「嬉しい! ありがとう」
「ああ」

 プレゼント交換が終わった後、樹は外に散策に行こうとしたが、迅に止められてしまった。結局この日、樹がコテージから出ることはなかった。
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