男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる 両思い編

コーヒーブレイク

文字の大きさ
29 / 72

そして誰もいなくなった? 4

しおりを挟む
 フェリシアとミランは魔法通話があった団員の部屋へ急いだ。

 部屋にはべろべろに酔っぱらった団員がひとりでたたずんでいた。色黒で、編みこんだ黒髪をヘアピンで留めた髪型をしているが、その髪型も崩れ気味だ。

「すみまへん、だんちょー、ミラン殿下と、お楽しみのところ……」

「君一人か? 三人が消えたって、どういうこと? しっかりしなさい!」

 フェリシアはべろべろ団員の肩を揺さぶって、活を入れた。団員はハッとして、ちょっとだけ真面目な顔つきになった。

「は、はい団長。俺たち四人で今まで王都で飲んでました。四人いたんですよ」

「うん」

「時間も時間だから王宮に戻って俺の部屋でまた飲もうって話になったんです。四人で俺の部屋に向かってたんです」

「それで?」

「俺の部屋にたどり着いたら、俺しかいないんです。みんな揃って王宮に入ったから、外ではぐれたわけじゃないと思うんですけど」

「全員酔っていたんでしょう? 自分の部屋に無意識に戻って、そのまま眠ってしまったんじゃないの?」

 フェリシアは最も可能性の高い推理を披露した。
 とりあえず、消えた三人の部屋へ向かうことに。

「これで三人が忽然と消えたら、ミステリーだな。そしてまたひとり、またひとりと消え、ついに魔法師団は誰もいなくなった、か」

「ミラン殿下、ずっと黙ってるなと思ってたら、そんなこと考えてたんですか」

 ミランは顎に手を当てたポーズで、にやりとした。

「どう? ギャップ萌え」

「はいはい、萌えました。私、先に行きますね」

「ごめんってフェリシア!」


 ――三人の部屋にはみな鍵が掛かっていた。ノックしても反応がない。

「潰れて眠っちゃってるのかな……。それにしても、物音とか、寝息が聞こえないな」

 団員が困ったような顔をする。
 魔法で鍵を開けることもできるが、そこまではしたくない。
 
「とにかく、明日まで待とう。君はもう休みなさい」

 フェリシアが黒髪の団員にそう言ったとき、何かが廊下を滑って来るのが見えた。
 王宮内の廊下は夜中になると魔力節約のため、薄暗くなる。
 フェリシアが滑って来るそれを「ルルンバ」だと認めるまで、時間がかかった。

「これって、ユリアン兄貴が作ったっていう魔道具だろう? 夕食のとき自慢してた」

 ミランが呆れたように言った。
 正しくは「考案した」で作ったのは技術者だろうが、フェリシアは訂正しなかった。そのかわり「ルルンバ」を見つめがら、気になったことをミランに聞いた。

「ミラン殿下、このルルンバ、ができる前、王宮は何で掃除していたんですか? ほうき?」
 
 ミランはきょとんとした。

「そんなわけないだろう。大型の掃除魔道具だよ。魔力源コードから、魔力を引っ張って、掃除するやつ(コード付きの掃除機だと思って下さい)」

「ああ、あのホースの先にゴミを吸い込む装置(クリーナーヘッド)がついていて、ホースの後ろのゴミを貯めるところ(本体)に送られるやつですね」

「君の実家でも使っていただろう?」

「いえ、うちはほうきでした……私の家は、貧乏なので」

 フェリシアの言葉にどう対応していいか分からないミランは、ルルンバを見つめながら、ふと、呟いた。

「このルルンバが使われるようになったら、以前の掃除魔道具お払い箱ってわけか。何だか可哀想だな」

 今度はフェリシアがきょとんとした。

「殿下、魔道具に感情はありませんよ。生物じゃなくて、道具ですから」

「まあそうなんだけど……」

「うわーーーーーーーー!!」

 そのとき、若い男の悲鳴が王宮の廊下に響き渡った。

「あの声は……」

 団長のフェリシアにはすぐに分かった。あの黒髪ヘアピンの団員だ。
 フェリシアとミランは声がした方向に急いだ。
 しかし、薄暗い王宮の廊下が続くばかり。
 その廊下に、見覚えのあるヘアピンがひとつ、落ちていた。

「これは、団員の……」

 あたりを探しても、黒髪ヘアピン団員はとうとう見つからなかった。

 魔法師団団員の行方不明者数は、計九人となった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...