(完結)猫嫌いの貴方とはさようなら。猫が足りないから婚約破棄してみせるわ

コーヒーブレイク

文字の大きさ
4 / 4

そういうのいいから

しおりを挟む
 私もメルも、目の前に立つ美青年に唖然とした。たしかに彼は、黒猫だったはず。
 黒猫だったはずなのに、今は私より少し上……十七、八くらいに見える青年(少年?)だ。
 異国の衣装を身に着け、金色の瞳をしている。
 メルの様子をうかがうと、顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせている。それぐらいイケメンなのだ。

 イケメンは言った。

「僕の名前はココア・ム・サハン。小さな島国の王子です。船でこの国を訪れたとき、悪い魔女に黒猫の姿に変えられてしまったのです。高貴な身分の若い女性のキスで、元の姿に戻るのです。おかげで元の姿に戻れました。もしよろしければ、僕と一緒に国にいらっしゃいませんか。元に戻してくれたお礼に、ぜひ妃に迎えたい」

 長い説明だった。ええと、たしかにこの国には悪い魔女がいて、たまに悪さを働いて困っているって、ワオンが言っていたけど。本当にいたんだ、魔女。
 というか、今、私求婚されてる? 妃って。

「僕と一緒に国にゆきましょう。美しい人」

「あ、そういうのいいです。私は当分、猫でいいので」

 ココアというイケメンが差し出した手を取らずに、私は首を振った。可愛い黒猫だと思ったのに、人間とか。がっかり。猫が減った。

「ええっ。だ、だけど貴方は婚約破棄されたんでしょう? 猫の姿で僕、聞いてましたよ」

 ココアはうろたえる。断られると思ってなかったんだろう。丁寧な振りしてすごい自信家だ。

「婚約破棄されたっていうより、そう仕向けたんです。私はまだ十六ですし、しばらく実家で猫たちを吸って過ごします」

「ぼ、僕の国だって、猫はいますよ」

「今はイケメンはいらないっていうか。イケニャンならいいけど」

「そんな」

 ココア王子は美しい顔を歪め、ショックを受けたように数歩後ずさる。そこで、私のとなりにちょこんと座っているメルにはじめて気がついたようだ。
 メルをじっと見つめると、

「その純粋な瞳……美しい」

 と言い、今度はメルに手を差し出した。おいおい。



 ♦♦♦



 それからひと月が経ち、ワオンに新たな婚約者が決まったと風のうわさで聞いた。
 メルは、ココアと恋人同士になり、二人で異国に渡った。
 時折届く手紙によると、婚約者となり、幸せでいっぱいらしい。私の口元も思わずほころぶ。メルと離れるのはさみしいけれど、妹同然に思っていた彼女の幸せは、私の幸せだ。喜ばずにはいられない。

 私は猫ライフを満喫している。ワオンとの日々を思い出す暇もないほど、猫の世話で忙しい。
 忙しいけど幸せ。
 猫に囲まれる幸せ。猫は猫のままでいいの。それだけで可愛い。

 当分、このままでいいや。



 終わり。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

真実の愛の祝福

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。 だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。 それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。 カクヨム、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

伯爵令嬢のぼやき

ネコフク
恋愛
「違う、違うんだよなぁ・・・・・・」 目の前にいる相手に聞こえないくらいにつぶやきそっとため息を吐く。 周りから見るとたおやかに紅茶を飲む令嬢とバックに花を散らすように満面の笑みを浮かべる令息の光景が広がっているが、令嬢の心の中は・・・・・・ 令嬢が過去に言った言葉が上手く伝わらなかった結果、こうなってしまったというお話。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...