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わあああああああ!
フェリクスは心の中で叫んだ。わ、私としたことが!
「ん? なんだ、この本。『惚れ薬の作り方』?」
気づくな、拾うな、このおめでた王子ーー!!
フェリクスの心の叫びが聞こえるはずもなく、ユリアンはフェリクスが拾うよりも早く、床の本を手にした。
どうしよう。
フェリクスが固まっていると、
「なんだ、この本? ずいぶん古いみたいだけど、おまじない本か? フェリシアもなんだかんだ言って、女の子なんだなあ」
ペラペラと本をめくりながら、呑気な声を上げた。
ミランと同様に魔力がなく、魔法と無縁なユリアンには中身が読めないようで、あからさまに興味がなさそうだった。そもそもこの男の頭は今、ビアンカでいっぱいだ。深く言及してくることもなさそうで、フェリクスはほっとした。
「返してよ、ユリアン」
フェリクスはユリアンの手から本を取り戻そうとしたが、ユリアンは本を高々と上げ、
「誰か好きな奴いるのか、フェリシア」
と、本を返す代わりにフェリクスに質問した。
なんでそうなる、とフェリクスはいらいらしたが、よくよく考えるとこんな本を懐に持っていたらそういう考えに至りもするか、と冷静に思い直す。
「正直に好きな奴教えてくれたら、返してあげるよー」
ユリアンは実に楽しそうに頭の上で書物を左右に振った。ユリアンは男性としてはかなりの長身で、フェリクスでもなかなか本に手が届かない。
「教えろよー。フェリシアちゃーん」
冷静な頭でフェリクスはこの男に殺意を覚えた。魔法で吹き飛ばしてしまおうかと本気で考える。
「……いないよ、そんな人。いいから返して。本気で怒るよ」
「怖いなあ。別におかしいことじゃないだろ、お前だって好きな人の一人くらい。誰だ? 魔法師団の団員か? 王宮内の誰かか? あ、まさか、俺? ごめーん、俺にはビアンカという愛する女性が……」
吹き飛ばそう、と体内の魔力を高めたとき、
「それとも、ミランか?」
想定外の名前の登場に、フェリクスは魔力を引っ込め、青い目を丸くした。
「どうしてミラン殿下?」
「お前とミラン、朝に王宮の外を二人で歩いてなかったか? 廊下でも一緒だったし」
……薔薇を取りに行ったときだ。見られていたのか。
「ミラン殿下にはマルガレーテ様がいらっしゃるじゃない。変なことを言うのはやめて。それに、ミラン殿下は私のこと、女だと気がついてないから」
甚だ心外だと思って、そういい放つ。あの自己中、無鉄砲王子に気があると思われるなんて。
「あー、なんだそうなのか。たしかにあいつは魔法師団と繋がりが特にないしな」
「そういうこと。接点がないのに、わざわざ女だって言うこともないでしょう。だからミラン王子には黙っててね。あと、それ、返してもらうよ」
ユリアンの高く掲げた右手から書物がひとりでに離れ、フェリクスの手に自動的に収まった。
「ずるいな、魔法か」
ユリアンは口をへの字に曲げた。
フェリクスは心の中で叫んだ。わ、私としたことが!
「ん? なんだ、この本。『惚れ薬の作り方』?」
気づくな、拾うな、このおめでた王子ーー!!
フェリクスの心の叫びが聞こえるはずもなく、ユリアンはフェリクスが拾うよりも早く、床の本を手にした。
どうしよう。
フェリクスが固まっていると、
「なんだ、この本? ずいぶん古いみたいだけど、おまじない本か? フェリシアもなんだかんだ言って、女の子なんだなあ」
ペラペラと本をめくりながら、呑気な声を上げた。
ミランと同様に魔力がなく、魔法と無縁なユリアンには中身が読めないようで、あからさまに興味がなさそうだった。そもそもこの男の頭は今、ビアンカでいっぱいだ。深く言及してくることもなさそうで、フェリクスはほっとした。
「返してよ、ユリアン」
フェリクスはユリアンの手から本を取り戻そうとしたが、ユリアンは本を高々と上げ、
「誰か好きな奴いるのか、フェリシア」
と、本を返す代わりにフェリクスに質問した。
なんでそうなる、とフェリクスはいらいらしたが、よくよく考えるとこんな本を懐に持っていたらそういう考えに至りもするか、と冷静に思い直す。
「正直に好きな奴教えてくれたら、返してあげるよー」
ユリアンは実に楽しそうに頭の上で書物を左右に振った。ユリアンは男性としてはかなりの長身で、フェリクスでもなかなか本に手が届かない。
「教えろよー。フェリシアちゃーん」
冷静な頭でフェリクスはこの男に殺意を覚えた。魔法で吹き飛ばしてしまおうかと本気で考える。
「……いないよ、そんな人。いいから返して。本気で怒るよ」
「怖いなあ。別におかしいことじゃないだろ、お前だって好きな人の一人くらい。誰だ? 魔法師団の団員か? 王宮内の誰かか? あ、まさか、俺? ごめーん、俺にはビアンカという愛する女性が……」
吹き飛ばそう、と体内の魔力を高めたとき、
「それとも、ミランか?」
想定外の名前の登場に、フェリクスは魔力を引っ込め、青い目を丸くした。
「どうしてミラン殿下?」
「お前とミラン、朝に王宮の外を二人で歩いてなかったか? 廊下でも一緒だったし」
……薔薇を取りに行ったときだ。見られていたのか。
「ミラン殿下にはマルガレーテ様がいらっしゃるじゃない。変なことを言うのはやめて。それに、ミラン殿下は私のこと、女だと気がついてないから」
甚だ心外だと思って、そういい放つ。あの自己中、無鉄砲王子に気があると思われるなんて。
「あー、なんだそうなのか。たしかにあいつは魔法師団と繋がりが特にないしな」
「そういうこと。接点がないのに、わざわざ女だって言うこともないでしょう。だからミラン王子には黙っててね。あと、それ、返してもらうよ」
ユリアンの高く掲げた右手から書物がひとりでに離れ、フェリクスの手に自動的に収まった。
「ずるいな、魔法か」
ユリアンは口をへの字に曲げた。
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