男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる

コーヒーブレイク

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「なんだ、君腹減ってるのかい? 何も食べてないの? 今、お菓子でも持ってこさせよう」

「うう……うっかり仕事を失念していて、急いでいたものですから……すみません、殿下」

「謝らなくてもいいよ。こっちとしては君に感謝したいくらいなんだから」

「感謝……ですか」

「俺の目に狂いはなかった! 常に人気魔法師団団員ランキングトップスリーに入るくらい、君のアイドル性は抜群だよ。君たちの活動で国が活気づくし、経済が回るよ。今度女性版魔法師団も作ろうか検討してるくらいなんだ」

 そんなことになってるのか、とフェリクスは驚いた。どんどん本来の魔法師団から遠ざかっていく……。

 給仕がやってきて、テーブルに「城下わさびせんべい」が置かれた。フェリクスの好物だった。

「このわさびとコーヒーが合うんだ。二週間前、ユリアンが買ってきた城下まんじゅうは甘すぎだったな。ミランあたりが好きそうなお子様な味だ。さあ、フェリシア君も食べたまえ」

「いただきます!」

 甘いものがあまり好きではないフェリクスは、嬉々としてせんべいを手に取った。平たい丸せんべいをぱきりと割って、口に入れたとき、リステアードが前髪をかき上げながら言った。

「突然なんだけど、一週間後、城内で君の魔法師団団長就任式を行うことになった」

 フェリクスはせんべいを口に含んだまま、青い目を丸くした。

「就任式はひと月ほど先では?」

 そういう話で、フェリクスは調整していた。

「そうだったんだけどさ、今来てる隣国の要人……、我が国が魔道具の取引をしている、貿易商の女性なんだけれど、結構ミーハーな女性でね。アイドル好きなんだそうだ。それで、我が国の魔法師団を是非、見てみたいって、こう、すごい迫力でさ、譲らないんだ。彼女が自国に帰る期限が一週間なんだよ」

「はあ」

 今廊下で警護してるんだから、今見ればいいじゃないか、とフェリクスは思った。それを見透かしたように、リステアードが付け足す。

「就任式では魔物を倒すパフォーマンスも行われる。魔法師団の戦う姿を見たいそうだ」

 魔物と言っても野生ではなく、王宮で飼育している訓練用の魔物だ。一人一人の団員が格好つけた見せ場を作り、魔法攻撃を与え、最後には捕獲するという、本当にただのパフォーマンス。魔物にもあらかじめバリアの魔法をかけてあって、大きな怪我をしないようになっている。

「そういうわけだから、今日の午後から就任式の練習を始めてほしい。主役は君とはいえ、招待される魔法師団ファンの貴族婦人たちを喜ばせる目的もある。魔物を倒すパフォーマンスもそうだけど、新・魔法師団団長としての独唱、しっかりね」

「はっ?」

 フェリクスは思わず間が抜けた声を出してしまった。独唱?
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