男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる

コーヒーブレイク

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 フェリクスは魔力が回復した後、魔法通話(電話だと思って下さい)で両親に「あれはパフォーマンスだよ、心配しないで」という趣旨の連絡をしていた。
 就任式の様子が魔法で映像化され、配信されているなら、心配しているかもと思ったからだ。
 父親も母親も、フェリシアが男装して魔法師団に入団すると決まったときにはそれなりに心配したが、今や二人して「フェリクス・ブライトナー」のファンとなり、魔法師団グッズを買い集め「娘が出世してめでたい! もっと稼いでくれ」と現金なことを言う始末である。
 唯一、ゆくゆくは家を継ぐことになっている兄だけは、今でも妹の身を案じてくれていた。
 フェリクスの兄は優しいが、気も体も弱い方である。自分が頼りないから妹に負担を強いていると、負い目に感じているのかもしれなかった。

 魔法師団に入ることは、後に安定した職を得るためで、私が自分で決めたことだから、そんなふうに思うことないのに。

 フェリクスはそんなことを思いながら、選んだ文芸書と共に、便箋と封筒、筆記具を購入した。

 ちょっと値段が張るけれど、長居を暗黙の了解で許してくれそうなカフェに入り、カウンター席に座って、昼食代わりの紅茶と軽食を注文した。
 少し逡巡したが、金髪を隠していた帽子はとった。

 紅茶とサンドイッチが昼食なんて、もっとしっかり食べないと、ミラン殿下に心配されてしまうかな。

 ふと「もっと食べろ」と叱るミランの顔が頭に浮かんで、フェリクスは苦笑した。

 そのとき、フェリクスの後ろを、二人組の男性が通りすぎ、あからさまにフェリクスの横顔を覗きこんだ。

(美人じゃん)

(一人かな)

 そんなことをささやき合いつつ、フェリクスの後ろの二人掛けテーブルに座った。

(でもデカすぎじゃね? 俺より背高いかも。なんかゴツいし)

(確かに。もうちょい、可愛い感じならなー)

 ははは、と軽薄な笑い声を立てる。

 デカくて悪かったな。可愛くなくて悪かったな。余計なお世話だ。

 聞こえないように言え、とフェリクスは苛立った。女一人だから舐められているんだろうか。魔法で吹き飛ばしたいところだが、公共の場で魔力を持っている者が攻撃魔法を使うのは違法である。いや、あんな軟弱そうな男二人くらい、魔力を使うまでもないか。

「紅茶とサンドイッチ、お待ちどうさまです。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとう」

 運ばれてきたサンドイッチにかぶりついて、もぐもぐと咀嚼しているうち、フェリクスははたと冷静になった。
 あ、あれ? 以前なら、こんなこと気にしてなかったのに。
 ユリアンに男装の方が似合っていると言われても、何とも思わなかった。
 自分は「可愛い」とは程遠いと思っていたし、そう思われたいともなりたいとも思わなかった。
 それなのに……。
 きっと、あの男二人の馬鹿にした口調に腹が立っただけだ。きっとそうだ。
 傷ついた、わけじゃない。

 フェリクスは手早くサンドイッチを食べ終えると、手紙を書くことに集中した。
 自分は可愛くなくったって、構わない。気にしてなんか、ない……。

(な、なんかあの女、手紙をくしゃくしゃにしながら、頭振って、一人ブツブツ言ってるぞ)

(お前がデカいなんて言うから聞こえたんじゃないのか。謝って来いよ)

(お、俺のせいかよ! 調子の乗ってつい言っただけで、そんなつもりじゃ……)

 後ろの男性二人が、悪口を言って後悔していたことを、フェリクスは知る由もない。
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