8 / 24
可愛いからって、迂闊に心を許しちゃいけない
しおりを挟む
その笑い方も、ジュリアは覚えていた。
いじめっ子の男の子たちが去ったあと、ジュリアは自らのドレスを引き裂き、ミゲル少年にキズの手当をしてやった。
ミゲルは手当てしてもらった箇所をじっと見つめたあと、
「お礼に、水の馬を見せてあげるね」
と言って、湖に近寄り、なにかの呪文を唱え始めたのだった。呪文が終わると、ミゲルはしゃがんで湖の水を両手ですくい、ジュリアの顔の前に掲げた。
「ほら」
そこには、水が集まってできた、小さな天馬がいた。小さいが、頭に角と、胴体に一対の翼を持っている。
「わあ」
ジュリアはその滑らかな水の馬に見とれた。見る角度によって翼が七色に光り、とても綺麗だった。
「助けてくれて、ありがとう。今はこんな小さな馬しか出せないけど、大人になったら、もっと大きな馬を出せるくらいの魔導師になるよ。……き、君のために……いや、何でもない、助けてくれて、本当に、ありがとう」
そう言って、ミゲルは今みたいに笑ったのだ。それこそ、しっぽを振った子犬みたいに。七年経っても変わっていない……そう思うと、自然とジュリアに笑みがこぼれた。
――が、そこではっとした。
この魔導師が「アンドロイド」とやらを召喚して、わたくしは婚約破棄されるはめになったのではなかったのか。わたくしの一生を台無しにしたのではなかったか。
彼は一体なぜ、そんなことを……?
ジュリアはほころびかけた口を引き結ぶと、ミゲル魔導師から距離を取った。
「ジュ、ジュリア様……?」
ジュリアの行動にミゲルは戸惑いの表情を浮かべた。
「貴方がわたくしと昔出会っていて、わたくしに感謝の気持ちをいだいていることは、分かりました。ならなぜ、わたくしの婚約の邪魔を貴方はしたの? あのアンドロイドを召喚したのは、貴方なのよね? 一級魔導師さん」
そう、しかも彼は魔導師の中でも優秀な、一級魔導師なのだ。女性が地位のある職業に就くことはこの国ではほぼないので、ジュリアは魔導師がどういうふうになるものなのかは知らないが、一級魔導師というのがとてつもない魔力を持ち、すごい魔法を使える、ということは知っていた。
わたくしの頭の中に話しかけてきたのも、空中に浮いたのも、ここまで一瞬で飛んできたのも全部、彼の魔法なのだわ。すべての魔導師が使えるわけではない、高度な魔法。
迂闊だった。目の前の魔導師は全然強そうに見えないけれど、むしろ守ってあげたくなるようなオーラを発しているけれど、実際は、何をしてくるのか分からないのよ。昔飼っていた犬みたいに可愛いからって、心を許すところだった。あぶないあぶない。
ジュリアは身構え、
「答えて頂戴。貴方はなぜ、私の婚約の邪魔をしたの?」
隙を見せないようにしっかりと、ミゲルを見据えた。ミゲルはそんなジュリアの態度に困ったように頭を掻くと、幾分決心したように口を開いた。
「実は、ジュリア様に二人きりでお話したいことがあるとは、それなのです。ジュリア様、ジルベール王太子は……ジュリア様が思っているような方ではありません。彼はただの軽薄な、女好きです」
「な、なんですって?」
ジュリアは絶句した。
いじめっ子の男の子たちが去ったあと、ジュリアは自らのドレスを引き裂き、ミゲル少年にキズの手当をしてやった。
ミゲルは手当てしてもらった箇所をじっと見つめたあと、
「お礼に、水の馬を見せてあげるね」
と言って、湖に近寄り、なにかの呪文を唱え始めたのだった。呪文が終わると、ミゲルはしゃがんで湖の水を両手ですくい、ジュリアの顔の前に掲げた。
「ほら」
そこには、水が集まってできた、小さな天馬がいた。小さいが、頭に角と、胴体に一対の翼を持っている。
「わあ」
ジュリアはその滑らかな水の馬に見とれた。見る角度によって翼が七色に光り、とても綺麗だった。
「助けてくれて、ありがとう。今はこんな小さな馬しか出せないけど、大人になったら、もっと大きな馬を出せるくらいの魔導師になるよ。……き、君のために……いや、何でもない、助けてくれて、本当に、ありがとう」
そう言って、ミゲルは今みたいに笑ったのだ。それこそ、しっぽを振った子犬みたいに。七年経っても変わっていない……そう思うと、自然とジュリアに笑みがこぼれた。
――が、そこではっとした。
この魔導師が「アンドロイド」とやらを召喚して、わたくしは婚約破棄されるはめになったのではなかったのか。わたくしの一生を台無しにしたのではなかったか。
彼は一体なぜ、そんなことを……?
ジュリアはほころびかけた口を引き結ぶと、ミゲル魔導師から距離を取った。
「ジュ、ジュリア様……?」
ジュリアの行動にミゲルは戸惑いの表情を浮かべた。
「貴方がわたくしと昔出会っていて、わたくしに感謝の気持ちをいだいていることは、分かりました。ならなぜ、わたくしの婚約の邪魔を貴方はしたの? あのアンドロイドを召喚したのは、貴方なのよね? 一級魔導師さん」
そう、しかも彼は魔導師の中でも優秀な、一級魔導師なのだ。女性が地位のある職業に就くことはこの国ではほぼないので、ジュリアは魔導師がどういうふうになるものなのかは知らないが、一級魔導師というのがとてつもない魔力を持ち、すごい魔法を使える、ということは知っていた。
わたくしの頭の中に話しかけてきたのも、空中に浮いたのも、ここまで一瞬で飛んできたのも全部、彼の魔法なのだわ。すべての魔導師が使えるわけではない、高度な魔法。
迂闊だった。目の前の魔導師は全然強そうに見えないけれど、むしろ守ってあげたくなるようなオーラを発しているけれど、実際は、何をしてくるのか分からないのよ。昔飼っていた犬みたいに可愛いからって、心を許すところだった。あぶないあぶない。
ジュリアは身構え、
「答えて頂戴。貴方はなぜ、私の婚約の邪魔をしたの?」
隙を見せないようにしっかりと、ミゲルを見据えた。ミゲルはそんなジュリアの態度に困ったように頭を掻くと、幾分決心したように口を開いた。
「実は、ジュリア様に二人きりでお話したいことがあるとは、それなのです。ジュリア様、ジルベール王太子は……ジュリア様が思っているような方ではありません。彼はただの軽薄な、女好きです」
「な、なんですって?」
ジュリアは絶句した。
0
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤
凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。
幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。
でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです!
ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる