パパ活始めました!

ももがぶ

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第一章 初めてのパパ活

第1話 出会いは突然に

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「はい。依頼達成です。お疲れ様でした」
「おう。また、頼むな」

 馴染みの受付嬢に声を掛け、冒険者ギルドを出ようとしたところで、会いたくないヤツから声を掛けられる。

「あ、ジン! お前、いつBランクの昇進試験受けるんだ!」
「あ~もう、だから俺は受けないって言ってるだろ! いい加減、諦めろよ!」
「い~や、ダメだ! そもそもお前は……」

 冒険者ギルドの受付カウンターで達成した依頼の報酬を受け取り、いつもの様にギルドの口座へと振込をお願いし踵を返そうとしたところで、奧にいたギルマスがジンに気付き声を掛けて来た。

 だが、ジンはBランクには興味がない。本音を言えば、ランクアップによる依頼の報酬額には少々後ろ髪を引かれる思いはある。だが、Bランクに上がってしまえば、指名依頼やBランク以上の冒険者に対しての強制依頼が増えたりと枷もキツくなる。

 ジンはこのまま暮らしていくなら、十分な報酬に蓄えもあることからランクアップには興味がないとギルマスにはちゃんと言ってある。だが、ギルマスは『ガムリン支部』としての高ランク冒険者が少ないことから、ジンにはどうしてもBランクへのランクアップ、そして最終的にはSランクに手が届くAランクへと昇って欲しいと考えている。

 でも、当のジンはとギルマスからの誘いを断り続けている。

「もう、ジンさんは出て行きましたよ。ギルマス」
「へ? 何故、止めない!」
「もう、ギルマスだって分かっているんでしょ。ジンさんはいくら言っても首を縦に振らないことくらい」
「そうだけどよ。勿体ないだろ……」
「まあ、それは確かにそうは思いますけど……」
「それにお前ジュリアだって、旦那が高給取りになった方が嬉しいだろ?」
「な、何を言ってるんですか、ギルマス!」
「何ってお前の気持ちなんてバレバレだぞ。なあ?」

 ギルマスがジュリアのジンに対する思いはここにいる連中なら皆が知っていると言えば、ジュリアと並んで座っている他の受付嬢や冒険者ギルド内で屯している冒険者達の皆が黙って頷く。

「え、ウソ……」
「ウソなもんか。お前のそのあからさますぎる態度から丸わかりだ」
「誰がそんなことを言ってるんですか! もう、いいです。次の方、どうぞ」
「おう、頼む」
「……」

 ジュリアはギルマスの言葉にムッとしながらも話を打ち切ると次に並んでいる冒険者の依頼達成報告をで対応する。

「前のヤツと随分、態度が違うんだな」
「そんなことはありませんよ。はい、依頼達成です。これが報酬になります。次の方ぁ~」
「……」
「あの、まだ何か用ですか?」
「いや、いい。ちょっと憧れていたんだけどな……」
「変な人、次の方ぁ~」
「……」

 ジュリアの隣で作業していたミールはと呟くがジュリアの耳には入らない。

 ジンは冒険者ギルドを出ると、まだ夕食を済ませるには陽が高いなと屋台の串焼きを買うために懐から銅貨が入った革袋を取り出そうとしたところで、その革袋を落としてしまい、拾おうと身を屈めたところで『ドン』と誰かにぶつかってしまう。

 ジンは革袋を拾うのを止め、ぶつかって来た子供に手を差し伸べ「大丈夫か、坊主」と声を掛けると、その子供はジンを睨み付けると落ちていた革袋をサッと拾い駆け出していく。

「あ……」
「ははは、やられたな」
「おっちゃん……」
「おっと、悪いがツケはお断りだ」
「ま、そうだよね。あ~もう、面倒臭いな」
「ほどほどにな」
「分かってるって」

 目の前の串焼き屋のオヤジに揶揄われるように笑われ、ツケでの購入も先に断られ少し落ち込むが、面倒だと言いながらさっき革袋をを探す。

「ちっ! なんだよ、こりゃ」
「拾った……」
「あぁ? 俺は金持ちから財布をスッて来いって言ったんだ。誰が、こんな小汚い革袋を拾ってこいって言った!」
「でも……」
「うるせぇ! 俺に口答えすんな!」
「痛ッ!」

 座ったままの禿頭でまだ若い男が黒いタンクトップから剥き出しになった太い腕で子供の頬を叩くと子供は、その場から壁に向かって飛んで行く。

「ったく使えねぇな。こんな革袋なんてよ」
『ドンドンドン!』
「あん? 誰だ。おい、見て来い!」
「へい」

『ドガッ!』
「「「へ?」」」
「小汚くて悪かったな」
「あん? 誰だ、お前?」
「ちっ、面倒くせえな。おい、坊主。財布を拾ったなら、届け先はここじゃなくて衛兵の詰所だろうが。なんだってこんなスラム街の奧にまで……ったく面倒くせぇ」
「あ……」
「ん? 頬が赤いな。どうした? まさか、誰かに叩かれたのか? 叩いたのはどいつだ? 言ってみろ。お兄ちゃんが代わりに叱ってやるから。さあ、誰だ?」
「……」

 スラム街の奧に入り込んだ小屋の中に扉を蹴破り入ってみれば、ジンの革袋を右手に持っていたのはまだ若そうに見えるハゲ頭の男だったが、ジンはそんなことよりも頬を抑えて蹲っているさっきの子供が気に掛かり、側に近付くとしゃがんで子供の目を見ながら話しかける。

 頬を抑えたまま、子供はジンのことを不思議そうに見ていた。そして、ジンは何も答えない子供の頭をポンポンと叩き「まあ、無理するな。悪い奴が誰なのかは分かってる」と声を掛ける。

 そしてまだ赤い子供の頬にジンは手を重ねると「ヒール」と呟く。

「……!」
「お、痛みは治まったみたいだな。じゃあ、これを持って冒険者ギルドのジュリアって人に渡してこう言ってくれ『早く来い!』ってな」
「え……」
「ん? 冒険者ギルドの場所が分からないか? お前が俺にぶつかった場所の近くだぞ」
「それは知ってる!」
「そうか。なら、頼むな」
「……怒らないの?」
「あ? 何をだ?」
「だって……」
「いいから、今はギルドまでのお使い頼むな」
「うん!」

 子供はジンから渡されたジンのギルドカードを握りしめると、直ぐに小屋の外へと飛び出して行った。

「おい!」
「なんだよ。早く返せよ。それは俺のだ」
「あ? 欲しけりゃ、取り返せばいいだろ? ま、出来ればだけどな。ギャハハ」
「「「ギャハハハ」」」

 リーダーらしい禿頭の若い男がジンの革袋を手に持ったまま、欲しければ取り返せと笑い、他の手下達もジンを指差して笑う。

「アイツ、死んだな」
「ああ、お頭を怒らせたからな」
「なあ、何分かな?」
「掛けになるか。一瞬だ! 一瞬!」
「ふはは、だってよ、どうする?」
「あ? 面倒くせぇなぁ」

 ジンはそう言うと座ったままのリーダーに一瞬で近付くと革袋を取り上げ、椅子の脚を蹴り上げ、リーダーごと椅子を倒す。

「お、ホントに一瞬だったな。じゃ、俺はこれで用は済んだが……そっちは済んでないみたいだな。面倒くせぇ」
「……」
「「「リーダー……」」」
「お、お前ら何、黙って見てんだ! さっさとコイツをやっちまえ!」
「「「へ、へい!」」」
「まったく面倒だな。いいから、早く掛かってこいよ!」
「お前ら、さっさと黙らせろ!」
「「「へい!」」」

 リーダーの言葉に手下達がジンを取り囲むが、ジンはそれを見ても慌てる素振りを見せず、ハァと嘆息してから「面倒くせぇ」と零し、手下達を一人ずつ指差しながら「ひのふのみぃの……あ~もう面倒くせぇ」と途中から数えるのを止めると右手をリーダーに向け、ちょいちょいと人差し指で揶揄う様に挑発する。

「くっそぉ舐めやがって!」
「この野郎!」
「喰らいやがれ!」
「おらぁ!」
「面倒くせぇ……」

 ジンは次々と襲いかかってくる手下達を捌きながら、鳩尾や顎を殴り戦闘不能にしていくとリーダーが懐からナイフを取り出し「舐めやがって」とジンに斬りかかる。

「また、面倒なもん持ち出しやがって」
「うるせぇ!」

 リーダーはジンに向かってナイフを振り回すが、ジンはそれを片手で捌く。

「ちっ……なんなんだよ、お前は!」
「だから、革袋を返して貰いに来ただけだ」
「はぁ? あんな革袋一つで俺達は……」
「気にするな。相手が悪かっただけだ」
「うるせぇ!」
「まだ、来んのかよ。ったく面倒くせぇな」

 ジンはリーダーのナイフを持つ右手に手刀を叩き込み、ナイフを落とすと「まだやるのか?」とリーダーに問い掛ける。

「うるせぇ! このままで済ませられるか!」
「ったく、本当に面倒くせぇ……」

 リーダーは壁に立て掛けてあったカットラスを手に取り「俺にこれを握らせたことを後悔するなよ」とジンに向かい言い放つが、ジンは「来いよ」と指でクイクイと挑発する。

「クッ……舐めやがって!」
「いいから、早くしてくれ」
「この野郎! へ?」

 リーダーは右手に持ったカットラスを振り上げるとジン目掛けて振り下ろすが、どうした訳か右手が途中で止まる。

「ま、こんなもんか。もう少し鍛えるんだな。ふん!」
「あ……」

 ジンはリーダーが振り下ろしたカットラスを右手の人差し指と中指で受け止めると、それを見たリーダーの心が折れた瞬間にカットラスをそのまま指の力だけで折ってみせる。

「ジンさん! あ……」
「よ!」
「殺っちゃいました?」
「いや、多分大丈夫だろ」
「分かりました。じゃ、捕縛の方、お願いしますね」
「お任せを。おい!」
「「「はい!」」」

 小屋の中に駆け込んできたジュリアに対し軽口で応対すると、ジュリアは一緒に来た衛兵に対し捕縛をお願いする。

「ふぅこれで面倒なのも終わりだな。ん?」
「……」

 ジンが次々と捕縛されていくチンピラ達を眺めていると、ジンの服の裾をツンツンと引っ張る感触があるので、何かと下を見ればさっきの子供がジンの服の裾を掴んでいた。

「お、坊主。ありがとな、お前のお陰でいい小遣い稼ぎになったわ」
「……がう」
「ん?」

 ジンが子供の頭をガシガシと少し強めに撫でていると子供が不機嫌そうに何かを呟く。ジンはその呟きを上手く聞き取れなかったので、屈んで子供と同じ目線になる。

「どうした? 礼ならちゃんとするからな。心配するな」
「……だから、違う!」
「ん? おい、どうした? まさか、アイツらに何かされていたのか! こんな年端もいかない坊主になんてことを! ん?」

 ジンは子供の様子から、アイツらが何かしたのかと立ち上がろうとしていたところで、子供に腕を引かれバランスを崩しそうになり「どうした?」と子供に問い掛ける。

「だから、違うんだって! 僕は坊主じゃない!」
「……そっか、そうだよな」
「うん!」
「悪かったな。 痛っ!」

 ジンが立ち上がり、じゃないと言う子供に謝ったのだが、それも不正解だったようで、子供はジンの向こう臑を思いっ切り蹴る。

「だから、さっきから違うって言ってんのに……グスッ……うぇぇぇん」
「え? なんだよ。もう、面倒くせぇ」
「ジンさん? 何をやってるんですか?」
「いや、この坊主……いや、少年がな」
「あぁ……そう言うことでしたか」
「え? ジュリアはこのお子様が泣いている理由が分かるのか?」
「ええ、分かりますとも。はい、いいから泣き止みなさい。可愛い顔が台無しよ。お嬢さん」
「え……お、お嬢さん?」
「ええ、どこからどう見ても女の子ですよ。ねえ」
「……グスッ」

 ジンがいきなり泣き出した子供の対応に困っていると、見かねたジュリアが側に寄ってきて子供にハンカチを渡し泣き止むように言うが、ジンは別のことに驚いていた。

「いや、だってそのは『僕』って言ってたんだぞ」
「……僕は女だ!」
「ホント、ジンさんは……こんなところで女の子だと分かれば、どんな目に合うかいくらジンさんでも想像が着くでしょう。まったく肝心なところが鈍いのよね。ハァ~」
「えぇ俺が悪いのか?」
「当たり前です!」
「当たり前!」
「えぇ~」

 ジンはジュリアが女の子だという子供を改めて見るが、身長は百二十センチメートルくらいで生成りのシャツに茶色のズボンで髪も短いので、普通に男の子だと思っていた。だが、実は僕っ娘だったらしい。

「ったく面倒くせぇ」
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