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第三章 旅の始まり
第二話 なんとか王都
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王都の城壁に馬車が辿り着いた頃には城壁を夕陽が橙色に照らしていた。
王都の城壁の前で馬車を下ろされ、王都に入る手続き待ちの列に並ぶ。一時間もしない内に俺達の番となり、衛兵の前に並ぶ。
「身分証は?」
「はい」
衛兵に身分証の提示を求められたので俺達は自分の冒険者ギルドのギルドカードを渡すと何故か俺のカードだけを凝視する衛兵達。アオイ達のカードはすぐに返してくれたのに俺のカードだけを持って二,三人で固まりあ~だこ~だと言っているのが分かる。
微かに漏れ聞こえてきたのは「見た目が違う」「名前は一緒だ」「従魔の大きさが報告とは違う」「一人だと聞いている」とかだ。これは間違いなく手配されているなと感じたが、ここで騒ぐことは出来ないので、こちらから声を掛けてみる。
「あの~」
「ああ、すまん。返すぞ、ほら」
「何か問題でもありました?」
「あ~いやなんでもない。ほれ、行っていいぞ」
「はい、ありがとうございます」
衛兵にぞんざいに扱われたが、どうにか第一関門の街門は抜けて王都に入ることは出来た。俺がホッと胸を撫で下ろし、通りを歩く。すると、ガイルがススッと寄ってきて「何があったんだ?」と聞いてきた。
「あまり、こういうところでする話じゃないから、後で話すよ」
「ん、そうか。何か問題なら力を貸すぞ。まあ、文字通りの『力』で解決することしか出来ないがな」
「うん、ありがとう」
「まあ、なんとかなるだろうさ」
ガイルさんに肩をバンバン叩かれながらも一つ目の目的地である冒険者ギルドを探そうと思ったが、ガイルさんの遅くなる前に宿を決めてしまおうという提案に従い宿を探すことにした。
「ガイルさんは王都に詳しいの?」
「まあ、それほど詳しいとは言えないが、全く知らない訳でもない。そうだな、俺が知っている宿がまだあれば、そこにしようと思うがどうだ?」
「うん、お願いします」
「おう、じゃあ直ぐそこだから、行こうか」
「メシは美味いんだろうな」
「任せろって」
ガイルさんは久々の王都だからなのか、その宿に行けるのが嬉しいのか自然と顔が綻んでいる。
ガイルさんを先頭に歩くこと数分、ガイルさんが「ここだ」と一軒の建物の前で止まる。
「ここ?」
「ああ、そうだ。ちょっと待ってろ。お~い、リック! ガイルだ!」
ガイルさんが戸口の前から中に向かって大きな声で話しかけると「誰だ? こんな忙しい時間に……」と短髪でガッシリして角張った顔のオジサンが出て来た。
背丈は百八十センチメートルを超え、異様に発達した胸筋とシャツがはち切れそうな上腕二頭筋だ。思わず「すげぇ」と声に出るが、そのオジサンはガイルさんの顔を認めると「ガイルか?」と確認してきた。
「おうよ。久しぶりだなリック」
「生きてたか……」
「ははは、スマンな。ダリウスの引退と一緒に俺も冒険者生活から引退したからな、ここに来る用事もなかったんでな」
「ったく、生きているならたまには顔ぐらい見せろってんだ。それで、なんの用だ?」
「なんの用って、ここは宿屋だろうが。なら、泊まりに来たに決まってんだろ」
「おぉ、そうだな。それもそうだ。三人と一匹か。四人部屋で構わないなら、空いてるぞ。どうする?」
そう言われたガイルさんは俺とアオイを交互に見る。
「俺は構わんぞ。コータとはいつも一緒だからな」
「そうか。じゃリックそれで頼む」
「ああ、分かった。なら、中に入れ。部屋に案内する。それで、何泊の予定だ?」
リックさんに促され宿の中に入り、受付カウンターの前に案内されると宿泊予定を聞かれガイルさんが俺を見てきたので俺は「一泊でお願いします」と答える。
「なんだよ。久々の王都でたったの一泊かよ」
「悪いな。俺の国に少しでも早く帰りたい用事があってな」
「用事か。そうか、なら仕方ないか」
「あ、そうだ。どこか馬車を世話してくれるところはないか?」
「ん? それは買うのか? それとも御者付きか?」
その質問にまたガイルさんが俺を見てきたので俺が答える。
「出来れば購入で。無理ならドンガ国まで送ってくれる馬車を紹介して下さい」
「そうか。ガイルの国まで行くのなら、遠いな。なら、買った方が安いかもしれんぞ」
「そうだな。じゃあ、それで頼む」
「分かったよ。明日の昼前には案内してやろう」
受付カウンターの中から鍵を一つ手に取りリックさんが先導する形で俺達を案内してくれる。
一階奧の階段を上がり二階の奧へと通される。
リックさんが部屋の扉に鍵を差し込み扉を開けると「じゃ、後はガイルに聞いてくれ。メシは下だ」とリックさんに鍵を渡されたので、俺はそれを受け取りお礼を言う。
「はい、ありがとうございます」
「はいよ。じゃあ、ガイル。後でな」
「ああ、後でな」
リックさんを見送ると部屋の中へと入る。
四人部屋という様にベッドは横並びではなく田の字型に配置されている。そのベッドの配置を見て直ぐにガイルさんが部屋の隅に置かれたベッドの上に自分の手荷物を放り投げる。
「俺は壁際の端を使わせて貰うな」
「いいよ。じゃ、俺はその横で……って何? ガイルさん」
「いいのか?」
「いいのかって何が?」
「いや、だから俺は耳を塞いでいるし、なんなら出ててもいいぞ」
「ガイルさん……ないから!」
「そう……なのか?」
「そうなの! それにタロもいるんだし、ないから!」
「そうか。じゃあ、先にメシにしようか」
『ご飯!』
「やっとだな」
それぞれの荷物をアイテムボックスから取り出し、ある程度片付けてから皆で一階の食堂へと向かう。
ここではテンプレは起きなかったけど、アオイが注目されてしまったので、まだ飲み足りない、食べ足りないという一人と一匹をなんとかテーブルから引っぺがし、ガイルさんにはごゆっくりとだけ言って先に部屋に戻った。
王都の城壁の前で馬車を下ろされ、王都に入る手続き待ちの列に並ぶ。一時間もしない内に俺達の番となり、衛兵の前に並ぶ。
「身分証は?」
「はい」
衛兵に身分証の提示を求められたので俺達は自分の冒険者ギルドのギルドカードを渡すと何故か俺のカードだけを凝視する衛兵達。アオイ達のカードはすぐに返してくれたのに俺のカードだけを持って二,三人で固まりあ~だこ~だと言っているのが分かる。
微かに漏れ聞こえてきたのは「見た目が違う」「名前は一緒だ」「従魔の大きさが報告とは違う」「一人だと聞いている」とかだ。これは間違いなく手配されているなと感じたが、ここで騒ぐことは出来ないので、こちらから声を掛けてみる。
「あの~」
「ああ、すまん。返すぞ、ほら」
「何か問題でもありました?」
「あ~いやなんでもない。ほれ、行っていいぞ」
「はい、ありがとうございます」
衛兵にぞんざいに扱われたが、どうにか第一関門の街門は抜けて王都に入ることは出来た。俺がホッと胸を撫で下ろし、通りを歩く。すると、ガイルがススッと寄ってきて「何があったんだ?」と聞いてきた。
「あまり、こういうところでする話じゃないから、後で話すよ」
「ん、そうか。何か問題なら力を貸すぞ。まあ、文字通りの『力』で解決することしか出来ないがな」
「うん、ありがとう」
「まあ、なんとかなるだろうさ」
ガイルさんに肩をバンバン叩かれながらも一つ目の目的地である冒険者ギルドを探そうと思ったが、ガイルさんの遅くなる前に宿を決めてしまおうという提案に従い宿を探すことにした。
「ガイルさんは王都に詳しいの?」
「まあ、それほど詳しいとは言えないが、全く知らない訳でもない。そうだな、俺が知っている宿がまだあれば、そこにしようと思うがどうだ?」
「うん、お願いします」
「おう、じゃあ直ぐそこだから、行こうか」
「メシは美味いんだろうな」
「任せろって」
ガイルさんは久々の王都だからなのか、その宿に行けるのが嬉しいのか自然と顔が綻んでいる。
ガイルさんを先頭に歩くこと数分、ガイルさんが「ここだ」と一軒の建物の前で止まる。
「ここ?」
「ああ、そうだ。ちょっと待ってろ。お~い、リック! ガイルだ!」
ガイルさんが戸口の前から中に向かって大きな声で話しかけると「誰だ? こんな忙しい時間に……」と短髪でガッシリして角張った顔のオジサンが出て来た。
背丈は百八十センチメートルを超え、異様に発達した胸筋とシャツがはち切れそうな上腕二頭筋だ。思わず「すげぇ」と声に出るが、そのオジサンはガイルさんの顔を認めると「ガイルか?」と確認してきた。
「おうよ。久しぶりだなリック」
「生きてたか……」
「ははは、スマンな。ダリウスの引退と一緒に俺も冒険者生活から引退したからな、ここに来る用事もなかったんでな」
「ったく、生きているならたまには顔ぐらい見せろってんだ。それで、なんの用だ?」
「なんの用って、ここは宿屋だろうが。なら、泊まりに来たに決まってんだろ」
「おぉ、そうだな。それもそうだ。三人と一匹か。四人部屋で構わないなら、空いてるぞ。どうする?」
そう言われたガイルさんは俺とアオイを交互に見る。
「俺は構わんぞ。コータとはいつも一緒だからな」
「そうか。じゃリックそれで頼む」
「ああ、分かった。なら、中に入れ。部屋に案内する。それで、何泊の予定だ?」
リックさんに促され宿の中に入り、受付カウンターの前に案内されると宿泊予定を聞かれガイルさんが俺を見てきたので俺は「一泊でお願いします」と答える。
「なんだよ。久々の王都でたったの一泊かよ」
「悪いな。俺の国に少しでも早く帰りたい用事があってな」
「用事か。そうか、なら仕方ないか」
「あ、そうだ。どこか馬車を世話してくれるところはないか?」
「ん? それは買うのか? それとも御者付きか?」
その質問にまたガイルさんが俺を見てきたので俺が答える。
「出来れば購入で。無理ならドンガ国まで送ってくれる馬車を紹介して下さい」
「そうか。ガイルの国まで行くのなら、遠いな。なら、買った方が安いかもしれんぞ」
「そうだな。じゃあ、それで頼む」
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受付カウンターの中から鍵を一つ手に取りリックさんが先導する形で俺達を案内してくれる。
一階奧の階段を上がり二階の奧へと通される。
リックさんが部屋の扉に鍵を差し込み扉を開けると「じゃ、後はガイルに聞いてくれ。メシは下だ」とリックさんに鍵を渡されたので、俺はそれを受け取りお礼を言う。
「はい、ありがとうございます」
「はいよ。じゃあ、ガイル。後でな」
「ああ、後でな」
リックさんを見送ると部屋の中へと入る。
四人部屋という様にベッドは横並びではなく田の字型に配置されている。そのベッドの配置を見て直ぐにガイルさんが部屋の隅に置かれたベッドの上に自分の手荷物を放り投げる。
「俺は壁際の端を使わせて貰うな」
「いいよ。じゃ、俺はその横で……って何? ガイルさん」
「いいのか?」
「いいのかって何が?」
「いや、だから俺は耳を塞いでいるし、なんなら出ててもいいぞ」
「ガイルさん……ないから!」
「そう……なのか?」
「そうなの! それにタロもいるんだし、ないから!」
「そうか。じゃあ、先にメシにしようか」
『ご飯!』
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それぞれの荷物をアイテムボックスから取り出し、ある程度片付けてから皆で一階の食堂へと向かう。
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