異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ

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第三章 旅の始まり

第四話 俺は知らない

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王都の冒険者ギルドに来たのはいいが、何故だかここのギルドマスターであり、トガツ王国の冒険者ギルドの統轄でもあるエミリーさんが俺に詳細を話せと凄んでくる。

今日は渡す物を渡して、貰う物を貰ってさっさと王都から出る予定だったが、エミリーさんが俺の両肩をガッシリと掴んで「いいよな?」と凄んで来るので「うん」と頷く以外の手段はない。

「ふふふ、いや~なんだか無理に引き留めてしまったみたいで悪いな」
「な、それは……」
「それは……なんだ?」
「いえ……いいです」
「そうか。ふふふ……」

エミリーさんが言った言葉に思わず突っ込みを入れてしまうが、エミリーさんに睨まれ答えは宙に舞う。

「それで、俺は何をすればいいんですか?」
「正直に話せばいい。ただ、それだけだ」
「機密保持はお願いするまでもないんでしょうね」
「ああ、それは約束しよう」
「では、どこからお話しすれば?」
「そうだな、この世界に来てから……とかどうだ?」
「……」

エミリーさんの要求リクエストにギルマスがどこまで話しているのかが分かった。ほぼ全てをあの渡した紹介状に書いたんだろうなということが。

「じゃあ、ダリウスさんにも言ったけど、『ウソ』『信じられない』とか類義語が出てもそこで一発中止にするけど、それでもいい?」
「ああ、いいぞ。しかし、口調が一気に変わったが、そっちが本音か」
「まあ、今はそれはいいでしょ。で、その条件でいいですか」
「ああ、構わないぞ」
「じゃあ、話すよ」
「ああ、頼む」

俺はエミリーさんにこの世界にタロと一緒に呼ばれてから第三王女のソフィアに付きまとわれた日々を話したところで、タロのお腹が『ぐ~』と鳴る。

「お、もうそんな時間か。じゃあ、お昼を用意させるから、そのまま待っててくれ」
「あ、はい」

エミリーさんは部屋の扉を開けると職員を呼び、昼食の準備を頼むと、そのまま部屋の中に戻りソファへと腰を下ろす。てっきりエミリーさんも部屋を出るのかと思えば、何やら楽しいオモチャを見つけたような顔で俺の方をジッと見ている。

「俺に何か?」
「いやな、そのなりでダリウスがAランクどころか、Sランクに上げて欲しいと書かれていたのでな」
「そうなんですね。で、それが何か?」
「いや、私の前にこんなご馳走強い男を寄越したのだ。ならば、することは一つだろう。さあ、闘おう愛し合おうじゃないか」
「え? 字面と言っていることが違うと思いますけど?」
「ん? そうか。じゃあ、愛し合おう闘おうじゃないか」
「いや、テレコになっただけで一緒ですから」
「もう、面倒だな。よし、メシを済ませたら腹ごなしに一発ヤロうじゃないか」
「それはどういう意味で?」
「ふふふ、それはお前次第だな……」
「チェンジで!」
「は? お前、何を言ってるんだ!」
「だから、そういう戦闘バトルジャンキーとは致しません!」
「……」

俺がエミリーさんからの要求を突っぱねたことが余程ショックなのか、エミリーさんは俺の方をジッと見詰める。

「見ててもいいですけど、しませんから」
「なんでだよ! 推薦状が欲しくないのか?」
「他で調達しますのでご心配なく」
「……いや、でも、それだと」
「問題ないはずですよね」
「ぐぬぬ……」
「してやればいいだろ。何が問題なんだ?」
「アオイ……」

エミリーさんの要求に対しアオイが「いいじゃないか」と言ってきたものだから、エミリーさんの顔がパァッと明るくなる。

「なんだ、随分話が分かるパートナーじゃないか」
「別にパートナーって訳じゃないけど……」
「コータが面倒なら俺が相手してもいいぞ」
「じゃ……」

アオイの助け船に「じゃあ、お願いします」と言おうとして、それを呑み込む。

エミリーさんという相手はどういう人物かも分からないが、極度の『戦闘中毒バトルジャンキー』だと言うのは間違いないだろう。

そんな人の相手をアオイがすると言う。確かに相手にするには問題ないくらいの基本ステータスはあると思うが、相手は腐っても王都の統轄ギルドマスターだ。何があっても不思議ではない。だから、俺はアオイの助けを断る。

「いや、いい。俺がする」
「いいのか?」
「いい。多分だけど、この人は俺が相手をしない限りはいくらでも理由をつけて俺と闘わざるを得ない形に持って行くと思うよ」
「ほ~よく分かってるじゃないか」
「……やっぱり。じゃあ、今は昼食を楽しむことにします」
「うむ、それがいいだろ」
「そういうことだから、タロもアオイも遠慮なくイッちゃって!」
「分かった。馳走になろう」
『ワフ!』

アオイは俺が言いたいことが分かったのか、タロを連れて部屋の外へと出ると冒険者ギルド内に併設されている食堂へとタロと一緒に向かう。

「そういう訳でゴチになります」
「あ、ああ……なるべく手加減してくれると嬉しいかな?」
「あ~言うの忘れてましたね」
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