異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ

文字の大きさ
98 / 131
第三章 旅の始まり

第二十五話 終わったけど始まりそう

しおりを挟む
 王は、弟であるジャミール公爵の告白に対し「ハァ~」と短く嘆息するとジャミールを一瞥してから「なぜ、このようなことを……」と口にする。そして、それを聞いたジャミールは「……のせいだ」と呟く。

 ジャミールが呟いた声は小さく王の耳に十分に届くことはなかったために、王はジャミールに対し聞き返す。

「ジャミールよ、答えよ。なぜこのようなことをしたのだ」
「兄上のせいだ!」
「……分からぬ。其方は王弟という立場でもある。権力で言えば、余の次と言ってもいいだろう。それの何が不満なのだ」
「……何が不満だと!」
「そうだ。余の次という地位だが、どこに不満があるというのだ」
「全部だ!」
「ん?」

 王の問い掛けにジャミールは全てが不満だと答える。そして、その返事を聞いた王は驚いてしまう。

「全部が不満だと?」
「ああ、そうだ。何故、兄上がそこに座っているのだ! そこに座るのは私こそ相応しいというのに……」
「ジャミールよ。何故、そう思うのだ」
「分からないのか。それとも考えていないだけなのか」
「む? どういうことだ? 何を言っている?」
「ふん! 本当に分からないようだな」
「だから「黙れ!」……ジャミール……」

 王がジャミールに一喝され言葉を呑み込むとジャミールは「ふぅ~」と軽く深呼吸をすると王に向かって静かに話し出す。

「私が何を不満に思っているのか、知らないと言ったな。ならば、それを全部話してやろうじゃないか。私はこの後は謀反の罪で罰せられるだろうから、自由に話せるのは今のこの機会だけだろうからな。だから、これから話すのは私の遺言も含まれていると思って聞いて欲しい。私は……」

 ジャミールはこれから自分が罰せられることを覚悟した上で不満に思っていることをゆっくりと話し出す。

 俺はなんでこんなおじさんの不満や愚痴を聞かされているのだろうかと思わず不機嫌になるが、ジャミールにとってはこれが自由に話せる最後の機会だと思うと邪魔するのも悪い気がする。

 だけど、さっきから話しているのは単なる弟として生まれたばかりに兄である王に対する不満ばかりだ。そうやって王を非難したいのは分かるが、その内容がどれも乏しい。非常に残念なオジサンにしか見えなくなってきた。

 そんなこんなでやっと、姫さんを襲撃した理由へと話が進み、俺も眠くなってきたのを堪えて耳を傾ける。

「私がソフィアを襲撃した理由は、単に王妃達の仲違いから王室の不穏説を流布したかったからだ」
「妃達がソフィアを襲撃させ、それが成功すればそれを切っ掛けにして世論を味方にし、余を玉座から下ろそうとしたと?」
「ああ、そうだ。そもそも、兄上がブリジットを娶らなければ……私もこんなことは……」
「ん? 何故、ここでブリジットが出て来る?」
「ふ……分からないか。そうだよな。私も誰にも言ってなかったからな」
「……」

 やっと姫さんの襲撃理由は分かったが、そんなことの為に俺の異世界生活は最初から躓いたのかとガックリしていたが、ジャミールはまだ何か思うことがあるのか、姫さんの母親の名前を出してきた。

 姫さんの母親が出て来たことに王も「?」が頭の上にいくつも浮かんでいるのが分かる。王もジャミールに対し、直接「どういうことなのか」と聞けば、ジャミールは軽く笑うとまた、語り出す。

「私はブリジットをいつか、第二夫人に迎えたいと思っていた。なのに……兄上が、ブリジットを横から攫っていったのだ!」
「ジャミール、攫ったというが「攫ったのだ! 私の目の前から!」……ハァ」
「私はワルダネ領に出向くことが多かった。そこで隣のクレイヴ領から出向いていたブリジットを目にする機会が多く、私はその美しさに心を惹かれていた。なのに……兄上は薦められるままにブリジットを迎え入れたのだ!」
「それは……」
「大体、娘が二人もいるのだから、そこで私の息子を王太子に据えて大人しくしていればよかったものを……よりによって私が目を付けていたブリジットを攫って三人も産ませやがって!」
「「「……」」」

 ジャミールの言葉に周囲の人も呆れてしまったのか、誰も言葉を継げなくなる。

「ふふふ、これで私の言いたいことは全部だ。兄上よ、私の胸の内を分かってくれましたか」
「分からん」
「は?」

 俺も王に同意見だ。正に「は?」だ。要はジャミールが弟だったから、王になれない。なら息子を王太子に据えようと思っていたところで密かに恋していた姫さんの母親を横取りされ、剰え王子二人を産んだことで、息子が王太子になる目も無くなり自分の立ち位置をどうにかしたいと考えていたところで夢魔インキュバスの誘いに乗ってしまったのだろう。

 うん、どこにも同情の余地はないし、単なるオジサンの僻み話だったな。

 だが、そう思っていたのは俺だけじゃなく、王を始め、王太子達や王妃達も皆、ポカ~ンとしている。

 そしてそんな皆の視線に耐えられなくなったのかジャミールが激昂する。

「何故だ! 何故、誰も私の気持ちを理解してくれないのだ! 私はこんなにも不条理な扱いを受けているというのに!」
「ジャミールよ」
「兄上、分かってもらえましたか!」
「ああ」
「では「逆だ」……へ?」
「ジャミール。お前が言ったことは全て単なる逆恨みでしかない。どれ一つとっても余を追い落とす理由にはほど遠い。そして、そんな口車に乗せられた妃達を哀れに思う」
「ぐぬぬ……」
「「……」」

 王の言葉にジャミールは言葉を詰まらせる。そして、ジャミールに上手く乗せられたとは言え、姫さんを襲撃したのは覆らない事実で、人も死んでいる為、王妃達もこのまま無罪放免とはいかないだろう。だが、やっと俺もここで姫さんの呪縛から逃れることが出来ると思うと思わず顔が綻んでしまう。

 そして、それに気付いたジャミールが俺を睨み付ける。

「元はと言えば、貴様が全て悪い!」
「へ?」
「貴様が出てこなければ、今頃は私があの椅子に座っているハズだったんだ!」
「え~それってどんな言い掛かり?」
「うるさい! お前が全部悪いんだ! 誰か、コイツを捕らえよ!」
「「「……」」」

 ジャミールの言葉に今まで静観していた衛士が王を見れば王は黙って頷く。衛士はそれを見てから静かに動き出すとジャミールの横に立つ。

「来たか。よし、ソイツを捕らえろ!」
「「「……」」」

 ジャミールが衛士に俺を捕まえろと命令するが、衛士はそのままジャミールの腕を掴む。

「む? 聞こえなかったか? 捕まえるのは私じゃない! その小僧だ!」
「「「……」」」

 だが、衛士はジャミールの言葉を無視してジャミールの両脇を二人、そして先導する一人の三人でジャミールを囲むとそのまま謁見の間から連れ出す。

「さて……」

 王が俺の顔を見ながら、そんなことを言う。

「まさか、本当に俺を捕まえるとか?」
『否定します』

 あ、そうなんだ。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...