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第10話 ヒーロー不在なんて
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「魔女っ子や変身ヒーローにロボがない玩具屋なんて……間違ってる!」
「ケイン君?」
「あ、何?」
「大丈夫? 僕、何かしたかな?」
「え、サンガンさんは何もしてないよ。どちらかと言えば、ガンツさんかな? でも、どうして?」
「だって……急に俯いて何かブツブツ呟いていたから、何か怒らせる様なことしちゃったかなと思って……違ったならいいけど」
「あ! 口に出ちゃってた?」
「うん、魔女っ子とか、ヒーローとか言ってたけどなんのこと?」
「あ~うん、聞かれてたんだぁ~じゃあ言うね。ヒーローっていないの?」
「はい?」
ケイン君はテーブルの上に並べていた玩具を片付けながら、何故だか少し怒っている様な口調で呟いていたので僕は何かケイン君を怒らせるようなことをしてしまったのかなと聞いてみたけど、そんなことはなかった。
そしてケイン君に「ヒーローはいないの」と聞かれたけど、僕にはヒーローと言う言葉の意味が分からずに首を傾げてしまった。
するとケイン君は「なら、勇者はいるの」と聞いて来た。
昔々のおとぎ話には魔物を退治し、魔王と戦った勇者がいたと言われているが、伝説として語り継がれているだけで、実際にいる訳ではない。
するとケイン君は「ヒーロー不在なんて間違っている!」と憤って見せるが父さんから「落ちつけ。落ち着いて話して見ろ」と言われると、少しずつ話し出す。
「あのね、おままごと遊びが女の子の遊びなら、ヒーローごっこは男の子の遊びなんだ。でもね、俺はヒーローの存在を知らないし勇者の話も知らないんだ」
「そういうことか。だが、ワシらの子供の時もそういう遊びはなかったぞ。まあ、しょっちゅうままごとに付き合わせられていたからというのもあるがな」
「そうなんだ。じゃあさ「待て!」……まだ、何も言ってないよ」
ケイン君の話を聞いて、そう言えばと思った。
確かに『おままごと』は女の子のごっこ遊びだけど、男の子のごっこ遊びは何かあったかなと考えてみるけど、特に思い出せなかった。
そしてケイン君は男の子のごっこ遊びの為に何か新しいことを思い付いた様だけど、父さんがそれに待ったを掛ける。
「お前、何か新しい商売を考えついたな」
「分かる? 絶対に流行ると思うんだけど、ダメ?」
「その前にだ。どうやってその商売を展開するつもりだ? 言っておくが、現時点の状況で出来ないことはワシは賛成しかねるぞ」
「あ~ん~そうなると……ちょっと、難しいかな」
「まあ、聞くだけは聞いてやろう。で、何をしたいんだ?」
「うん、ズバリ特撮と魔女っ子を放送したい!」
「「は?」」
ケイン君は「放送したい」と言ったけど、放送ってなんだろう。
そしてケイン君は興奮した様子で新しく始めたいことを僕達に熱く語る。
「だからね、玩具に付加価値を付けるんだよ。放送の中で使う道具なんかを玩具にすれば売れるのは間違いなしだよ!」
「ケイン、単なる金儲けなら止めとけ」
「え、なんで?」
「だいたい金ならワシもお前ももう十分過ぎる程蓄えはあるだろ」
「でも……」
「なら、聞くがお前が作りたいのは売れる玩具か? それとも子供達が楽しく遊べる玩具なのかよく考えるんだな」
「あ……」
ケイン君の提案に父さんは単に金儲けをしたいのなら賛成しないと言い、ケイン君にも何をしたいのかをよく考えるようにと父さんにしてはまともなことを言うんだなと感心してしまった。
「そういうことだ。だが、お前の言いたいことも多少は分かる。ワシも子供の頃には冒険者に憧れたものだ。まあ、今はほとんど活動している連中はいないがな」
「そうなんだ。じゃあ、勇者がいないのも同じ様な理由なんだね」
「まあ、そうだな。魔物の数は減り、それを狩る冒険者も年々減っていると聞いている」
「そうなんだね」
「ああ、それになお前はさっき放送すると言うたが、それをどうやるのかは今は聞かないが、子供達がそれを見られる環境は直ぐに整うのか?」
「……そうだね。先ずはそっちが先だね」
「そういうことだ。だから、出来るだけ現時点の環境で出来ることを考えるんだな」
「わかったよ。じゃあ、お手軽な紙芝居にすればいいのかな」
「「紙芝居?」」
「うん。あのね……」
ケイン君は放送は止めて紙芝居ならイケると説明してくれた。
紙芝居がどういう物なのか説明を受けた僕達はその内容に驚くしかなかった。
こんなことを何故、今まで誰も思い付かなかったんだろうかとさえ思った。
でも、答は直ぐに出た。
紙自体がなかったからだ。
今は父さん達が起こした産業の一つとして誰でも普通に紙が使える状況にある。
少し前までは紙は高級品で、しかも僕達が今使っている紙よりも粗悪品だ。
だけど、今はキレイで真っ白な紙がある。
そしてケイン君は「これなら絵本もイケるね」と言い父さんもそれに頷き僕を見る。
「もしかして……」
「頑張るんだな。お前の娘や息子も喜ぶだろうよ」
「父さんの孫だよ?」
「……こういうのは父親が頑張っている姿を見せるもんだ。なあ、ケイン」
「さあ? だって、僕子供だし」
「「くっ……」」
「ケイン君?」
「あ、何?」
「大丈夫? 僕、何かしたかな?」
「え、サンガンさんは何もしてないよ。どちらかと言えば、ガンツさんかな? でも、どうして?」
「だって……急に俯いて何かブツブツ呟いていたから、何か怒らせる様なことしちゃったかなと思って……違ったならいいけど」
「あ! 口に出ちゃってた?」
「うん、魔女っ子とか、ヒーローとか言ってたけどなんのこと?」
「あ~うん、聞かれてたんだぁ~じゃあ言うね。ヒーローっていないの?」
「はい?」
ケイン君はテーブルの上に並べていた玩具を片付けながら、何故だか少し怒っている様な口調で呟いていたので僕は何かケイン君を怒らせるようなことをしてしまったのかなと聞いてみたけど、そんなことはなかった。
そしてケイン君に「ヒーローはいないの」と聞かれたけど、僕にはヒーローと言う言葉の意味が分からずに首を傾げてしまった。
するとケイン君は「なら、勇者はいるの」と聞いて来た。
昔々のおとぎ話には魔物を退治し、魔王と戦った勇者がいたと言われているが、伝説として語り継がれているだけで、実際にいる訳ではない。
するとケイン君は「ヒーロー不在なんて間違っている!」と憤って見せるが父さんから「落ちつけ。落ち着いて話して見ろ」と言われると、少しずつ話し出す。
「あのね、おままごと遊びが女の子の遊びなら、ヒーローごっこは男の子の遊びなんだ。でもね、俺はヒーローの存在を知らないし勇者の話も知らないんだ」
「そういうことか。だが、ワシらの子供の時もそういう遊びはなかったぞ。まあ、しょっちゅうままごとに付き合わせられていたからというのもあるがな」
「そうなんだ。じゃあさ「待て!」……まだ、何も言ってないよ」
ケイン君の話を聞いて、そう言えばと思った。
確かに『おままごと』は女の子のごっこ遊びだけど、男の子のごっこ遊びは何かあったかなと考えてみるけど、特に思い出せなかった。
そしてケイン君は男の子のごっこ遊びの為に何か新しいことを思い付いた様だけど、父さんがそれに待ったを掛ける。
「お前、何か新しい商売を考えついたな」
「分かる? 絶対に流行ると思うんだけど、ダメ?」
「その前にだ。どうやってその商売を展開するつもりだ? 言っておくが、現時点の状況で出来ないことはワシは賛成しかねるぞ」
「あ~ん~そうなると……ちょっと、難しいかな」
「まあ、聞くだけは聞いてやろう。で、何をしたいんだ?」
「うん、ズバリ特撮と魔女っ子を放送したい!」
「「は?」」
ケイン君は「放送したい」と言ったけど、放送ってなんだろう。
そしてケイン君は興奮した様子で新しく始めたいことを僕達に熱く語る。
「だからね、玩具に付加価値を付けるんだよ。放送の中で使う道具なんかを玩具にすれば売れるのは間違いなしだよ!」
「ケイン、単なる金儲けなら止めとけ」
「え、なんで?」
「だいたい金ならワシもお前ももう十分過ぎる程蓄えはあるだろ」
「でも……」
「なら、聞くがお前が作りたいのは売れる玩具か? それとも子供達が楽しく遊べる玩具なのかよく考えるんだな」
「あ……」
ケイン君の提案に父さんは単に金儲けをしたいのなら賛成しないと言い、ケイン君にも何をしたいのかをよく考えるようにと父さんにしてはまともなことを言うんだなと感心してしまった。
「そういうことだ。だが、お前の言いたいことも多少は分かる。ワシも子供の頃には冒険者に憧れたものだ。まあ、今はほとんど活動している連中はいないがな」
「そうなんだ。じゃあ、勇者がいないのも同じ様な理由なんだね」
「まあ、そうだな。魔物の数は減り、それを狩る冒険者も年々減っていると聞いている」
「そうなんだね」
「ああ、それになお前はさっき放送すると言うたが、それをどうやるのかは今は聞かないが、子供達がそれを見られる環境は直ぐに整うのか?」
「……そうだね。先ずはそっちが先だね」
「そういうことだ。だから、出来るだけ現時点の環境で出来ることを考えるんだな」
「わかったよ。じゃあ、お手軽な紙芝居にすればいいのかな」
「「紙芝居?」」
「うん。あのね……」
ケイン君は放送は止めて紙芝居ならイケると説明してくれた。
紙芝居がどういう物なのか説明を受けた僕達はその内容に驚くしかなかった。
こんなことを何故、今まで誰も思い付かなかったんだろうかとさえ思った。
でも、答は直ぐに出た。
紙自体がなかったからだ。
今は父さん達が起こした産業の一つとして誰でも普通に紙が使える状況にある。
少し前までは紙は高級品で、しかも僕達が今使っている紙よりも粗悪品だ。
だけど、今はキレイで真っ白な紙がある。
そしてケイン君は「これなら絵本もイケるね」と言い父さんもそれに頷き僕を見る。
「もしかして……」
「頑張るんだな。お前の娘や息子も喜ぶだろうよ」
「父さんの孫だよ?」
「……こういうのは父親が頑張っている姿を見せるもんだ。なあ、ケイン」
「さあ? だって、僕子供だし」
「「くっ……」」
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