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第1章 ここが異世界

第16話 ここだけの話にしたい

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「どうして、俺が魔力を流すと妙な気持ちになるのかってことでいいんだよね」
「そうね。話して貰えるのなら、聞きたいわ」
「リノ……」
「あら、あなたも知りたいでしょ。それにハンナも興味があるハズよ。ね?」
「リノさん、私は別にそこまでは……」
「ホントに?」
「……少しは興味があるかも」
「そ、ならムリにとは言わないわ。聞きたくないの「聞きます!」ならって訳じゃなさそうね、うふふ。で、ゴサックはどうするの?」
「お、俺も知りたい! そして、村長への気持ちを確かめたい!」
「ゴサック!」
「ワシは知りたくないのぉ……」
「元々はあなたがヒロを襲おうとしたからでしょ」
「……スマン」
「えっと、話してもいいのかな?」
「「「どうぞ、どうぞ!」」」
「……じゃ、話すね」

 俺の話に前のめりだったのは、奥さんだけだと思っていたけど、結局は四人とも話を聞きたいと残り、俺の話に耳を傾ける。

「多分だよ。多分だけど……」としつこいくらいに前置きしてから話す。

 俺が考えたのは、こうだ。俺が村長の狭い魔力回路を無理矢理こじ開けて通したことで、多分だけど村長は痛痒い感覚を体の内側から感じたと思う。でも、その体の内側から来る妙な感覚がなんとも言えないもどかしさとなり、それが気分を高揚させたのではないかと話せば「あ~」と奥さんが得心する。

「ねえ、一つ質問というか、疑問なんだけどね」
「はい?」
「それって……ヒロ君しか出来ないのかな?」
「あ!」

 奥さんは俺の話に納得がいったようだが、それならそれで疑問が湧き上がった様で俺だけしか出来ないのかと聞いてくる。俺は奥さんが聞きたい本当の意味が分かってしまいポンと両手を叩くと「心配ないと思う」と話せば、奥さんの顔がパァッと明るくなる。

 気のせいかゴサックも「ヨシッ!」とガッツポーズだ。

「ホントに?」
「ま、試してもらえば分かるけど、村長達はすでに魔力が上がっているよね」
「そうね。で?」
「ハンナはまだだから、ゴサックがハンナに俺がしたようにすれば」
「あ、そういうことか! ハンナ、ヤルぞ!」
「え? ゴサック、ここで?」
「そ、そうだな……じゃ、村長……ごめん村長とは次の機会で」
「いや、ないからの」
「……」
「……ゴサック?」

 別に俺がしなくても魔力値が高い方から、低い方へと流せば同じことが出来ると説明すれば、奥さんは納得しゴサックはハンナの手を取り「ヤロう!」と言うが、ハンナに「ここじゃイヤ」だと言われ、自分達がどこにいるのかを思い出したのか二人の顔は赤くなる。そして、ゴサックはそう言うことだからと村長とは次の機会にと断れば、村長からはサラッと流され凹んでしまうが唇をギュッと噛み締めハンナの手を取り、自分達の家へと急ぐ。

「ねえ、気のせいじゃなければ、まだ昼前だよね?」
「そうじゃな」
「ふふふ、若いってことよ。で、私達はどうなるのかしら?」
「……」

 ゴサックとハンナなら、ハンナの魔力値が低いので式が成り立ち、俺と同じことが出来るが、村長と奥さんはほぼ一緒なので難しいのよねと、奥さんは思っている。

「そういう場合は……」
「場合は?」
「リノ……」

 奥さんが前のめりになっている横で村長は俺に目配せしてくる。俺も『分かった。皆まで言うな!』と村長の意を汲み取り奥さんに伝える。

「そういう場合は、両手で握って気合いで一気に流し込めばいいと思うよ」
「気合いなの? 分かったわ。じゃあ早速……ね、あなた」
「ヒロォ~そうじゃないのじゃぁ~」

 奥さんは俺に笑ってお礼を言うと、村長の腕を掴んで奧へと消えていく。村長は奥さんに腕を引っ張られながら口パクで「覚えてろ!」と言っていた様な気もするが、俺はそれに対し、左手の中指を立てて見せる。

「俺が一人なのを知っているくせに!」
『ピ?』

 なんだかんだと仲睦まじくよろしくヤレているのなら夫婦関係は問題ないということだろうと、ちょっとだけ……ホンのちょっとだけ羨ましく思ったのは事実だ。それに村長がいくら搾り取られようと俺には関係ない。関係ないけど、なんだろ……この虚しさはと思っていたら、足下にセツがすり寄ってきたので「俺にはお前だけだ!」と抱き寄せ頬ずりする。

 そのままセツとイチャイチャしていたら、聞いちゃいけないアレコレが聞こえてきたので俺は自分の耳とセツの耳? を塞ぎながら、村長の家を後にする。

「で、どうすればいいんだか……」
『ピ?』

 村長の家を出たはいいが、領主からのお迎えとやらが来までは正直、何もすることがない。別に身を清めろとか、そういう話も聞いていないので、村から逃げ出さなければ自由にしていいってことだろうと解釈する。

「じゃ、まずは村の中を見学だな」
『ピ!』

 俺の言葉にセツが嬉しそうに足下を跳ねながら、一緒に村を見学しながら歩いていると、妙に五月蠅い家があり、その回りには何事かと心配そうに村人が集まっていたので俺は野次馬根性から「何かありましたか?」と一人の中年女性に声を掛ければ、その女性は俺のことを怪しそうにつま先から天辺までジロリと見れば「見かけない顔だね」と言う。

 俺は正直に「昨日から村長にお世話になっています」と答えれば「そういや、村長も今日は見ていないわね」と話す。

 そして俺は曖昧に返事をし「で、なんなんですか」と聞けば、この家はゴサックの家なんだが、こんな昼前から少々怪しい声や物音がするから何事かとご近所が噂しているとのことだったので俺は「それなら、多分イタしているだけだから心配ないですよ」と話し、その場を後にしようとするが、オバサマは「そりゃ、どういうことだい?」と俺の腕を掴む。

「えっと、なんて言ったらいいのか……」
「ちゃんと納得出来る様に話しな!」
「……」

 俺がオバサマに腕を捕まれ、脱出の機会を失っていると村では見かけない顔の俺とオバサマが言い争っていると、今度は俺達が注目されることになったので俺は「分かったから」と言ってオバサマに離してもらう。

「いいかい、嘘はなしだよ」
「はい。え~とですね、実は……」

 俺はさっきまで村長の家であったことを正直に話せば、オバサマは「ほぉ~」と感心した顔になったので俺は「じゃ」と、その場を去ろうとすれば「お待ち!」とまた腕を掴まれる。

「えっと、何か?」
「何かじゃないよ!」
「えぇ?」
「どうすればいいのさ?」
「はい?」
「ああもう察しが悪い子だね。だからさ、どうすれば私と旦那がああいう風に出来るのかってことさ」
「はい?」

 早くこの場を去りたかった俺の腕を掴んだオバサマはまだまだ激しいゴサックの家を指さして「教えるまで離さない」雰囲気を醸し出す。

「なんでなん……」
『ピ~』
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