突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ

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第2章 新天地を求めて

第38話 もっと気楽にね

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『バタン!』と勢いよく扉が開かれ一人の衛士が慌てた様子で「ハァハァ……至急お知らせしたいことが……」と息を切らしながら屋敷の主人である伯爵の側に行き「へ、陛下が……」と言うが「ハァハァ」と息が続かないのか、次の言葉が出て来ない。

「落ち着きなさい。陛下がどうしましたか?」
「……へ、陛下が、そ、その……」
「ん?」

 部屋に飛び込んで来た衛士は、まだ呼吸が整っていないため言葉が途切れ途切れだが、端々に陛下と言うのは伯爵だけでなく、その場にいた者達の耳にも聞こえていた。

 そして衛士は自分が飛び込んできた扉の方を指差しながら伯爵に対し必死に何かを伝えようとしている。

「陛下には先触れを出したばかりだ。返事が来るとしてもまだ先のことだろう」
「そ、そうじゃなくて……」
「いつまで待たせるつもりだ」
「「「へ、陛下!!!」」」

 開けられたままの扉の向こうからは、この国の国王である『ジョルジュ・フォン・フィガラ十九世』が飄々とした様子で部屋の中へと入ってくるのを伯爵だけでなく宰相も口を開けたまま黙って見ていた。

「へ、陛下!!! ど、どうしてここへ……」
「どうしてって、そりゃぁ……ね?」
「「へ?」」

 王は伯爵からの質問に対し俺と先輩の方へと視線を移し「君達がまれびとなんだね」と問い掛けてきた。

「は、はい。初めまして空田広志と言います」
「清瀬麗と申します。よろしくお願いします」
「うむ。ま、よろしくな」
「陛下!」
「宰相、うるさいぞ。もう少し声量を抑えなさい」
「は! 申し訳ありません。ですが「よい」……へ?」

 俺と先輩はどんな対応が正しいのか分からないながらも社会人として恥ずかしくない挨拶と共に軽く頭を下げると王は俺達に向かって軽く手を挙げると、そんな王の態度に対し我慢ならなかったのか宰相が声を上げ苦言を呈するが、王はそれを手で制する。

「陛下、しかし「よいと言っている」……いや、ですが「クドいぞ」……はぁ」
「宰相殿。少し落ち着きましょう」
「ジャミア殿、だが……」
「先ずは陛下の目的を確認しましょう。話はそれからでも遅くはないと思われます」
「しかしだな……」
「お気持ちは分かりますが既に陛下は目の前ですし、言ってはなんですがをされている時は……」
「あ! うむ、確かに……」

 宰相は王に対し何か言いたそうにしていたが、肝心の王は気にするなとしか言わない。

 そんな宰相に対し伯爵が助け船を出したのだが、王がをしている時はと気になるセリフが聞こえてきた。

 なので王の顔を確認すれば、「ふふふ~ん」と鼻歌でも聞こえてきそうな程ご機嫌そうな顔をしているし王の全体的な様子からも何か楽しそうな雰囲気を醸し出している。

 宰相と伯爵は二人揃って「「ハァ~」」と嘆息し、先ずは落ち着き王の目的を問い質すことを優先するべくソファに座り直し王に対し突然の訪問の目的を尋ねる。

王は「目的は決まっている」と返し俺達の方をジッと見ることで宰相も何度目かの溜め息を吐きながら「ですが」と宰相が言葉を続けようとしたところで王から手で制される。

「言うな。ちゃんと先触れは届いた。だから、来た。それだけだ」
「ならば、いつもの様にちゃんと手順を」
「だが、それだと色々と手順を踏むばかりで彼らに会えるのは数日先になるだろう。それに他の貴族連中の前では、こうやって気軽に話せないではないか。なあ、君もそう思わないか?」
「へ?」
「ヒロ殿、答えなくても問題ない」
「あ、はい」
「マックス、そりゃないよ」
「いいえ、必要ありません」
「でも、彼らはこの国の国民でもないのだから、私に対しへりくだる必要はないだろ」
「……確かにそうですが」
「だろ? 君もそう思うよね? ね?」
「え? えっと……」

 宰相が王に対し訪問の目的を問えばまれびとである俺達に会うのが目的だとばかりに俺達から視線を外さない。

 王も先触れが届いてから謁見の間で会うことが通常パターンだが、それだと手順が嵩むばかりで俺達に会えるまで数日掛かるのがイヤだと言う。

 それに謁見の間でとなれば、他にも参列する貴族がいるだろうから気楽に話すことも出来ないではないかとも。

 そして俺に対しては「もっと気軽に話そうよ」と半ば強制するように話しかけてくるがホントにいいのだろうか。

 ちなみに王は、いかにも王様だと言うような王冠にマントといった格好ではなく開襟シャツにチノパンの様な格好で軽くカールした金色の頭髪にシュッとしたイケメンなお兄さんだ。

 見た目的にはアラサーなのだろうと思うが、西洋人は大人びて見えるからなぁ~。
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