突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ

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第3章 ただいま、放浪中

第53話 四本(人)目ともなれば

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「なあ、さっきからずっと水の上を進んでいるけどよ……」
「そうだね」
「考えたくはないけどよ……」
「なに?」
「もし……もしだぞ。ここから落ちたら……どうなるんだ?」
「どうなるって……そりゃ、海の上にドボンって落ちてずぶ濡れになって、下手したらそのまま魚にパクリってこともあるかもね」
「へ?」
「あれ、もしかしてガルちゃんって海を見たことないの? 海の存在も知らないとか?」
「ば、バカにするなよ! う、海ってのはあれだろ……あれだ、あれ……そ、そう、デッカい水溜まりで……」
「うんうん、それから?」
「……そこまでしか知らない」

 そう、俺達はルリの世界樹から移動を始めた。

 そして最初は暗いから気付かなかったけど、段々明るくなってくると俺達の下にはキラキラと陽光が反射している水面……いや、この広さから海だな。海面が広がり、その向こうには水平線と目指すべき次の世界樹の先端が見えていた。

 ガルちゃんも明るくなってから、下に広がっているのが水ばかりだと分かったところで、急に不安になったのか俺に落ちたらどうなるのかとか聞いて来る。

 会話の内容から、もしかしたら海の存在を知らないのかと思い話を振れば、しどろもどろになりながらも最後には海の存在しか知らなかったことを認めた。

「だから、大丈夫だって」
「そ、そんなの分からないだろ!」
「ハァ~まあ、いいけどさ」
「では、私も怖いし不安なので……」
「ウソですよね?」
「あら、いいじゃないですか。こうやって空いていたんですし」
「お主ら……」
「ルリは……もう空いてないから、そこで「構わぬ」……え?」
「ちょ、ちょっと……まあ、いいけど大人しくね」
「うむ」
「……いいから、早く地面が見たい!」
「今度は私が……」

 ガルちゃんに怖いからと右腕にしがみ付かれ、リーアさんはそれならと左腕を確保しルリにはもう捕まる腕は空いてないとマウントをとれば、ルリは構わぬと言って俺の膝の上に乗っかって来た。

 そしてオジーは「好きにすればよろしいのでは」と俺の背後で体育座りをしている。

 やがて世界樹の全体が見える距離まで近付くとガルちゃん待望の地面も見えて来た。

「へぇ~今度の世界樹は大陸じゃなくて、ちょっと大きめの島の上なんだね。なら、種族としては……まさかの魚人?」
「ふふふ、想像としては悪くありませんが、私は会ったことはありませんね」
「大体よぉ~海の上だからって魚人ってのは単純過ぎるな……あ、おい! やめろって! シャレにならねぇだろが!」
「ヒロ様、流石に私も魚人? には会ったことはありません」
「へぇ~そうなんだ……」

 島の上の世界樹ということで、もしかしたら今度の守人は魚人なんだろうか、もし魚人なら半魚人ではなく人魚の方をお願いしますと思っているとリーアさんは魚人という種族には会ったことがないと言い、ガルちゃんは海だから魚人なんて単純すぎると俺を揶揄って来たので、ちょっとだけしがみ付いている右腕を振り払うようにすれば、焦ってしがみ付いてくる。

 そしてオジーもリーアさんの言葉を後押しするように魚人は見たことがないと言う。

 そんなわけで今回の守人の種族は誰も見当が付かないと言うことだけが分かった。

 まあ、元々は互いの世界樹には無関心というか、干渉しない……いや、担当する世界樹の範囲から出られないのであれば知らなくても無理はないかと俺なりに納得する。

「さ、着いたよ」
「やはり、あまり変わりはありませんね」
「そうだな。どこの世界樹も似たようなもんなんだな」
「ふん! 妾の世界樹は特別じゃ!」
「へっ! なら、どこが違うのか言ってみろよ」
「ぐぬぬ……」
「ほらほら、揶揄うのはそれくらいにしていつものを始めるよ」
「分かったよ」
「いつものとはなんじゃ?」
「お前も釣られたヤツだよ」
「な、失礼じゃぞ。妾は釣られてなどおらん!」
「まあ、そういうことにしといてやるから、ほら。お前も手伝うんだよ」
「わ、分かってくれたのならいいのじゃ。で、手伝うとは?」
「座卓の上に適当に皿とコップを並べてればいい」
「わ、分かったのじゃ」

 俺は適当な枝に飛び下りると座卓を取り出し、いつもの様に守人を迎える為の儀式と言う名のプチ宴会の準備を始める。

 皆が発泡酒やワインの入ったグラスを手に取り「新しい世界樹に乾杯!」と俺の音頭と共にそれぞれが手に持っている酒を飲み干すと「美味しそうね」と背後から声を掛けられた。

「え? 早くない?」
「そうですね。出来れば、もう少し食べてからにして欲しかったです」
「だな。全然、飲み足りないない」
「どうやら、今度の守人は気が利かないヤツとみたのじゃ」
「皆さん、せっかく来てくれたのにそれはあんまりではないでしょうか」
「そうよ! せっかく守人たるウチが来たのに、その態度はあんまりじゃないの!」
「いや、今さら守人って言われても……ねぇ」
「そうですね。ですが、四人目の守人。私とルリのお隣さんですし」
「お! 俺の裏側だな」
「妾のお隣さんじゃな」
「え?」
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