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マサオに後を任せて、教習所へとやってきたけどガンツさんはどうかな?
もう坂道発進で苦労している教習車は見当たらないけど、ガンツさんはジョシュアさんを指導出来たんだろうか。
「おう、ケイン。どうした」
「ガンツさん、もういいの?」
ガンツさんに電話しようとしたところで、ガンツさんに声を掛けられる。
「ああ、ジョシュアの件ならなんとかなったぞ。まあ、要は慣れだな慣れ。ジョシュアも次は大丈夫そうだと言うてたし大丈夫じゃろ。で、お前はどうした? マサオもいないみたいだが?」
「うん、マサオはちょっとね。ねえ、今から大丈夫?」
「ワシか。ワシならいいぞ」
「本当に! じゃあ行こうか」
ゲートをマサオ達のところへ繋ぐとガンツさんと一緒に潜る。
「おわっ! って、野犬だらけじゃないか! こんなところに連れてきてなにするつもりだ! マサオもなにしてんだ!」
「ガンツさん、落ち着いて。この子達はマサオの仲間で俺達が襲われることはないからさ」
『ああ、ガンツ。ケインの言う通りだ。こいつらは俺の仲間で、今度からは俺の部下になる』
「部下だと? この野犬がか?」
『ちょっと、そこの爺さんよ。俺達の隊長に対して、少しばかり無礼じゃないか?』
「隊長? いや、驚くのはそこじゃないな。ケイン、お前こいつらになにをした?」
「え? なんのこと?」
「マサオがしゃべった時は驚いたが、忘れてるかも知れないが、こいつは元々フェンリルだ。それが別れば喋れるのは別に不思議でもなんでもない。だが、こいつは単なる野犬だ。な? そうだろ?」
『ああ、そうだ。俺の名前はジョンだ。そこのマサオ兄貴の下で山の中で暮らしていた』
「ふ~ん、そうか。で、なんで今は話せるんだ? 見たところ、その首に付けられている魔道具っぽいなにかが関係しているみたいだけどな?」
そう言って、ガンツさんがこちらを見る。
「まあ、それは後でじっくり聞かせてもらおうか。なあ?」
「う、うん。ちゃんと話すから。でね、この子達にはマサオを隊長として、山とか森から近付く魔物や野生動物とかを追い払ってもらうつもりなんだ。今は、七つの小隊に分けて分担してもらおうと思うんだ」
『俺が隊長だ!』
「全く、ケインに乗せられやがって。まあケインのやろうとしていることは分かった。だが、このちっこいのはどうするんだ?」
「ああ、この子達には学校とか保育園とかで働いてもらおうと思ってる」
「このちっこいのに子供の相手をさせるのか?」
「ダメ?」
「ダメとは言わないが……結構、きついぞ。だろ、マサオ?」
『ああ、あれはキツイな』
まだ、へそ天で寝ている小型犬を見ながらガンツさんが、そっと手を伸ばす。
「ガンツさん?」
「は! いや、ワシはなにもしとらんぞ……少し可愛いとか……そんなことは全然……アンジェに見せたらとか……そういうことは全然考えてないからな」
「もう、全部言っちゃってるじゃん。起きたら聞いてみれば? 家に来るか? って」
「いいのか?」
「いいもなにも、保護してもらえるのなら、それが一番だよ。本当は俺も連れて帰りたいけど……」
チラッとマサオを見る。
『ケイン、なんだその目は? まさか、俺とそのちっこいのを交換とか言うんじゃないよな? な、違うよな?』
マサオの邪推をよそにガンツさんにジョンに着けている物と同じ魔道具を見せる。
「これで、こいつらがワシ達の言葉を理解して、言葉を話せるようになるのか」
「そう。『意志を言葉にする』『聞いた言葉を理解する』の二つの魔法陣を組み込んでいるんだ」
「なるほどな。で、ワシにこれを見せるってことはまた、なにか企んでいるんじゃな?」
「企むって人聞き悪いな。ただ、これを使うと耳が聞こえない人や、話せない人とかに使えるんじゃないかと思ってさ。そういった福祉関係に使えないかと思ったんだけど、どうかな?」
「どうかなって、お前……それが出来るなら、どれだけの人が助かるか……だが、ワシには判断できんな。こういう時は面倒だが、上にいる連中に任せた方が早い」
「だよね~そう思って、セバス様にも色々確認したいことがあるし、御用聞きにこっちから行こうかと思ってたんだけど、いいよね?」
ガンツさんが嘆息する。
「ダメと言いたいが、遅かれ早かれ話をするのなら、早めに済ませてしまうか。分かった、連絡してくれ」
「うん、分かった」
携帯電話を取り出し、セバス様に連絡する。何度目かの呼び出し音の後にセバス様が応答する。
『はいセバスです。お久しぶりですね、ケイン様』
「はい、お久しぶりです。セバス様。今日は少しのお願いと確認したいことがあり、連絡しました」
『そうですか。私の方からも連絡しようと思っていたところなので、私としては問題ありません。今から、来られますか?』
「ええ、もし大丈夫なら、そちらへ直接転移ゲートを使って伺ってもいいですか?」
『はい、いいですよ。では、お待ちしております』
「はい、では失礼します」
携帯電話をインベントリにしまうと、ガンツさんに了解が取れたことを話し、転移ゲートを王都のデューク様の屋敷へと繋ぐ。
転移ゲートを潜って出ると、そこは応接室の中で、そこにはセバス様とデューク様が待っていた。
「久しぶりだな。ケイン、ガンツ。ん? 今日はあの犬はいないのか?」
「あ、マサオには今別のことを任せているので不在です」
「任せているか……信じていいんだよな?」
デューク様が俺の目を覗き込むように見てくる。まあ、嘘じゃないし迷惑になることもないだろうから、多分大丈夫。
「もちろんです」
「ふん、それに何度か騙されている気がするが、まあいい。で、今日はなんだ?」
「はい、セバス様から聞いているとは思いますが、ドワーフタウンの学校の入学式での挨拶についてですが、どうですか?」
「ああ、そのことだが、午後にずらせるか?」
「理由を伺っても?」
「なに、簡単な理由だ。エリーの入学式が午前中なんだよ。だから、その後でも構わないのであれば喜んで引き受けよう」
「分かりました。ありがとうございます」
「なに、構わないさ。ドワーフタウンが発展すれば、必然的に周りも発展するからな。今も領都から移住し始めたと聞いているぞ」
「そちらの管轄は関わっていないので分かりませんが、そうなんですね」
「お前は……で、用件はそれだけか?」
デューク様が会話を切り上げようとして来たので、チーズに生クリームにホイップクリーム、バターをテーブルに並べる。
「これは?」
「ケイン様、これはカイドー村関連の品ですか?」
デューク様には伝わらなかったが、セバス様には少しだけ話していたので、ピンと来たようだ。
「そうです。チーズは分かりますよね」
「ああ、それくらいは知っているさ。で、他のは?」
「他のもチーズと同様に牛の乳を原料として作られる物です。順番に生クリーム、これは主に他の品の原料となります。そして生クリームに甘味を追加して攪拌したホイップクリーム。これはお菓子に使いますね。使ったお菓子は後でお渡ししますね。そして、生クリームと牛乳を原料としたバターになります。これはお菓子には原料として、混ぜ込んだり、溶かした状態で塗ったりして使います。調理としては、炒める時の油、煮物の調味料として使ったりします。後で、料理人の方に渡してください」
「分かりました。では、チーズとバターだけでも冷蔵庫に入れておきましょう」
セバス様が近くにいたメイドにチーズとバターを渡すと冷蔵庫に入れるように伝え、後で料理人に試作をして下さいと伝言を頼んでいた。
「セバス、カイドー村ってのは確か……」
「アシロ子爵の管轄でございます」
「ああ、アイツか。で、それがどうした?」
デューク様にヨサックさん達と村長との確執からドラゴニュータウンへの入植を希望していること、ドワーフタウンで乳製品の事業を始める予定であることを話す。
「はぁ、お前はまた、面倒なことを……少しはじっとしていられないのか」
「でも、そのお陰でこう言うお菓子も出来たんですよ」
テーブルの上に残された生クリームとホイップクリームを収納すると、シュークリームを皿に乗せて出す。
「これはなんだ?」
デューク様は怪訝な顔をするが、少しだけ漂う甘い香りにメイドさんの顔が綻ぶ。
「シュークリームと言います。パイ生地に先ほどのホイップクリームを挟んでいます。どうぞ」
「ふむ」
デューク様が一つ手に取り、くるくると回し全体を見る。
「特に変わったところはないな。では」
デューク様がシュークリームに齧り付く。それを見ていたメイドさんが右手を口元に左手をエプロンの端を掴んで「あぁ」と漏らす。
後で差し入れするから、今は我慢して欲しい。
「うん、いいな。今までになかった味だ。セバス、お前達も食べてみろ。いいから、遠慮はいらん。許すから食ってみろ」
「「「「「はい!」」」」」
メイドさんだけでなく側に控えていた騎士まで顔を綻ばせて、大事そうにシュークリームを手に取る。
そして、しめし合わせたように皆で一斉に齧り付く。
「「「「「ん~」」」」」
セバス様まで……
「ケイン、これはお前だけが作れるのか?」
「いえ、これは材料というか、生クリームを持ち込んで、王都のお菓子屋に頼んで作ってもらいました」
「そうか、その店の名は分かるか?」
「え~と、店の名前は聞いてないですけど、店主の名前はゴーシュさんです。材料がまだあるのなら作っているはずですよ」
「ゴーシュだな。セバス!」
「はい、その名前は最近、話題になっているので店の場所も分かります。まさか、ここでも『まさかのケイン』が関わっているとは思いませんでしたが」
「ククク、確かにな。で、これで終わりでいいのかな?」
デューク様が今度こそ終わりだよなと確認してくるが、一番はっきりさせたいことはまだ聞いてない。
「いえ、あと二つほど」
「そうか、まあ一つは港のことだろう。それは後に回すとして、もう一つはなんだ?」
デューク様に港は後回しと言われるが、後に回してゆっくり話してくれることに期待して、首輪の魔道具を出す。
「なんだ? 俺にはマニアックな趣味はないぞ」
「そうじゃないんじゃよ、領主殿。これには『意志を言葉にする』『聞いた言葉を理解する』の二つの魔法陣を組み込んだ魔道具じゃ」
「ふむ……それが「旦那様、これはそんな軽いもんじゃありません!」……セバス?」
「取り乱してしまいました。すみません。ですが、この魔道具は傷害を負った人には十分有用な魔道具です。話せなかった人は話せるようになり、耳が聞こえなかった人は聞こえるようにもなります。それに……」
「それに?」
「尋問にも使えます」
あ~そうだよ、自分の意思に関係なく思っていることが全部、口から出るってことだからスパイに対する尋問に使えるってことじゃないか、なんでそこに気付かないかな~今、収納してもダメかな?
セバス様をチラ見すると、ちょっと鼻息が荒くなっているような気がしないでもない。
ヤバい人に渡しちゃったかな。
「ケイン、やっちまったな」
「そうだね、ガンツさん。一緒に背負ってね」
「なんで、ワシまで……」
「そうか、セバスがそこまでいうなら、十分に使えるってことだな」
「ええ、使えますとも。ケイン様、残りを全部置いていってもらってもいいですか? もちろん、お礼は十分にさせていただきますので」
セバス様にそう言われては、申し出を断ることも出来ず、インベントリから残り全部をテーブルの上に出す。
「では、数を確認した後で、お礼の方は商業ギルドの方に振り込ませてもらいます」
「はい、お願いします」
セバス様がテーブルの上の魔道具をメイドが持ってきたトレイに載せると保管を頼むとメイドが退室する。
「で、港の件だな」
「はい。どうなりましたか?」
「それがな、王の方がな納得してくれなくてな」
「そうなんですか。じゃあ、撤退しますか?」
「いや、それじゃこっちが面白くない」
「なら、あの首輪をブレスレットかなにかに加工して、その担当者に付ければ本音で話してもらえますよね?」
少しだけ悪い顔をしてデューク様に提案してみる。
「なるほどな、それは面白いな。だが、どうやって着けさせる? 仮にも相手は王族だぞ。無理矢理抑え着ける訳にもいかんだろ?」
「そこは若返るとか、健康になるとか、病気をしないとか色々あるでしょ」
「旦那様、その辺りは私の方で、なんとかしましょう。旦那様は知らなかったと言うことにしておいた方が、後々問題もないかと思いますので」
「そ、そうか。セバスがそこまで言うのなら、任せる」
「はい、賜りました」
もう坂道発進で苦労している教習車は見当たらないけど、ガンツさんはジョシュアさんを指導出来たんだろうか。
「おう、ケイン。どうした」
「ガンツさん、もういいの?」
ガンツさんに電話しようとしたところで、ガンツさんに声を掛けられる。
「ああ、ジョシュアの件ならなんとかなったぞ。まあ、要は慣れだな慣れ。ジョシュアも次は大丈夫そうだと言うてたし大丈夫じゃろ。で、お前はどうした? マサオもいないみたいだが?」
「うん、マサオはちょっとね。ねえ、今から大丈夫?」
「ワシか。ワシならいいぞ」
「本当に! じゃあ行こうか」
ゲートをマサオ達のところへ繋ぐとガンツさんと一緒に潜る。
「おわっ! って、野犬だらけじゃないか! こんなところに連れてきてなにするつもりだ! マサオもなにしてんだ!」
「ガンツさん、落ち着いて。この子達はマサオの仲間で俺達が襲われることはないからさ」
『ああ、ガンツ。ケインの言う通りだ。こいつらは俺の仲間で、今度からは俺の部下になる』
「部下だと? この野犬がか?」
『ちょっと、そこの爺さんよ。俺達の隊長に対して、少しばかり無礼じゃないか?』
「隊長? いや、驚くのはそこじゃないな。ケイン、お前こいつらになにをした?」
「え? なんのこと?」
「マサオがしゃべった時は驚いたが、忘れてるかも知れないが、こいつは元々フェンリルだ。それが別れば喋れるのは別に不思議でもなんでもない。だが、こいつは単なる野犬だ。な? そうだろ?」
『ああ、そうだ。俺の名前はジョンだ。そこのマサオ兄貴の下で山の中で暮らしていた』
「ふ~ん、そうか。で、なんで今は話せるんだ? 見たところ、その首に付けられている魔道具っぽいなにかが関係しているみたいだけどな?」
そう言って、ガンツさんがこちらを見る。
「まあ、それは後でじっくり聞かせてもらおうか。なあ?」
「う、うん。ちゃんと話すから。でね、この子達にはマサオを隊長として、山とか森から近付く魔物や野生動物とかを追い払ってもらうつもりなんだ。今は、七つの小隊に分けて分担してもらおうと思うんだ」
『俺が隊長だ!』
「全く、ケインに乗せられやがって。まあケインのやろうとしていることは分かった。だが、このちっこいのはどうするんだ?」
「ああ、この子達には学校とか保育園とかで働いてもらおうと思ってる」
「このちっこいのに子供の相手をさせるのか?」
「ダメ?」
「ダメとは言わないが……結構、きついぞ。だろ、マサオ?」
『ああ、あれはキツイな』
まだ、へそ天で寝ている小型犬を見ながらガンツさんが、そっと手を伸ばす。
「ガンツさん?」
「は! いや、ワシはなにもしとらんぞ……少し可愛いとか……そんなことは全然……アンジェに見せたらとか……そういうことは全然考えてないからな」
「もう、全部言っちゃってるじゃん。起きたら聞いてみれば? 家に来るか? って」
「いいのか?」
「いいもなにも、保護してもらえるのなら、それが一番だよ。本当は俺も連れて帰りたいけど……」
チラッとマサオを見る。
『ケイン、なんだその目は? まさか、俺とそのちっこいのを交換とか言うんじゃないよな? な、違うよな?』
マサオの邪推をよそにガンツさんにジョンに着けている物と同じ魔道具を見せる。
「これで、こいつらがワシ達の言葉を理解して、言葉を話せるようになるのか」
「そう。『意志を言葉にする』『聞いた言葉を理解する』の二つの魔法陣を組み込んでいるんだ」
「なるほどな。で、ワシにこれを見せるってことはまた、なにか企んでいるんじゃな?」
「企むって人聞き悪いな。ただ、これを使うと耳が聞こえない人や、話せない人とかに使えるんじゃないかと思ってさ。そういった福祉関係に使えないかと思ったんだけど、どうかな?」
「どうかなって、お前……それが出来るなら、どれだけの人が助かるか……だが、ワシには判断できんな。こういう時は面倒だが、上にいる連中に任せた方が早い」
「だよね~そう思って、セバス様にも色々確認したいことがあるし、御用聞きにこっちから行こうかと思ってたんだけど、いいよね?」
ガンツさんが嘆息する。
「ダメと言いたいが、遅かれ早かれ話をするのなら、早めに済ませてしまうか。分かった、連絡してくれ」
「うん、分かった」
携帯電話を取り出し、セバス様に連絡する。何度目かの呼び出し音の後にセバス様が応答する。
『はいセバスです。お久しぶりですね、ケイン様』
「はい、お久しぶりです。セバス様。今日は少しのお願いと確認したいことがあり、連絡しました」
『そうですか。私の方からも連絡しようと思っていたところなので、私としては問題ありません。今から、来られますか?』
「ええ、もし大丈夫なら、そちらへ直接転移ゲートを使って伺ってもいいですか?」
『はい、いいですよ。では、お待ちしております』
「はい、では失礼します」
携帯電話をインベントリにしまうと、ガンツさんに了解が取れたことを話し、転移ゲートを王都のデューク様の屋敷へと繋ぐ。
転移ゲートを潜って出ると、そこは応接室の中で、そこにはセバス様とデューク様が待っていた。
「久しぶりだな。ケイン、ガンツ。ん? 今日はあの犬はいないのか?」
「あ、マサオには今別のことを任せているので不在です」
「任せているか……信じていいんだよな?」
デューク様が俺の目を覗き込むように見てくる。まあ、嘘じゃないし迷惑になることもないだろうから、多分大丈夫。
「もちろんです」
「ふん、それに何度か騙されている気がするが、まあいい。で、今日はなんだ?」
「はい、セバス様から聞いているとは思いますが、ドワーフタウンの学校の入学式での挨拶についてですが、どうですか?」
「ああ、そのことだが、午後にずらせるか?」
「理由を伺っても?」
「なに、簡単な理由だ。エリーの入学式が午前中なんだよ。だから、その後でも構わないのであれば喜んで引き受けよう」
「分かりました。ありがとうございます」
「なに、構わないさ。ドワーフタウンが発展すれば、必然的に周りも発展するからな。今も領都から移住し始めたと聞いているぞ」
「そちらの管轄は関わっていないので分かりませんが、そうなんですね」
「お前は……で、用件はそれだけか?」
デューク様が会話を切り上げようとして来たので、チーズに生クリームにホイップクリーム、バターをテーブルに並べる。
「これは?」
「ケイン様、これはカイドー村関連の品ですか?」
デューク様には伝わらなかったが、セバス様には少しだけ話していたので、ピンと来たようだ。
「そうです。チーズは分かりますよね」
「ああ、それくらいは知っているさ。で、他のは?」
「他のもチーズと同様に牛の乳を原料として作られる物です。順番に生クリーム、これは主に他の品の原料となります。そして生クリームに甘味を追加して攪拌したホイップクリーム。これはお菓子に使いますね。使ったお菓子は後でお渡ししますね。そして、生クリームと牛乳を原料としたバターになります。これはお菓子には原料として、混ぜ込んだり、溶かした状態で塗ったりして使います。調理としては、炒める時の油、煮物の調味料として使ったりします。後で、料理人の方に渡してください」
「分かりました。では、チーズとバターだけでも冷蔵庫に入れておきましょう」
セバス様が近くにいたメイドにチーズとバターを渡すと冷蔵庫に入れるように伝え、後で料理人に試作をして下さいと伝言を頼んでいた。
「セバス、カイドー村ってのは確か……」
「アシロ子爵の管轄でございます」
「ああ、アイツか。で、それがどうした?」
デューク様にヨサックさん達と村長との確執からドラゴニュータウンへの入植を希望していること、ドワーフタウンで乳製品の事業を始める予定であることを話す。
「はぁ、お前はまた、面倒なことを……少しはじっとしていられないのか」
「でも、そのお陰でこう言うお菓子も出来たんですよ」
テーブルの上に残された生クリームとホイップクリームを収納すると、シュークリームを皿に乗せて出す。
「これはなんだ?」
デューク様は怪訝な顔をするが、少しだけ漂う甘い香りにメイドさんの顔が綻ぶ。
「シュークリームと言います。パイ生地に先ほどのホイップクリームを挟んでいます。どうぞ」
「ふむ」
デューク様が一つ手に取り、くるくると回し全体を見る。
「特に変わったところはないな。では」
デューク様がシュークリームに齧り付く。それを見ていたメイドさんが右手を口元に左手をエプロンの端を掴んで「あぁ」と漏らす。
後で差し入れするから、今は我慢して欲しい。
「うん、いいな。今までになかった味だ。セバス、お前達も食べてみろ。いいから、遠慮はいらん。許すから食ってみろ」
「「「「「はい!」」」」」
メイドさんだけでなく側に控えていた騎士まで顔を綻ばせて、大事そうにシュークリームを手に取る。
そして、しめし合わせたように皆で一斉に齧り付く。
「「「「「ん~」」」」」
セバス様まで……
「ケイン、これはお前だけが作れるのか?」
「いえ、これは材料というか、生クリームを持ち込んで、王都のお菓子屋に頼んで作ってもらいました」
「そうか、その店の名は分かるか?」
「え~と、店の名前は聞いてないですけど、店主の名前はゴーシュさんです。材料がまだあるのなら作っているはずですよ」
「ゴーシュだな。セバス!」
「はい、その名前は最近、話題になっているので店の場所も分かります。まさか、ここでも『まさかのケイン』が関わっているとは思いませんでしたが」
「ククク、確かにな。で、これで終わりでいいのかな?」
デューク様が今度こそ終わりだよなと確認してくるが、一番はっきりさせたいことはまだ聞いてない。
「いえ、あと二つほど」
「そうか、まあ一つは港のことだろう。それは後に回すとして、もう一つはなんだ?」
デューク様に港は後回しと言われるが、後に回してゆっくり話してくれることに期待して、首輪の魔道具を出す。
「なんだ? 俺にはマニアックな趣味はないぞ」
「そうじゃないんじゃよ、領主殿。これには『意志を言葉にする』『聞いた言葉を理解する』の二つの魔法陣を組み込んだ魔道具じゃ」
「ふむ……それが「旦那様、これはそんな軽いもんじゃありません!」……セバス?」
「取り乱してしまいました。すみません。ですが、この魔道具は傷害を負った人には十分有用な魔道具です。話せなかった人は話せるようになり、耳が聞こえなかった人は聞こえるようにもなります。それに……」
「それに?」
「尋問にも使えます」
あ~そうだよ、自分の意思に関係なく思っていることが全部、口から出るってことだからスパイに対する尋問に使えるってことじゃないか、なんでそこに気付かないかな~今、収納してもダメかな?
セバス様をチラ見すると、ちょっと鼻息が荒くなっているような気がしないでもない。
ヤバい人に渡しちゃったかな。
「ケイン、やっちまったな」
「そうだね、ガンツさん。一緒に背負ってね」
「なんで、ワシまで……」
「そうか、セバスがそこまでいうなら、十分に使えるってことだな」
「ええ、使えますとも。ケイン様、残りを全部置いていってもらってもいいですか? もちろん、お礼は十分にさせていただきますので」
セバス様にそう言われては、申し出を断ることも出来ず、インベントリから残り全部をテーブルの上に出す。
「では、数を確認した後で、お礼の方は商業ギルドの方に振り込ませてもらいます」
「はい、お願いします」
セバス様がテーブルの上の魔道具をメイドが持ってきたトレイに載せると保管を頼むとメイドが退室する。
「で、港の件だな」
「はい。どうなりましたか?」
「それがな、王の方がな納得してくれなくてな」
「そうなんですか。じゃあ、撤退しますか?」
「いや、それじゃこっちが面白くない」
「なら、あの首輪をブレスレットかなにかに加工して、その担当者に付ければ本音で話してもらえますよね?」
少しだけ悪い顔をしてデューク様に提案してみる。
「なるほどな、それは面白いな。だが、どうやって着けさせる? 仮にも相手は王族だぞ。無理矢理抑え着ける訳にもいかんだろ?」
「そこは若返るとか、健康になるとか、病気をしないとか色々あるでしょ」
「旦那様、その辺りは私の方で、なんとかしましょう。旦那様は知らなかったと言うことにしておいた方が、後々問題もないかと思いますので」
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