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◆また、約束しました
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「牛に豚に鶏か。そこまで手を広げるとはな。だが、いくら土地があるとはいえ、野犬とか出るだろ? それはどうするんだ?」
「あ、それなら大丈夫。マサオの伝手で集まったから」
「マサオの?」
「そう。あの辺りにいた野犬をね警備として雇うことにしたんだ」
「雇う? 警備?」
『そ、俺が隊長!』
「マサオが隊長? 大丈夫なのか?」
『大丈夫! だって、俺フェ「大丈夫だって、父さん」ン……』
マサオが警備隊の隊長ということに不安を感じる父さんだが、そうかとだけ言って話を切り上げる。
「しかし、なぜそこまで熱心になるんだ?」
「なんでって、卵に牛乳があれば料理やお菓子の種類が増やせるんだよ。だったら頑張るでしょ!」
「ケイン! それは本当なの?」
「「母さん……」」
「いいから! 答えなさい! 本当なの?」
「うん。少なくともバターが使えれば、料理の種類は増えると思うし、お菓子にも今までと違った風味が出ると思う」
「そう。はい、出しなさい!」
「え?」
「『え?』じゃないでしょ。持ってるんでしょ? ほら、出しなさい!」
母さんの迫力に負け、インベントリから残り少ないバターを取りだして母さんに渡す。
「それ、溶けやすいし傷みやすいから冷蔵庫に入れるのを忘れないでね」
「分かったわ。で、どういう風に使えるの?」
「そりゃ、炒めたり、粉物に混ぜ込んで焼いたりとかいろいろあるよ」
「ふ~ん、そうなの」
「あと、太りやすいから、分量には気を付けてね」
「……ケイン、それはどういう意味かな?」
「どうって……」
「母さん、そこまでにしておきなさい」
「は~い」
父さん母さんから解放され、洗い物をしていたリーサさんの横に立つ。
「手伝うよ」
「ありがとう。でも、もうすぐ終わりだから」
今なら周りに誰もいないし、さっきのことを聞いてみるか。
「ねえ、リーサさんはさっきの間取りの説明の時に顔を赤くしてたけど、どうして?」
「さっき? あ! あ、あれは忘れてくれ」
「え~気になる~」
「気になるか?」
「そりゃあね。だって、リーサさんのことだしさ」
「そうか、気になるか。ふふふ」
「ねえ、教えてくれない?」
「分かった。なら、言うが秘密だぞ」
「うん。もちろん!」
「ふぅ……さっきの間取りを見てて……つい、ケインとの生活、暮らしを想像してしまってな。おかしいだろ? 出来れば笑わないで欲しいが……」
「なんで? 笑わないよ。でも、俺とは違うね」
俺の言葉にリーサさんの様子が変わる。
「違う? もしかして、ケインの思う将来には私はいないのか? そうなのか?」
泣きそうな顔になりながらリーサさんが俺を問い詰めてくる。
「落ち着いて、リーサさん。ちゃんと俺の話を聞いてよ」
「聞いている! 聞いているから、ケインが言った『違う』の意味を聞いているんじゃないか!」
「もう、だからそこから違うんだって」
「だから、どう違うんだ!」
「だから、違うのは、俺とリーサさんが住むのはこの家じゃないってことだから」
「ケインと私が住む……」
そこまで言ってリーサさんの顔がまた、赤くなる。
「落ち着いた?」
「ああ、すまない。盛大に勘違いしてしまったみたいだな」
「本当だよ。もう……」
「だから、押すなって……」
「僕じゃないよ。もう、父さん!」
「俺でもないから、母さん?」
「そんなこと言っても、ヘレンさん」
「なんじゃ、もう終わりか?」
「リーサさん、家まで送るね」
「あ、ああ。メアリー、デイヴおいで。帰るよ」
「「う、うん」」
「父さん達は後で話があるから」
「あ、ああ」
「なら、ワシは帰るかの」
「ヘレンさん。もう外は暗いから危ないよ。後で俺が送るから」
「いや、でも……」
「送るから。ね?」
「あ、ああ……ったく誰かが覗こうって言うから、ワシまでこんな目に……」
そう呟くヘレンさんを家族皆の視線が射貫く。
「そうですか。ヘレンさんが言い出しっぺなんですね」
「ひっ……」
~同じ頃、お城の一室で~
「デュークよ。話と言うのはなんだい?」
「王太子よ。分かっているでしょ。港のことです。いつになったら了承してもらえるのですか?」
「港か……港ね……」
「もしかして、他からの横槍ですか?」
「さて、なんのことかな」
「そうですか。セバス、お渡しして」
「はい。旦那様」
セバスが王太子に近付くと派手に装飾された箱を開くと中には、色んな宝石を鏤めた腕輪が収められていた。
「ほう……これはどういう意味かな? デュークよ」
「いえ、なにという物じゃありませんが、これで王太子様の気変わりを抑えられるのならと用意させて頂きました」
「そうか」
王太子が腕輪を取りだし、しばらくは鏤められた宝石を眺める。
「いやいや、これは気を使わせてしまったかな」
そう言いながら、王太子が腕輪を左手に装着する。
それを見たデュークはニヤリと笑みを浮かべる。
「王太子様。着け心地はどうですか?」
「うん。いいなこれは」
『ったく。宝石がケチ臭いんだよ。もっと良い宝石があるだろうが。だから、田舎貴族なんだよ』
「これは、気が付きませんで。スミマセンね。なにせ田舎貴族なものですから」
「ち、違う! 私はそんなこと一言も……」
『なんでだ! 思っていることが全部出てくる!』
「おっと、気が付きました? じゃ、港のことを話してもらえますか?」
「港のことなど知らん!」
『あれだけの規模だ。いくら使えない港だと言っても、あの小僧が関わるのなら途轍もない金を産み出すに違いない。このまま、端金でデュークの田舎貴族にやるのお面白くない。なんとかこじつけて王家で管理すべきだ』
「ほう、そんなことをお考えで?」
「知らん! 私は知らん!」
『なんで? だから、なんで全部漏れるんだ! そうだ! この腕輪を外せば!』
王太子がやっと、そのことに気付き腕輪を外そうとする。
「『外れない……』」
側にいた執事に王太子が苛立って声を掛ける。
「おい、なぜ私を助けない!」
「申し訳ありません」
執事がそっと袖をまくると、同じ様な装飾無しの腕輪が装着されていた。
「セバス、ちゃんと撮っているな?」
「はい、旦那様。すべて録画中です」
「『録画?』」
「ええ、この部屋に入ってからの一部始終を録画しています。では、お聞きしましょうか? 王様を唆したのはあなたですか?」
「知らん! そんなこと俺は知らない!」
『そうだよ。最初は父上も、ここまで貴族を増長させたのは自分の責任だと言っていたが、それをデュークの責任として押し付ければいいと提案したのは私だ』
「おや、これはこれは……王太子はやはり私がお気に召さないようですね」
「……」
『そうだよ! さっさとあの小僧を差し出せばいいものを!』
「すっかり、嫌われてしまったな。セバス、第二王子は?」
「はい。隣に待機して頂いております」
「ま、待て!」
『なんで第二王子なんだ! 俺が第一王子なんだぞ!』
その時、『ガチャリ』とドアが開かれ、誰かが部屋へ入ってくる。
「兄上、そこまでです」
「オズワルド! ここはお前が来るところではない! さっさと出て行け!」
『来るな! このままじゃ俺が廃嫡されてしまう。弟の名前でしてきたことが全てばれてしまう!』
「え? 兄上、どういうことです?」
「知らない。俺じゃない! 違うんだ! 聞いてくれ!」
『なにも気付かない、お前達が悪いんだ。全部俺の物だ!』
なにも考えていないつもりでも口からは考えていることが全て、出てしまう王太子を蔑んだ目で見ていたデュークの元に第二王子であるオズワルトが近付いてくる。
「デューク殿。初めてお目に掛かります」
「オズワルド様ですね。初めまして、デュークフリード・シャルディーアと申します」
「あなたには、父だけでなく兄まで迷惑をお掛けしました。お詫びという訳ではありませんが、これを」
オズワルドが合図をすると側に控えていた執事がデュークに書面を渡す。
「あなたが兄と約束していた港の権利に関する全てをデューク殿に移管するという書面になります。サインは私の物ですが、すでに父は蟄居しており、王太子である兄もこの状態では政務に復帰するのは難しいでしょう。なので、私のサインでも問題ないと思いますのでご心配なく」
「はっ! ありがとうございます」
「あと、ついでにこの腕輪ですが……」
「はい、すぐに外します。セバス!」
「はい」
「あ、違います。しばらくはこのままお借りしていいかと確認したかったのですが……」
「はい。それなら問題ありません。なんなら、予備をお渡ししましょうか?」
「それは興味深いですね」
「分かりました。セバス」
「はい。では、手持ちで申し訳ありませんが……」
セバスは執事が抱えるトレイの上に手持ちの腕輪を五本並べる。
「ありがとう。これで強情な人も快くお話してくれると思うと気持ちが軽くなるよ。でも、これだと私の方が貰いすぎですね。なにかお望みのことはないですか?」
「いえ。これは私からの献上品ということで……」
「いえ。それでは父や兄の様に腐敗の温床となります。なにかお困りのことでも良いですよ」
デュークは少し思案すると、オズワルドに向き直り話し出す。
「では、お言葉に甘えまして、一つと言いますかお願いがあります」
「それは、あの少年絡みのことでしょうか?」
「はい。実は……」
デュークがオズワルドに対し、シャルディーア領で売り出す塩、砂糖、酒、紙、工業製品など主産業に対し各ギルドからの圧力が掛かった場合に助けて欲しいと頭を下げる。
「デューク殿。話は分かりました。では、こうしましょう。今後、シャルディーア領、または、あの少年が産み出す産業や物などについては、『王室御用達』を使用することを許可します。ただ、闇雲に使われると品が疑われるので、デューク殿が認めた物だけにして欲しいですね。あと、『王都御用達』を与えた品は、私に献上して欲しい。どうです?」
「オズワルド様は、そこまで、あの小僧を……」
「はい。楽しみにしています」
「分かりました。宜しく御願いします」
「こちらこそ。末永くお願いしますね」
王城から出ると馬車の中でデュークがセバスに言う。
「港の権利は得られたが、あれは口止め込みだよな?」
「旦那様。例えそうだとしても、ここは胸に納めて置いた方がいいと思います」
「そうだな。あとで、オズワルド様と執事に携帯電話を渡しておいてくれ」
「はい」
「それと、明日。ケインを屋敷に呼んでくれ。そうだな、三時頃だな」
「はい。賜りました」
「ケイン、俺は約束を守ったが、お前はどうかな……」
デュークを乗せた馬車が暗い王都の石畳の道を走って行く。
「あ、それなら大丈夫。マサオの伝手で集まったから」
「マサオの?」
「そう。あの辺りにいた野犬をね警備として雇うことにしたんだ」
「雇う? 警備?」
『そ、俺が隊長!』
「マサオが隊長? 大丈夫なのか?」
『大丈夫! だって、俺フェ「大丈夫だって、父さん」ン……』
マサオが警備隊の隊長ということに不安を感じる父さんだが、そうかとだけ言って話を切り上げる。
「しかし、なぜそこまで熱心になるんだ?」
「なんでって、卵に牛乳があれば料理やお菓子の種類が増やせるんだよ。だったら頑張るでしょ!」
「ケイン! それは本当なの?」
「「母さん……」」
「いいから! 答えなさい! 本当なの?」
「うん。少なくともバターが使えれば、料理の種類は増えると思うし、お菓子にも今までと違った風味が出ると思う」
「そう。はい、出しなさい!」
「え?」
「『え?』じゃないでしょ。持ってるんでしょ? ほら、出しなさい!」
母さんの迫力に負け、インベントリから残り少ないバターを取りだして母さんに渡す。
「それ、溶けやすいし傷みやすいから冷蔵庫に入れるのを忘れないでね」
「分かったわ。で、どういう風に使えるの?」
「そりゃ、炒めたり、粉物に混ぜ込んで焼いたりとかいろいろあるよ」
「ふ~ん、そうなの」
「あと、太りやすいから、分量には気を付けてね」
「……ケイン、それはどういう意味かな?」
「どうって……」
「母さん、そこまでにしておきなさい」
「は~い」
父さん母さんから解放され、洗い物をしていたリーサさんの横に立つ。
「手伝うよ」
「ありがとう。でも、もうすぐ終わりだから」
今なら周りに誰もいないし、さっきのことを聞いてみるか。
「ねえ、リーサさんはさっきの間取りの説明の時に顔を赤くしてたけど、どうして?」
「さっき? あ! あ、あれは忘れてくれ」
「え~気になる~」
「気になるか?」
「そりゃあね。だって、リーサさんのことだしさ」
「そうか、気になるか。ふふふ」
「ねえ、教えてくれない?」
「分かった。なら、言うが秘密だぞ」
「うん。もちろん!」
「ふぅ……さっきの間取りを見てて……つい、ケインとの生活、暮らしを想像してしまってな。おかしいだろ? 出来れば笑わないで欲しいが……」
「なんで? 笑わないよ。でも、俺とは違うね」
俺の言葉にリーサさんの様子が変わる。
「違う? もしかして、ケインの思う将来には私はいないのか? そうなのか?」
泣きそうな顔になりながらリーサさんが俺を問い詰めてくる。
「落ち着いて、リーサさん。ちゃんと俺の話を聞いてよ」
「聞いている! 聞いているから、ケインが言った『違う』の意味を聞いているんじゃないか!」
「もう、だからそこから違うんだって」
「だから、どう違うんだ!」
「だから、違うのは、俺とリーサさんが住むのはこの家じゃないってことだから」
「ケインと私が住む……」
そこまで言ってリーサさんの顔がまた、赤くなる。
「落ち着いた?」
「ああ、すまない。盛大に勘違いしてしまったみたいだな」
「本当だよ。もう……」
「だから、押すなって……」
「僕じゃないよ。もう、父さん!」
「俺でもないから、母さん?」
「そんなこと言っても、ヘレンさん」
「なんじゃ、もう終わりか?」
「リーサさん、家まで送るね」
「あ、ああ。メアリー、デイヴおいで。帰るよ」
「「う、うん」」
「父さん達は後で話があるから」
「あ、ああ」
「なら、ワシは帰るかの」
「ヘレンさん。もう外は暗いから危ないよ。後で俺が送るから」
「いや、でも……」
「送るから。ね?」
「あ、ああ……ったく誰かが覗こうって言うから、ワシまでこんな目に……」
そう呟くヘレンさんを家族皆の視線が射貫く。
「そうですか。ヘレンさんが言い出しっぺなんですね」
「ひっ……」
~同じ頃、お城の一室で~
「デュークよ。話と言うのはなんだい?」
「王太子よ。分かっているでしょ。港のことです。いつになったら了承してもらえるのですか?」
「港か……港ね……」
「もしかして、他からの横槍ですか?」
「さて、なんのことかな」
「そうですか。セバス、お渡しして」
「はい。旦那様」
セバスが王太子に近付くと派手に装飾された箱を開くと中には、色んな宝石を鏤めた腕輪が収められていた。
「ほう……これはどういう意味かな? デュークよ」
「いえ、なにという物じゃありませんが、これで王太子様の気変わりを抑えられるのならと用意させて頂きました」
「そうか」
王太子が腕輪を取りだし、しばらくは鏤められた宝石を眺める。
「いやいや、これは気を使わせてしまったかな」
そう言いながら、王太子が腕輪を左手に装着する。
それを見たデュークはニヤリと笑みを浮かべる。
「王太子様。着け心地はどうですか?」
「うん。いいなこれは」
『ったく。宝石がケチ臭いんだよ。もっと良い宝石があるだろうが。だから、田舎貴族なんだよ』
「これは、気が付きませんで。スミマセンね。なにせ田舎貴族なものですから」
「ち、違う! 私はそんなこと一言も……」
『なんでだ! 思っていることが全部出てくる!』
「おっと、気が付きました? じゃ、港のことを話してもらえますか?」
「港のことなど知らん!」
『あれだけの規模だ。いくら使えない港だと言っても、あの小僧が関わるのなら途轍もない金を産み出すに違いない。このまま、端金でデュークの田舎貴族にやるのお面白くない。なんとかこじつけて王家で管理すべきだ』
「ほう、そんなことをお考えで?」
「知らん! 私は知らん!」
『なんで? だから、なんで全部漏れるんだ! そうだ! この腕輪を外せば!』
王太子がやっと、そのことに気付き腕輪を外そうとする。
「『外れない……』」
側にいた執事に王太子が苛立って声を掛ける。
「おい、なぜ私を助けない!」
「申し訳ありません」
執事がそっと袖をまくると、同じ様な装飾無しの腕輪が装着されていた。
「セバス、ちゃんと撮っているな?」
「はい、旦那様。すべて録画中です」
「『録画?』」
「ええ、この部屋に入ってからの一部始終を録画しています。では、お聞きしましょうか? 王様を唆したのはあなたですか?」
「知らん! そんなこと俺は知らない!」
『そうだよ。最初は父上も、ここまで貴族を増長させたのは自分の責任だと言っていたが、それをデュークの責任として押し付ければいいと提案したのは私だ』
「おや、これはこれは……王太子はやはり私がお気に召さないようですね」
「……」
『そうだよ! さっさとあの小僧を差し出せばいいものを!』
「すっかり、嫌われてしまったな。セバス、第二王子は?」
「はい。隣に待機して頂いております」
「ま、待て!」
『なんで第二王子なんだ! 俺が第一王子なんだぞ!』
その時、『ガチャリ』とドアが開かれ、誰かが部屋へ入ってくる。
「兄上、そこまでです」
「オズワルド! ここはお前が来るところではない! さっさと出て行け!」
『来るな! このままじゃ俺が廃嫡されてしまう。弟の名前でしてきたことが全てばれてしまう!』
「え? 兄上、どういうことです?」
「知らない。俺じゃない! 違うんだ! 聞いてくれ!」
『なにも気付かない、お前達が悪いんだ。全部俺の物だ!』
なにも考えていないつもりでも口からは考えていることが全て、出てしまう王太子を蔑んだ目で見ていたデュークの元に第二王子であるオズワルトが近付いてくる。
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「オズワルド様ですね。初めまして、デュークフリード・シャルディーアと申します」
「あなたには、父だけでなく兄まで迷惑をお掛けしました。お詫びという訳ではありませんが、これを」
オズワルドが合図をすると側に控えていた執事がデュークに書面を渡す。
「あなたが兄と約束していた港の権利に関する全てをデューク殿に移管するという書面になります。サインは私の物ですが、すでに父は蟄居しており、王太子である兄もこの状態では政務に復帰するのは難しいでしょう。なので、私のサインでも問題ないと思いますのでご心配なく」
「はっ! ありがとうございます」
「あと、ついでにこの腕輪ですが……」
「はい、すぐに外します。セバス!」
「はい」
「あ、違います。しばらくはこのままお借りしていいかと確認したかったのですが……」
「はい。それなら問題ありません。なんなら、予備をお渡ししましょうか?」
「それは興味深いですね」
「分かりました。セバス」
「はい。では、手持ちで申し訳ありませんが……」
セバスは執事が抱えるトレイの上に手持ちの腕輪を五本並べる。
「ありがとう。これで強情な人も快くお話してくれると思うと気持ちが軽くなるよ。でも、これだと私の方が貰いすぎですね。なにかお望みのことはないですか?」
「いえ。これは私からの献上品ということで……」
「いえ。それでは父や兄の様に腐敗の温床となります。なにかお困りのことでも良いですよ」
デュークは少し思案すると、オズワルドに向き直り話し出す。
「では、お言葉に甘えまして、一つと言いますかお願いがあります」
「それは、あの少年絡みのことでしょうか?」
「はい。実は……」
デュークがオズワルドに対し、シャルディーア領で売り出す塩、砂糖、酒、紙、工業製品など主産業に対し各ギルドからの圧力が掛かった場合に助けて欲しいと頭を下げる。
「デューク殿。話は分かりました。では、こうしましょう。今後、シャルディーア領、または、あの少年が産み出す産業や物などについては、『王室御用達』を使用することを許可します。ただ、闇雲に使われると品が疑われるので、デューク殿が認めた物だけにして欲しいですね。あと、『王都御用達』を与えた品は、私に献上して欲しい。どうです?」
「オズワルド様は、そこまで、あの小僧を……」
「はい。楽しみにしています」
「分かりました。宜しく御願いします」
「こちらこそ。末永くお願いしますね」
王城から出ると馬車の中でデュークがセバスに言う。
「港の権利は得られたが、あれは口止め込みだよな?」
「旦那様。例えそうだとしても、ここは胸に納めて置いた方がいいと思います」
「そうだな。あとで、オズワルド様と執事に携帯電話を渡しておいてくれ」
「はい」
「それと、明日。ケインを屋敷に呼んでくれ。そうだな、三時頃だな」
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