406 / 468
連載
◆試食しました
しおりを挟む
「あの……」
「……」
「オズワルド様?」
「……あ、すまない。で、どうした?」
「どうしたじゃなくてですね。なぜ、この場所にいるんでしょうか?」
「それか。今、言わないとダメか?」
王太子はそう言いながらも視線はテーブルの上のチョコレートに釘付けで、俺達の方を見ようともしない王太子の様子にデューク様も嘆息するしかなく、俺の方を見やると黙って頷く。これは王太子の目の前にあるチョコレートをどうにかするまでは話にならないということだろう。ならば、紹介しようじゃないか。王太子だけでなくアリー様やメイドさん達も興味津々という感じだ。
「では、説明する前にこちらを一つ召し上がって下さい」
「ん? どれでもいいんじゃないのか? 何か意味があるのか?」
王太子から質問されたので、先程のカカオの割合のことを再度、説明する。そして、勧めた皿はカカオの割合を一番高くした物で、七割ほど含まれていてとても苦い。だけど、抗酸化作用が高まるため、肌にはいいことを話す。そして、他の皿はカカオの割合を六割、五割、四割、三割と低くした物を並べていて、カカオの割合が低くなれば甘みが強くなることを話す。
そこまで話すと王太子はやっと俺の方を見るが、アリー様達女性陣は高カカオチョコレートの皿に釘付けだ。
「では、いただくとしよう」
王太子が高カカオチョコレートの皿から板チョコを分割して二センチメートル四方のサイズになった一つを摘まむと、そのまま口の中へと放り込む。そして、周りの人達は王太子の反応に注目している。
「ん……確かに甘くはない。甘くはないが、今まで食したことがない味だな。これで割合を変えると甘くなるのだな。どれ」
王太子はそう言うと、六割のチョコレートを摘まむと口に入れ、五割のチョコレートを口に入れ……三割のチョコレートを口に入れたところで「ふむ」と頷く。
「ケインが言うように確かに割合を抑えた方が甘くて美味しいな。いっそ、三割と七割だけでいいんじゃないのか。六割にした所で、余り甘くはならないし四割も同じようなもんだな」
「そうですか、分かりました。参考にさせてもらいます」
王太子は目新しい物が食べられたことでご機嫌な感じだが、口元にチョコレートが付いたままだ。なんで誰も言わないのかな? もしかして、指摘すると不敬罪とか言われたりするんだろうかとか考えていると、脇をチョンチョンと突かれる。なんだろうと思えば、アリー様が何か言いたげに見ていた。ああ、王太子が食べるまでは手を着けることも出来ないし、了解を得られないとダメとかあるのかなと、俺の方からご機嫌な王太子に確認を取ってみる。
「あの、他の人達にも確認してもらいたいのですが、よろしいですか?」
「ああ、これはすまない。遠慮せずに食すがいい」
王太子の言葉にまずはアリー様が高カカオチョコレートに手を伸ばす。デューク様も手を出そうとしたが、その手はメイドさん達に払われる。
「え? なんでだ?」
「旦那様、今は我慢です。下手に刺激しない方がよろしいかと……」
「セバス、そう言うが俺は一応、ここの主人なんだぞ」
「ええ。心得ております。ですが、アレには逆らわない方がいいかと」
「……ふぅまあ確かにそうだな」
俺が肌にいいと言ったばかりにアリー様だけでなく、側にいたメイドさん達が王太子がいるのにも関わらず高カカオチョコレートに集中してしまったのだ。俺は悪いことしたかなとデューク様の前に三割の甘いチョコレートの皿を差し出す。
「すまんな。どれ……うん、確かに今まで感じたことのない甘さだな。どれ、もう一つ……おい、どうして邪魔をする」
「止めといた方がいいですよ」
「勧めといて止めとけとはまた妙なことを言うな。何か意味があるのか?」
「はい。実は……」
デューク様がもう一つと手を伸ばした所で、俺が皿を引き寄せると怪訝そうな顔で質問してきたので、チョコレートの罠について話す。
「先程、肌にいいと言いましたが、限度というものがあります」
「まあ、そうだろうな。で、度を超すとどうなる?」
俺がそう言った瞬間に高カカオチョコレートに群がっていた女性陣の動きが止まったような気がするが構わずに話を続ける。
「お分かりと思いますが、このチョコレート自体甘みはありません。なので、それを補うためにたくさんの砂糖を使います」
「まあ、そうだろうな。それで?」
大量の砂糖という言葉にまた、女性陣の動きが止まる。俺は次も大事なことだと少し声を大きくして話す。
「そして、チョコレートの原料のカカオには脂が含まれています」
「脂か……要するに食べ過ぎると太ると。そう言いたいのか?」
「はい。それだけではなく、余分な脂は肌が荒れる原因にもなるので……ヒッ!」
「オッ!」
そこまで話した所で、アリー様を始め女性陣が俺を囲む様に立ち並び俺とデューク様を睨んでいた。王太子がいるの忘れていないよね。
「これだから、ケイン君は面白いよね」
「はい。その通りです」
王太子の言葉に頷くセバス様が見えた。
「……」
「オズワルド様?」
「……あ、すまない。で、どうした?」
「どうしたじゃなくてですね。なぜ、この場所にいるんでしょうか?」
「それか。今、言わないとダメか?」
王太子はそう言いながらも視線はテーブルの上のチョコレートに釘付けで、俺達の方を見ようともしない王太子の様子にデューク様も嘆息するしかなく、俺の方を見やると黙って頷く。これは王太子の目の前にあるチョコレートをどうにかするまでは話にならないということだろう。ならば、紹介しようじゃないか。王太子だけでなくアリー様やメイドさん達も興味津々という感じだ。
「では、説明する前にこちらを一つ召し上がって下さい」
「ん? どれでもいいんじゃないのか? 何か意味があるのか?」
王太子から質問されたので、先程のカカオの割合のことを再度、説明する。そして、勧めた皿はカカオの割合を一番高くした物で、七割ほど含まれていてとても苦い。だけど、抗酸化作用が高まるため、肌にはいいことを話す。そして、他の皿はカカオの割合を六割、五割、四割、三割と低くした物を並べていて、カカオの割合が低くなれば甘みが強くなることを話す。
そこまで話すと王太子はやっと俺の方を見るが、アリー様達女性陣は高カカオチョコレートの皿に釘付けだ。
「では、いただくとしよう」
王太子が高カカオチョコレートの皿から板チョコを分割して二センチメートル四方のサイズになった一つを摘まむと、そのまま口の中へと放り込む。そして、周りの人達は王太子の反応に注目している。
「ん……確かに甘くはない。甘くはないが、今まで食したことがない味だな。これで割合を変えると甘くなるのだな。どれ」
王太子はそう言うと、六割のチョコレートを摘まむと口に入れ、五割のチョコレートを口に入れ……三割のチョコレートを口に入れたところで「ふむ」と頷く。
「ケインが言うように確かに割合を抑えた方が甘くて美味しいな。いっそ、三割と七割だけでいいんじゃないのか。六割にした所で、余り甘くはならないし四割も同じようなもんだな」
「そうですか、分かりました。参考にさせてもらいます」
王太子は目新しい物が食べられたことでご機嫌な感じだが、口元にチョコレートが付いたままだ。なんで誰も言わないのかな? もしかして、指摘すると不敬罪とか言われたりするんだろうかとか考えていると、脇をチョンチョンと突かれる。なんだろうと思えば、アリー様が何か言いたげに見ていた。ああ、王太子が食べるまでは手を着けることも出来ないし、了解を得られないとダメとかあるのかなと、俺の方からご機嫌な王太子に確認を取ってみる。
「あの、他の人達にも確認してもらいたいのですが、よろしいですか?」
「ああ、これはすまない。遠慮せずに食すがいい」
王太子の言葉にまずはアリー様が高カカオチョコレートに手を伸ばす。デューク様も手を出そうとしたが、その手はメイドさん達に払われる。
「え? なんでだ?」
「旦那様、今は我慢です。下手に刺激しない方がよろしいかと……」
「セバス、そう言うが俺は一応、ここの主人なんだぞ」
「ええ。心得ております。ですが、アレには逆らわない方がいいかと」
「……ふぅまあ確かにそうだな」
俺が肌にいいと言ったばかりにアリー様だけでなく、側にいたメイドさん達が王太子がいるのにも関わらず高カカオチョコレートに集中してしまったのだ。俺は悪いことしたかなとデューク様の前に三割の甘いチョコレートの皿を差し出す。
「すまんな。どれ……うん、確かに今まで感じたことのない甘さだな。どれ、もう一つ……おい、どうして邪魔をする」
「止めといた方がいいですよ」
「勧めといて止めとけとはまた妙なことを言うな。何か意味があるのか?」
「はい。実は……」
デューク様がもう一つと手を伸ばした所で、俺が皿を引き寄せると怪訝そうな顔で質問してきたので、チョコレートの罠について話す。
「先程、肌にいいと言いましたが、限度というものがあります」
「まあ、そうだろうな。で、度を超すとどうなる?」
俺がそう言った瞬間に高カカオチョコレートに群がっていた女性陣の動きが止まったような気がするが構わずに話を続ける。
「お分かりと思いますが、このチョコレート自体甘みはありません。なので、それを補うためにたくさんの砂糖を使います」
「まあ、そうだろうな。それで?」
大量の砂糖という言葉にまた、女性陣の動きが止まる。俺は次も大事なことだと少し声を大きくして話す。
「そして、チョコレートの原料のカカオには脂が含まれています」
「脂か……要するに食べ過ぎると太ると。そう言いたいのか?」
「はい。それだけではなく、余分な脂は肌が荒れる原因にもなるので……ヒッ!」
「オッ!」
そこまで話した所で、アリー様を始め女性陣が俺を囲む様に立ち並び俺とデューク様を睨んでいた。王太子がいるの忘れていないよね。
「これだから、ケイン君は面白いよね」
「はい。その通りです」
王太子の言葉に頷くセバス様が見えた。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。