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しおりを挟むごとん、ごとん、ごとん
電車の揺れは眠りの国へとわたしを誘う。寝てしまい、降りる駅に気づかず通過するのが怖くて目を一瞬も閉ざせない小心者のわたしはあまり得意ではない辛いガムを口の中に放り込んで噛み締めた。
マスクのしている口元がごほん、と何度か噎せる。
マスクをしていてよかった。とわたしは心からほっとした。顰蹙をかい冷たい目で見られるのがこわい。
『あおぞら駅~あおぞら駅に到着です。雨で大変滑りやすくなっております。足元にお気を付けてください』
アナウンスが流れて電車が停車する。
ドアが開くとひんやりとした空気が入ってきてわたしはぶるり、と肩を震わせた。
目の前でスポーツバックを抱えて眠っていた、中学生くらいの少年が目を覚まして辺りをキョロキョロと見回した。思いきった丸刈りで頭で野球少年というよりは肌の色が白いので小坊主のようである。自分が降りる駅ではない、と分かると落ち着きを取り戻して、車内の広告をぼんやりとした眠そうな顔で眺め始めた。
スカーフを巻いた初老の女性が青白い顔で車内に入ってくる。空いている座席のスペースを探している様子。わたしは腰を浮かせ、女性に声をかけようとした。
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