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しおりを挟む嫌な耳鳴りがする。わたしは思わずその場に座り込んだ。
『……殺せ』
ぐあん、ぐあん、歪んでいる低い男の声がわたしの頭のなかに響いた。
他者に命令するのが当たり前で傲慢な声。
胸が苦しくなり、全身に巡っていた血が止まりそうになる。
目の前がぐにゃり、と歪んで過去へと意識がとんだ。
『殺せ、すべてを破壊しろ』
喜びや悲しみなど感情を宿さない瞳をしている6体の同じ顔の女達が声に命じられるまま、苦労を知らないような細く白い手に持たされた大釜を悲鳴をあげ逃げ惑う人間達に振り下ろしている。
わたしもそれのひとつであり、同じだ。
ただ、殺戮を促す声に命じられるまま壊れるまで人間を殺す動作を続けるわたし達。
血が飛び散り真っ白な翼を赤く染める。
人間を憎んでいる男が天使をイメージして自分を裏切った女と白い鳥を融合させて作り出した、神を冒涜した歪んだ醜いモノ。
わたし達の元になった女は男を惑わすような豊満な胸をして、愛嬌がある顔立ちをした蠱惑的な色香を漂わせるひとだ。彼女の記憶はいつでも引き出せる。
冷たく重い腕、さみしがり屋の女が絡み付き奪うのはささやかな一瞬の愛でもなく、一生の命だ。
『殺せぇえええ!皆殺しにしろぉおおお!!!』
ヒステリックに上擦り発狂したような声。
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