愛したがりの殺戮天使。

遊虎りん

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「……っ!ゆずるさん!!大丈夫ですか」

坊主頭の男の子の声だ。うっすらと目を開けると心配そうな丸く大きな瞳と視線が合う。
おそらくわたしの顔は血の気が引いて青白く悪霊のようだろう。

「……ゆずるさん、じゃないです」

わたしはゆずる、という名前ではない。人違いで親切に声をかけてくれたのなら申し訳ないので間違いであると掠れ震えた声を出した。

「あ、ごめん。よく席をゆずっていたから、勝手におねえさんのことゆずるさんって呼んでた」

わたしが目を開けると坊主頭の男の子は安堵の息を吐いて笑った。
なるほど、わたしも勝手に『坊主頭の男の子』と呼んでいる。

「……わたしははい子といいます」

「珍しい名前だね。僕は健大。健康で大きくなれってじいちゃんとばあちゃんの願いが込められた名前です」

「健大君、とてもいい名前ですね」

ホッと、息を吐いてわたしは目を細めた。健大君はよくしゃべる。それは仲良くしたい、という気持ちの現れだろうとわたしは勝手に想像して一人で嬉しいと感じた。

「はい、ミネラルウォーター。買ったばかりの新品。まだ飲んでないからキレイだよ」

スポーツバックからミネラルウォーターのペットボトルを取り出すとキャップを開けてから健大君がそれを差し出す。それを受け取って喉の乾きを潤して癒した。

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