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しおりを挟むパーーーン!銃声と羽を休めていた鳥達が一斉に木々の枝から飛び立ち逃げ惑う音。森がざわめく。猟師が侵入してきたのだ。
森に住まう獣が警戒の声をあげる。仲間の血の匂い。キリトは迷い足を止めた。
血の匂いは移動している。それを追いかける人間の息遣いと足音。
(父さんはあいつらに……クソ!)
見捨てる事は出来なかった。キリトは撃たれた仲間を庇うように立ち威嚇の声をあげた。
「魔狼!お前らの毛皮は高く売れるんだ……黙って撃たれてくたばれよ」
猟師は忌々しげに言葉を吐き出し、キリトに銃口を向けた。
見ると懐かしい父親の匂いが確かにした。猟師は人間の匂い隠しにキリトの父親の毛皮で作った羽織を身に付けていたのだ。
益々この場から身を引くことが出来なくなる。
パーーーン!と恐ろしい銃声が再び森に響き渡る。キリトは銃弾を避けると猟師に向かって突進し足に噛み付いた。
「離せ!ちくしょう!!」
猟師は猟銃でキリトの頭を強く何度も叩いた。視界が真っ赤になる。ウサギやネズミとは違い、人間の命懸けの抵抗は激しく体力が消耗する。
キリトは観念して口を離した。猟師は命からがら人里へと逃げていった。
頭から血を流し意識が朦朧とした中でキリトは猟師の後を追いかけた。
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