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「…油断していたら噛み殺されそうだ」
ジュランが楽しそうに笑っている。余裕を見せつけられたようで更に腹が立った。
騎士団に入隊してから一週間程だが本来の気性の荒らさを殺して淡々と周囲が望む騎士になるよう努めてきた。
私が騎士になり、まとまった収入を得て田舎の兄弟達が毎日ひもじい思いをしないですむようになった。以前はギルドに属して魔物退治をしていたのだが、腕を買われ騎士団にスカウトされたのだ。
私が荒くれ者だと知るのは、騎士団の団長のガロウ・ロウモスと僅か数人である。
「勝負をしないか、ユイ」
「……勝負?」
「俺が勝ったら大人しく抱かれろ。お前が勝ったら何でも願いを叶えてやろう」
「受けてたとう。私が勝って、お前のその長ったらしい髪を全部剃って丸坊主にしてやる」
「俺を丸坊主にするのが、お前の願いなのか?」
「他人に叶えて貰う願いなど私にとっては屁と同じだ」
「…本当にお前は口が悪いし下品だな」
「生憎私は上品とやらに馴染みがないんでね」
態と私は皮肉で全て返している。私はこいつらと馴れ合うつもりは微塵もない。
しかし、肩を揺らしてジュランは楽しそうに笑っている。
私は練習用の木刀を二本掴んで一本を差し出した。
次期王となるジュランにはこの国を救った英雄の血が流れている。
第1王位継承者に代々受け継がれる剣の技があるとされる。よって、この国の王は剣王と呼ばれているのだ。
「……」
木刀を構える。しん、と辺りが静まり返り虫の音が微かに聞こえる。
ジュランの氷のような眼差しが私の緊張感を高ぶらせる。全く隙がない。
私は勝負に出た。地面を蹴り掛けると素早く木刀を降り下ろす。ジュランがそれを受けて木刀同士を火花を散らした。
体制を立て直し攻撃を仕掛続ける。
「……っく!」
ジュランが操る木刀の先の動きが見えなくなる。私の一瞬の動揺と焦りが負けへと追い込まれる結果となってしまった。
地面に膝をついた私に木刀の先を突き付ける。
「なかなかの腕だな、久しぶり楽しめたぜ」
私はこの勝負を楽しめる余裕などなかった。悔しさに奥歯を噛み締める。
「……ユイ、お前の悔しそうな表情は堪らなくクるぜ。口を開けろ」
強引に指で顎を掴んで上を向かせると唇を奪われる。舌を差し込まれ口腔を蹂躙された。涎が口端から溢れて喉元を濡らす。
鍛練場といっても森を開いて作った粗末なもので、野外である。
「…っ、…ここで、するのか?」
舌を絡められ執拗に吸われる。ジュランのキスは濃厚でねちっこい。息が上がる。唾液の糸を引かせながら濡れた唇が離れる。
ジュランが楽しそうに笑っている。余裕を見せつけられたようで更に腹が立った。
騎士団に入隊してから一週間程だが本来の気性の荒らさを殺して淡々と周囲が望む騎士になるよう努めてきた。
私が騎士になり、まとまった収入を得て田舎の兄弟達が毎日ひもじい思いをしないですむようになった。以前はギルドに属して魔物退治をしていたのだが、腕を買われ騎士団にスカウトされたのだ。
私が荒くれ者だと知るのは、騎士団の団長のガロウ・ロウモスと僅か数人である。
「勝負をしないか、ユイ」
「……勝負?」
「俺が勝ったら大人しく抱かれろ。お前が勝ったら何でも願いを叶えてやろう」
「受けてたとう。私が勝って、お前のその長ったらしい髪を全部剃って丸坊主にしてやる」
「俺を丸坊主にするのが、お前の願いなのか?」
「他人に叶えて貰う願いなど私にとっては屁と同じだ」
「…本当にお前は口が悪いし下品だな」
「生憎私は上品とやらに馴染みがないんでね」
態と私は皮肉で全て返している。私はこいつらと馴れ合うつもりは微塵もない。
しかし、肩を揺らしてジュランは楽しそうに笑っている。
私は練習用の木刀を二本掴んで一本を差し出した。
次期王となるジュランにはこの国を救った英雄の血が流れている。
第1王位継承者に代々受け継がれる剣の技があるとされる。よって、この国の王は剣王と呼ばれているのだ。
「……」
木刀を構える。しん、と辺りが静まり返り虫の音が微かに聞こえる。
ジュランの氷のような眼差しが私の緊張感を高ぶらせる。全く隙がない。
私は勝負に出た。地面を蹴り掛けると素早く木刀を降り下ろす。ジュランがそれを受けて木刀同士を火花を散らした。
体制を立て直し攻撃を仕掛続ける。
「……っく!」
ジュランが操る木刀の先の動きが見えなくなる。私の一瞬の動揺と焦りが負けへと追い込まれる結果となってしまった。
地面に膝をついた私に木刀の先を突き付ける。
「なかなかの腕だな、久しぶり楽しめたぜ」
私はこの勝負を楽しめる余裕などなかった。悔しさに奥歯を噛み締める。
「……ユイ、お前の悔しそうな表情は堪らなくクるぜ。口を開けろ」
強引に指で顎を掴んで上を向かせると唇を奪われる。舌を差し込まれ口腔を蹂躙された。涎が口端から溢れて喉元を濡らす。
鍛練場といっても森を開いて作った粗末なもので、野外である。
「…っ、…ここで、するのか?」
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