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少女が落ち着くまで抱き締めて背中を撫でた。
街が壊滅状態で魔物が我が物顔で闊歩している危険で最悪な環境のなかこんなに小さい身体で生きるのを諦めずよく頑張った。
「…ご、ごめんなさい。騎士様。泣いてしまって」
涙が止まり落ち着いた少女が顔をあげた。我に返り私に抱きついて泣いてしまったことを謝る。私は少女の頭に手を置くとくしゃりと髪を撫でてから立ち上がった。
「涙が出るのは、心が死んでない証拠だ…騎士様と呼ばれるのは落ち着かない私はユイという。様付け以外で呼んで欲しい」
騎士様と呼ぶ少女だ。ユイ様と呼ぶかもしれない、と思い一応、言葉を付け足した。
「ユイさん、私はミーナといいます」
「ミーナか。可愛らしい名前だ。…ミーナ、生き残っている人間は他にいるだろうか?」
「はい、います。何人か集まっているところがありますから案内します」
よかった、私は思わずほっと安堵の息を洩らした。少女を愛馬に乗せた。蹄の音が聞こえる。他の騎士達がようやく追い付いた。
「おい、ユイ、お前は王子の護衛だろう。離れすぎだ」
忠誠心が強い一人の騎士が厳しい口調で言ってくる。
「私の護衛など必要ないだろう。それに万が一魔物が襲ってきてもどちらかのクソガキ一匹……王子様のどちらかが生き残っていればいい」
言い直すが結局発言は不謹慎から始り、不謹慎で終わった。今更直しても意味がない。口を押さえてうっかり本音を喋っちゃったアピールするような性格でも、それを私に求められているわけでもない。いや、そんなふざけた事をしたら余計な怒りの感情を煽るような残念な結果に成りかねない。
「……」
開いた口が塞がらない、という感じだ。私はそいつが我を忘れて怒鳴る等しないうちに少女を促して案内をしてもらうことにした。
魔物は予測不能な動きをする。常識を持って行動しても命を危険に晒すこともある。ここでは、自分の感覚を研ぎ澄まして即座に対応しないといけない。
誰かの命令通りに動けばいいという状況ではないのだ。
「あそこです」
少女が指を指した。瓦礫だけにみえるが、地下に続く階段があるという。
少女を馬から下ろした。私達の声が聞こえたのか、ひょっこりと男の子が顔をだした。少女と顔立ちが似ている。ぱあっと顔を輝かせて男の子は少女に駆け寄る。
「お姉ちゃん!無事だったんだね」
「ジャン!ごめん、心配かけて」
どうやら魔物から逃げるときにはぐれてしまったらしい。再会出来た喜びを確かめあい、二人がひしっと抱き合う。
街が壊滅状態で魔物が我が物顔で闊歩している危険で最悪な環境のなかこんなに小さい身体で生きるのを諦めずよく頑張った。
「…ご、ごめんなさい。騎士様。泣いてしまって」
涙が止まり落ち着いた少女が顔をあげた。我に返り私に抱きついて泣いてしまったことを謝る。私は少女の頭に手を置くとくしゃりと髪を撫でてから立ち上がった。
「涙が出るのは、心が死んでない証拠だ…騎士様と呼ばれるのは落ち着かない私はユイという。様付け以外で呼んで欲しい」
騎士様と呼ぶ少女だ。ユイ様と呼ぶかもしれない、と思い一応、言葉を付け足した。
「ユイさん、私はミーナといいます」
「ミーナか。可愛らしい名前だ。…ミーナ、生き残っている人間は他にいるだろうか?」
「はい、います。何人か集まっているところがありますから案内します」
よかった、私は思わずほっと安堵の息を洩らした。少女を愛馬に乗せた。蹄の音が聞こえる。他の騎士達がようやく追い付いた。
「おい、ユイ、お前は王子の護衛だろう。離れすぎだ」
忠誠心が強い一人の騎士が厳しい口調で言ってくる。
「私の護衛など必要ないだろう。それに万が一魔物が襲ってきてもどちらかのクソガキ一匹……王子様のどちらかが生き残っていればいい」
言い直すが結局発言は不謹慎から始り、不謹慎で終わった。今更直しても意味がない。口を押さえてうっかり本音を喋っちゃったアピールするような性格でも、それを私に求められているわけでもない。いや、そんなふざけた事をしたら余計な怒りの感情を煽るような残念な結果に成りかねない。
「……」
開いた口が塞がらない、という感じだ。私はそいつが我を忘れて怒鳴る等しないうちに少女を促して案内をしてもらうことにした。
魔物は予測不能な動きをする。常識を持って行動しても命を危険に晒すこともある。ここでは、自分の感覚を研ぎ澄まして即座に対応しないといけない。
誰かの命令通りに動けばいいという状況ではないのだ。
「あそこです」
少女が指を指した。瓦礫だけにみえるが、地下に続く階段があるという。
少女を馬から下ろした。私達の声が聞こえたのか、ひょっこりと男の子が顔をだした。少女と顔立ちが似ている。ぱあっと顔を輝かせて男の子は少女に駆け寄る。
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