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中学編。
きっかけ 8
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その涙があまりにも綺麗で勇治は見惚れた。
悲しげな声が湊斗の口から洩れる。寝顔は安らかなものではなく酷く辛そうで見ているだけで胸が苦しくなる。
ひと粒だった涙が次々と玉のように膨れ上がった。
頬が濡れる、
気がつけば勇治は地面に膝をついて湊斗に寄り添うと目尻に唇を押し付けていた。僅かに舌を出して涙を吸い舐める。少し塩の味がしたが、蜜を舐めた時のような恍惚とした悦びに肌が震えると同時にぞくりと下半身が甘く痺れた。何かが目覚めそうになる。
もっと舐めたい。と再び舌を伸ばした時、
「何してるの?」
眠りから覚めたばかりのぼんやりとした湊斗の声が聞こえた。ぎくり、と動きを止めた。
涙で濡れた瞳。長い睫毛も水滴がたまって、太陽の光を受けて輝いて見えた。
何だかそれが神秘的に見えて神々しさを感じた。
「……っ、…喉乾いてたから」
咄嗟に出た言葉は言い訳だった。変態と罵られて叱られる、と勇治は身構えて首を竦めたが、湊斗はきょとんと瞳を丸めた後くすっと笑みを溢した。
初めて湊斗の微笑みを見て勇治はどきり、とする。
嬉しい、愛しいという感情が生まれる。
「変なの」
ひと言、笑みを含んだ声で湊斗は言った。
許してくれた、とほっとする。
日だまりのような微笑みを見て心の重みがすっと軽くなった。心が安らぐ。
湊斗が座るスペースを作ってくれる。勇治はベンチに腰掛けた。
二人は無言だが、風が葉っぱを揺らす音が聞こえていたし、教室の窓が開いて何処かから笑い声が聞こえてきて、不思議と気まずさを感じなかった。
予鈴が鳴る、あと5分で授業が始まる。
「行こう」
湊斗は立ち上がると勇治に手を差し伸ばした。
「女子になるのもいいんじゃない?」
「……っ、…んなの、恥ずかしいだろ」
勇治は顔を真っ赤にして低く唸る。手を繋ぐのが照れ臭くて顔をしかめた。その様子を見て湊斗は軽く笑うと無理矢理手を繋いでしまう。
「……涙ってなんで勝手に出てきちゃうんだろう。泣きたくないのに、我慢しても駄目なんだ。僕が弱いからなのかな」
ぽつり、と呟かれる湊斗の言葉。
「強いけど弱い」
「……?」
「人間って単純に出来てねぇだろ。強いときもあるし弱いときもある…泣きたいときは泣いてもいいんだよ。いっぱい泣いて、また笑えばいい。なんて、腐るほど何処かで言われてると思うけど、実際言葉に出すとすげぇ、…はずいし、まだ人生の半分もいきてねぇのに偉そうに言えねぇよな」
「……何秒だって、生きてるなら偉いよ」
繋いだ手をぎゅ、と握った。勇治は湊斗の涙を見てくすんで固くなった心が洗われたような気がした。
「なんか、俺の分も塩尾に泣いてもらった気がする。ありがとうな」
勇治は口端をにぃっとつり上げて笑った。
それは教室の隅で暗い顔でうつ向いていた勇治とはまるで違う。別人のようだった。
些細な事が思わぬ奇跡を起こす。それは、勇気をもらったり、後悔したり、何かを気付かせたり、それは何の力をもたない人間一人の存在がもたらすもの。
きっかけは、縁であると思う。人と人を結ぶ。その言葉がなかったら、微笑みがなかったら、叱られなかったら、今の僕はなかった。僕が好きでいてくれるのは、きっかけがたくさんあって、色んな人々と交わって、泣いて笑って、君が好きな僕を作ってくれたんだ。
過去の君にお礼を言うよ、ありがとう。
悲しげな声が湊斗の口から洩れる。寝顔は安らかなものではなく酷く辛そうで見ているだけで胸が苦しくなる。
ひと粒だった涙が次々と玉のように膨れ上がった。
頬が濡れる、
気がつけば勇治は地面に膝をついて湊斗に寄り添うと目尻に唇を押し付けていた。僅かに舌を出して涙を吸い舐める。少し塩の味がしたが、蜜を舐めた時のような恍惚とした悦びに肌が震えると同時にぞくりと下半身が甘く痺れた。何かが目覚めそうになる。
もっと舐めたい。と再び舌を伸ばした時、
「何してるの?」
眠りから覚めたばかりのぼんやりとした湊斗の声が聞こえた。ぎくり、と動きを止めた。
涙で濡れた瞳。長い睫毛も水滴がたまって、太陽の光を受けて輝いて見えた。
何だかそれが神秘的に見えて神々しさを感じた。
「……っ、…喉乾いてたから」
咄嗟に出た言葉は言い訳だった。変態と罵られて叱られる、と勇治は身構えて首を竦めたが、湊斗はきょとんと瞳を丸めた後くすっと笑みを溢した。
初めて湊斗の微笑みを見て勇治はどきり、とする。
嬉しい、愛しいという感情が生まれる。
「変なの」
ひと言、笑みを含んだ声で湊斗は言った。
許してくれた、とほっとする。
日だまりのような微笑みを見て心の重みがすっと軽くなった。心が安らぐ。
湊斗が座るスペースを作ってくれる。勇治はベンチに腰掛けた。
二人は無言だが、風が葉っぱを揺らす音が聞こえていたし、教室の窓が開いて何処かから笑い声が聞こえてきて、不思議と気まずさを感じなかった。
予鈴が鳴る、あと5分で授業が始まる。
「行こう」
湊斗は立ち上がると勇治に手を差し伸ばした。
「女子になるのもいいんじゃない?」
「……っ、…んなの、恥ずかしいだろ」
勇治は顔を真っ赤にして低く唸る。手を繋ぐのが照れ臭くて顔をしかめた。その様子を見て湊斗は軽く笑うと無理矢理手を繋いでしまう。
「……涙ってなんで勝手に出てきちゃうんだろう。泣きたくないのに、我慢しても駄目なんだ。僕が弱いからなのかな」
ぽつり、と呟かれる湊斗の言葉。
「強いけど弱い」
「……?」
「人間って単純に出来てねぇだろ。強いときもあるし弱いときもある…泣きたいときは泣いてもいいんだよ。いっぱい泣いて、また笑えばいい。なんて、腐るほど何処かで言われてると思うけど、実際言葉に出すとすげぇ、…はずいし、まだ人生の半分もいきてねぇのに偉そうに言えねぇよな」
「……何秒だって、生きてるなら偉いよ」
繋いだ手をぎゅ、と握った。勇治は湊斗の涙を見てくすんで固くなった心が洗われたような気がした。
「なんか、俺の分も塩尾に泣いてもらった気がする。ありがとうな」
勇治は口端をにぃっとつり上げて笑った。
それは教室の隅で暗い顔でうつ向いていた勇治とはまるで違う。別人のようだった。
些細な事が思わぬ奇跡を起こす。それは、勇気をもらったり、後悔したり、何かを気付かせたり、それは何の力をもたない人間一人の存在がもたらすもの。
きっかけは、縁であると思う。人と人を結ぶ。その言葉がなかったら、微笑みがなかったら、叱られなかったら、今の僕はなかった。僕が好きでいてくれるのは、きっかけがたくさんあって、色んな人々と交わって、泣いて笑って、君が好きな僕を作ってくれたんだ。
過去の君にお礼を言うよ、ありがとう。
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