空想毒舌おとこ姫。

遊虎りん

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中学編。

なくしたもの 1

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「ねぇ、せっかく同じグループになったんだし親睦を深めるために遊ぼうよ!」

ハリスの思い付きの一言で日曜日3人で遊ぶことになった。
ホネの玩具をくわえて、遊ぼうよ!と尻尾を振りながら遊びに誘ってくる子犬のようで無邪気なハリスの誘いを無下なく断るより、いいよと快く乗った方が精神的に疲れないと思ったからだ。
一日中ハイテンションで小柄ながらも体力が底無しのハリスに振り回されるだろうが、その疲れは一晩目を瞑ったら体力は回復するだろう。

それに、

(父さんが珍しく休みで佑さんがくるから一日中家にいるかもだし)

ちらり、と心の隅で湊斗は浮かんだ言葉が決め手となった。意外に思ったのは勇治が遊んでもいい、とすぐに答えた事だ。

「…別に用事ねぇから。それに、…」

湊斗の視線に気が付いて勇治は口を開いた。その続く言葉は彼がすべて語らなくても察しられた。
グループ学習の際ほとんど、湊斗とハリスが喋っている。それを傍らで勇治が黙って聞いている。家のなかで口から生まれたような二人の子供が賑やかにお喋りをして、その二人の様子を新聞を読みながら見守る寡黙な父一人というような関係が成り立っていた。

グループ行動の自由時間、ハリスが動物園に行きたい!と主張し、それに対して湊斗が動物園なんかそこら辺にある。どうせ行くならもっと有意義な場所に行くべきだ、反対した。
頑固な二人は譲らず、勇治に意見を求めたら

「…ハリス、『あおぞら動物園』に行ったことあるか?」

何だか勇治の口調は父親のそれのように聞こえる。

「ない。動物園に行ったことないんだよね」

ハリスは首を横に振った。動物園に行ったことがないから、この3人で行ってみたいらしい。

「……なら、my動物園はあおぞら動物園にしとけ。そこにいる象はいい。目がその辺の象と違う」

「my動物園ってなに、それ!」

「どこの馬の骨か分からない動物を見るよりも地元の動物を、ずっと見ていると愛着がわくもんだぜ。子ウサギだったウサギが子供を産んで、その成長を見てると…ぐっと来る」

「なにそれ、ひすとりーじゃん!」

ハリスの瞳がキラキラと輝いている。湊斗は、どこの馬の骨か分からない動物という言葉を使う勇治が面白い、と感心していた。
勇治は黙っているが話を聞いている、というのが分かった。

「動物園楽しみだね!」

ハリスは動物園に行く気満々だ。その気にさせた勇治はその責任を取るつもりでいるのである。



湊斗は何の部活にも所属していない。所謂、帰宅部で帰りのホームルームが終わり、掃除当番の役割を済ませると学校を出た。
ハリスは家の者が迎えに来る。車に乗る?と何度か誘われたが、買い物がある為断っている。
勇治は気がついたら姿を消している。不思議と3人で帰ったことはない。

『今日、俺が飯作るから湊斗君は買い物して来なくていいよ』

携帯電話を開くと佑からLINEがきていた。湊斗は、了解という台詞を言っているやる気無さげな熊のスタンプを押した。

(今日の夜と明日は、安全だな)

佑が早く父親にプロポーズすればいいのに、と湊斗は思っている。男同士だが、二人が交際するのは賛成だ。弱くて脆い洋介には支えがいる。

日中は身体の調子がいいが夜になると母親が苦しんでいた。病院の消毒液がする白い病室よりも、住み慣れた家で過ごしたいと母親のみな子が希望して自宅で残り少ない余生を歩くことにした。
細くなる、背中。しかし、足は浮腫んで痛々しくて洋介は妻に寄り添い手でさすっていた。

「わたし、何か悪いことをしたのかな」

ぽつり、とみな子が呟いた言葉に洋介は叱った。

「お前は何も悪いことをしていない!一生懸命頑張ってきただろう…っ、……」

両親が泣いていた。湊斗も二人を邪魔しないように泣いた。
辛い日々だった。早く母親なんて死ねばいい。楽になればいい。一日でも長く生きていてほしい。看取る、死を受け入れるなんて気持ちを整理する準備なんかできなくてもがいていた。
思えば、その時から心が壊れている。父親と湊斗の心は丸かったのに歪んでしまった。

(佑さんなら、父さんを救えるんじゃないか)

救う、そこまで考えて湊斗は自分の考えが可笑しくて笑いそうになって口元を押さえた。

(僕らしくない、自分以外のやつに期待するなんて)

困った時に神頼みしてしまうが、神なんていないのだ。悪いことをしていなくても命はむごい形で奪われる。

変でも悪でも、普通の人でも同じだ。

腹の底が冷える。湊斗は友達との遊ぶ約束をして浮かれていた心が沈んでいくのを感じた。
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