ふしだらな薬。

遊虎りん

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美幸side

10.

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一度溢れ出した涙は次から次へと流れ出ては止まらなかった。
母親の前で転んで泣いたことがある。痛くて助けて欲しくて、初めて泣いた。

『男の子なのにみっともなく泣くなんて恥ずかしい子…泣くのやめなさい』

母親の冷たい視線。手を差し伸べられることはない、と察した。それ以来泣くことが恥ずかしくなった。

「う、……ひっく、みるなよ」

俯いて肩を小刻みに震わせて泣く俺を充城が見ている。恥ずかしい。今度は俺の顔が真っ赤になる。涙で掠れた声で言うと充城はポンポンと背中を撫でてぎゅ、と俺を抱き締めた。

「僕に突然キスしたり、怒ったり、泣いたり、……可愛いお姫様みたいな顔して激しいね、美幸さんは」

「…っ、だって、おれをき、らい」

初対面の子に好きになってもらうとか思ってないけど、存在を無視されたのはすごくショックだったのだ。涙で顔がぐちょぐちょだ。散々だ。自分が滑稽でみっともなくて嫌いだ。

「嫌いではないです。僕は人間に興味を持てなくて、…でも、美幸さんはとても甘くて興味を持ちました。好き、かもしれません」

今まで黙りでゲーム機の一部のようだった無表情が柔らかく微笑む。ちゅ、と涙で濡れた頬に唇を当てる。俺は驚いた。恐らく充城は今日初めてキスを知ったと思う。まだ小学生だし。人間に興味ないって言ってたし。
父と息子が舌を絡ませるキスをするのは異常な事だ。俺が変態なのは諦めているが、充城が自らそうなるとは思わなかった。

「…っ、…おれ、おまえのへんになるスイッチおしちゃった」

ぺらぺらと恥ずかしい言葉を話す充城を呆然と見つめる。

「美幸さんに普通を奪われたから、変になってしまいました。責任取ってください」

くす、と声を洩らして笑うと充城は俺の顔を手で挟んで唇を押し付ける。柔らかい唇の感触。舌を差し入れられる。エッチなキスだ。子供同士がするキスではない。

「んっ、…ふんん」

充城は物覚えがいい。唇を吸われ蹂躙されながら俺にとって危険な人物を目覚めさせてしまったと後悔した。

酸欠になるほどキスして、エッチな気分が高まり、股間が熱くなる。んっ、と眉間に皺が寄りはあ、と濡れた息を吐き出した。腰を小刻みに揺れて俺と充城は射精した。

「こんなに気持ちいいの初めて、です」

充城のうっとりとした声が耳に残っている。

俺は初対面で充城のファーストキスを奪い精通の手助けをした。

今の今まで忘れていた。うとうとと、俺は昔を思い出してごめんなさーいと充城に平謝りして眠りに落ちた。



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