溺愛もふもふ姫、旅に出る。

遊虎りん

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第一章

森。

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「この森を抜けるのは二日はかかる」

「冬じゃねぇし、そんなに急ぐ必要はないだろ」

「そうね。ここは無理せずのんびり行きましょ」

レミィとロゼとエメラルドの3人の会話を聞きながらティアは森を歩いている。ぎゃーぎゃー!と不気味な鳥のなき声が森の中で響いているが、怖くはなかった。もう、一人ぼっちではないからだ。
木々の葉っぱが太陽の暑さを遮り、森の中は涼しかった。

「どくきのこー!」

森にはたくさんの食べ物が木に実っていたり、根本に生えてたり土の中に隠れてたりする。
いかにも怪しい青と赤の傘をしているきのこを発見してティアは飛び付いた。毒々しい容姿のきのこを見てこれは危険なやつだ、とティアは本能で察する。

「…っ、にゃ!」

木の根本に生えている毒きのこを観察していると突然、腕にチクンっと鈍い痛みを感じてティアは思わず声をあげた。

ティアの声が聞こえて3人は駆け寄る。どうした、と心配そうな視線が集中する。白い毛並みで覆われているティアの腕を見ると皮膚の部分が赤く腫れていた。じんじん、と鈍く痛み熱を持っている。ティアの腕を刺した犯人は姿を既に消している。

「…ティアは、もう、だめ。ティアが、しんだら、にぼしをそなえてください」

ぷるぷると震えてティアは遺言を残そうとする。レミィが素早く毒が抜けるの呪文を詠唱する。魔法が成立した。時間は掛かるが、自然と毒はティアの体から排出するであろう。

「ティア、しばらくは物凄く苦しいだろうが、死ぬことはない」

「も、ものす、ごく?」

レミィの言葉にティアが怯える。

「ティアの腕を刺したのは、ビャッカという虫だ。刺されたら胸が締め付けるように苦しくなり、気分が落ち込み、食欲がなくなり、五キロは痩せてしまうやつだ」

「別名、失恋虫。刺されたら失恋をした時のような症状になる虫さんよ」

「つ、つらい、やつだ、それ」

ティアの猫耳がへたり、と頭に伏す。気分が落ち込み始める。せっかく食べるのを楽しみにしていたおにぎりも食べる気が起きない。

「ろぜ、これを、おたべ。おねーちゃんの、おにぎりだけど…ティア、たべれそうに、ない」

魚の鞄からおにぎりを出してロゼに差し出した。初めて姉貴風を吹かせるティア。

「元気になったら食えよ。あー、辛そうだな」

胸がとても苦しく息が出来ない。これが、失恋に陥ると起こる症状なのか、とティアは涙ぐむ。
ロゼはティアの頭を撫でて慰める。
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