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第二章
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「見かけない顔だもんね。僕、ね。 もうすぐお兄ちゃんになるんだよ!妹がうまれるの。かあさんがおなかおっきくなったから僕がお手伝いしてるんだ」
少し誇らしげな顔で少年は言った。
じゃあね、と少年は小さな手を振りパン屋に入っていった。ガラスの窓越しにパン屋の主人と何やら話しているのが分かる。くしゃくしゃと頭を撫でられて笑っている。
(いい兄貴になりそうじゃん、あいつ)
先程の明るく弾んだ少年の声が耳から離れない。
新しい生命を待ち遠しいと楽しみにしている様子が伝わってきた。
無事に赤ん坊が生まれるようにロゼは見知らぬ母親と女の赤ちゃんの誕生を願った。
引き離されないよう、喧嘩しても仲直りできる兄妹になるよう。何だかしんみりとなる。
くん、とロゼの鼻が反応した。
ふわり、と甘い匂いがする。ティアの匂いだ。
「ロゼ!むかえにきたー!おにぎり、たべよお」
エメラルドにシャンプーして貰ってティアの毛並みはいつもより艶帯びていつもよりもボリュームがある。コロコロとしている。物凄く可愛い。この可愛い生き物、いますぐ食べてしまいたい。自分の気持ちを押さえきれずになりロゼはティアをぎゅーっと抱き締めた。
「…俺、おにぎりよりもティアを食べたい。腹のなかに入れて独り占めしたくなる」
「ロゼのはらこわ、れる」
ティアの猫耳がへたん、と伏せられる。ぷるぷると震える。怖がっているのが面白い。
ちゅ、と唇をティアの額に押し付けキスする。
「俺の腹なんかぶっ壊れてもいい」
「…ひじょうじたいになったら、ひをよくとおして、よくかんでたべてください」
「生がいい」
「だ、めです!」
すりすり、もふもふ。腕の中で暴れられるがロゼはティアを離さなかった。むーむーと低く唸るティア。はあ、とティアを思いっきり吸い込むと一旦満足する。
「食いたいとか冗談。おにぎり、食べに行こうぜ」
本気を冗談にする。怖がらせて無邪気に近づいてこなくなったら手に入らなくなる。
ロゼの言葉にあからさまにほっ、と息を吐いて安堵に胸を撫で下ろした。
「おかかと、うめぼし、しゃけも、ある!」
「ティアが作ったのか?」
「エメラルド!ティア、おにぎりむきのてじゃない」
手のひらに肉球。一般的な猫よりは指が発達しているが器用に動かせず人間の手よりは毛深い。おにぎりを握ったら毛だらけになってしまう。
「今度俺がおにぎり、作ってやるよ」
「ほんと?たのし、み!」
無邪気に喜ぶ可愛いティアを見てロゼは双眸を細めた。
少し誇らしげな顔で少年は言った。
じゃあね、と少年は小さな手を振りパン屋に入っていった。ガラスの窓越しにパン屋の主人と何やら話しているのが分かる。くしゃくしゃと頭を撫でられて笑っている。
(いい兄貴になりそうじゃん、あいつ)
先程の明るく弾んだ少年の声が耳から離れない。
新しい生命を待ち遠しいと楽しみにしている様子が伝わってきた。
無事に赤ん坊が生まれるようにロゼは見知らぬ母親と女の赤ちゃんの誕生を願った。
引き離されないよう、喧嘩しても仲直りできる兄妹になるよう。何だかしんみりとなる。
くん、とロゼの鼻が反応した。
ふわり、と甘い匂いがする。ティアの匂いだ。
「ロゼ!むかえにきたー!おにぎり、たべよお」
エメラルドにシャンプーして貰ってティアの毛並みはいつもより艶帯びていつもよりもボリュームがある。コロコロとしている。物凄く可愛い。この可愛い生き物、いますぐ食べてしまいたい。自分の気持ちを押さえきれずになりロゼはティアをぎゅーっと抱き締めた。
「…俺、おにぎりよりもティアを食べたい。腹のなかに入れて独り占めしたくなる」
「ロゼのはらこわ、れる」
ティアの猫耳がへたん、と伏せられる。ぷるぷると震える。怖がっているのが面白い。
ちゅ、と唇をティアの額に押し付けキスする。
「俺の腹なんかぶっ壊れてもいい」
「…ひじょうじたいになったら、ひをよくとおして、よくかんでたべてください」
「生がいい」
「だ、めです!」
すりすり、もふもふ。腕の中で暴れられるがロゼはティアを離さなかった。むーむーと低く唸るティア。はあ、とティアを思いっきり吸い込むと一旦満足する。
「食いたいとか冗談。おにぎり、食べに行こうぜ」
本気を冗談にする。怖がらせて無邪気に近づいてこなくなったら手に入らなくなる。
ロゼの言葉にあからさまにほっ、と息を吐いて安堵に胸を撫で下ろした。
「おかかと、うめぼし、しゃけも、ある!」
「ティアが作ったのか?」
「エメラルド!ティア、おにぎりむきのてじゃない」
手のひらに肉球。一般的な猫よりは指が発達しているが器用に動かせず人間の手よりは毛深い。おにぎりを握ったら毛だらけになってしまう。
「今度俺がおにぎり、作ってやるよ」
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無邪気に喜ぶ可愛いティアを見てロゼは双眸を細めた。
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