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第四章
白い少女2
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◇◇◇
「あの女ったらし!ボクにわざと見せやがった!!」
アテルマは悔しい気持ちを爆発させていつもは顔色が悪く青白い顔を真っ赤にさせた。細い血管が浮き出て怒り心頭である。
ティア達の動向を光る丸い球を使い覗き見をしていたのだ。魔力は超越しもしもの世界でも、ティアは変わらず愛される様を目の当たりにした。
ティアが愛されている姿を見て、八つ当たりの気持ちが強まる。ニーナはどんなに、雨の日も風の日も、レブンに好きだと伝えたのに背中を向けられた、周囲にも見向きもされず誰からも愛されることはなかったというのに、ぎりとアテルマは奥歯を噛み締めた。
マティはアテルマの目に気づいて、ぱちりとお茶目たっぷりにウィンクした。おまけに投げキッスもする腹立たしい。逃げ帰るように意識をこちらに戻した。
ベットに細い手足を打ち付けて暴れる。息が上がって苦しく目眩が起きても止めない。
「……アテルマ様」
今朝、もてあそばれた黒く長い髪を三つ編みにさせたままラィダが低い声で名前を呼んだ。隆起した胸元、しっかりたした体躯の男は幼子に使えるような男には見えない。だが、名を呼んだその意図は、怒りを自分に向けて沈めさせるためである。
だが、今はティアに怒りが向かっていた。
母親に拒絶され塔に閉じ込められている時は心を乱すことはなかった。放っておいても孤独に死んでいくだろう、自分と一緒だと安心感もあった。
あの時はまだ笑える余裕があったのに、今は眠れることがない。吐き気がするほど悔しくて苦しくて羨ましい。
「……っ、…あのクソ猫を惨めな気持ちにさせてやる、ボクが死ぬ前に……!!!」
目が血走る。幼い白い少女は嫉妬心をむき出しにした。
魔力を封じ込める紋章がバチバチと火花を散らした。
白い身体が真っ暗に包まれる。
「最愛の妹が、目の前に現れたらどちらを愛するかな」
レミィとマティの上に姉がいる、そして妹。
魔術師である父は一度は魂を悪魔に売った男である。それを正気に戻したのは、妹、セシルを生んだ母親。母親は違う異母妹ということになるが、レミィは妹を溺愛している。
クスクスとアテルマは笑った。
レミィが妹の頭を撫でたらどんな顔をするだろう。
レミィが妹のためにりんごの皮を剥いたら、どんな言葉をいうだろう。
考えるだけで楽しくて喉を震わせて笑い、アテルマは5歳になったお誕生日会真っ只中のセシルを王国に転送させた。
物を移動させる魔法は特級魔法である。
誕生会のケーキを頬張り、残していた苺を食べようもして手を伸ばしたところで見知らぬ光景が目の前に広がり、セシルは目を丸くした。
「……おしろ???」
ぽかんと口が開いてヨダレが落ちる。お誕生会用のフリフリのピンク色のドレスがピカピカと光る。
金目のものに不穏な影が近付く。
栄えている城下町にはまだ悪い大人が残念ながら生息しているのだ。
「あの女ったらし!ボクにわざと見せやがった!!」
アテルマは悔しい気持ちを爆発させていつもは顔色が悪く青白い顔を真っ赤にさせた。細い血管が浮き出て怒り心頭である。
ティア達の動向を光る丸い球を使い覗き見をしていたのだ。魔力は超越しもしもの世界でも、ティアは変わらず愛される様を目の当たりにした。
ティアが愛されている姿を見て、八つ当たりの気持ちが強まる。ニーナはどんなに、雨の日も風の日も、レブンに好きだと伝えたのに背中を向けられた、周囲にも見向きもされず誰からも愛されることはなかったというのに、ぎりとアテルマは奥歯を噛み締めた。
マティはアテルマの目に気づいて、ぱちりとお茶目たっぷりにウィンクした。おまけに投げキッスもする腹立たしい。逃げ帰るように意識をこちらに戻した。
ベットに細い手足を打ち付けて暴れる。息が上がって苦しく目眩が起きても止めない。
「……アテルマ様」
今朝、もてあそばれた黒く長い髪を三つ編みにさせたままラィダが低い声で名前を呼んだ。隆起した胸元、しっかりたした体躯の男は幼子に使えるような男には見えない。だが、名を呼んだその意図は、怒りを自分に向けて沈めさせるためである。
だが、今はティアに怒りが向かっていた。
母親に拒絶され塔に閉じ込められている時は心を乱すことはなかった。放っておいても孤独に死んでいくだろう、自分と一緒だと安心感もあった。
あの時はまだ笑える余裕があったのに、今は眠れることがない。吐き気がするほど悔しくて苦しくて羨ましい。
「……っ、…あのクソ猫を惨めな気持ちにさせてやる、ボクが死ぬ前に……!!!」
目が血走る。幼い白い少女は嫉妬心をむき出しにした。
魔力を封じ込める紋章がバチバチと火花を散らした。
白い身体が真っ暗に包まれる。
「最愛の妹が、目の前に現れたらどちらを愛するかな」
レミィとマティの上に姉がいる、そして妹。
魔術師である父は一度は魂を悪魔に売った男である。それを正気に戻したのは、妹、セシルを生んだ母親。母親は違う異母妹ということになるが、レミィは妹を溺愛している。
クスクスとアテルマは笑った。
レミィが妹の頭を撫でたらどんな顔をするだろう。
レミィが妹のためにりんごの皮を剥いたら、どんな言葉をいうだろう。
考えるだけで楽しくて喉を震わせて笑い、アテルマは5歳になったお誕生日会真っ只中のセシルを王国に転送させた。
物を移動させる魔法は特級魔法である。
誕生会のケーキを頬張り、残していた苺を食べようもして手を伸ばしたところで見知らぬ光景が目の前に広がり、セシルは目を丸くした。
「……おしろ???」
ぽかんと口が開いてヨダレが落ちる。お誕生会用のフリフリのピンク色のドレスがピカピカと光る。
金目のものに不穏な影が近付く。
栄えている城下町にはまだ悪い大人が残念ながら生息しているのだ。
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