溺愛もふもふ姫、旅に出る。

遊虎りん

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第四章

もふもふの。

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ころん、としていたティアのふわふわな白い毛並みがすっきりとした。冬用の毛から夏用の毛に生え変わったのだ。

「ようやく落ち着いたな」

ティアの毛が生え変わるまで大変だった。ベット周りがふわふわの毛だらけになって、油断すると口のなかに入っていた。
半獣ではなくティアは全獣なのでいっそう大変だった。
ブラッシングしてもほこっと毛が落ちることがなくなってレミィはほっと胸を撫で下ろした。
レミィはティアの頭を撫でるとちょいちょいと顎の下を指先で撫でて擽る。

「ごめい、あくをおかけ、しました」

誠実に謝りたいが顎の下を撫でられると心地よい。ティアは糸状に目を細めて喉を鳴らした。

「ティアが悪いわけではない。
生命を守る大切なことだ……無事に終わって安心した」

冬用の毛のままだったら、暑さに堪えきれず具合を悪くするだろう。
ずっと毛が抜けないのも抜け続けるのもどちらも心配だ。

「レミィ……」

ティアも年頃の女の子だ。人間の言葉や心を持つ。普通の猫だったらごろごろ喉を鳴らしてご満悦で終るが、人間の男であるレミィが好きなのだ。
大きな瞳がうるうると濡れる。

「俺は毛深い女は嫌いじゃない。心配するな」

レミィは恭しく額同士をくっつけた。
かなりの純愛になるが、別に物足りなさを感じない。
ティアがおはよう!と元気に挨拶する声をきくと胸にグッと来る。朝は弱くてなかなか早く起きることはレミィにとって難しいが、ずっと塔のなかに閉じ籠り、化け物と指差され怖がられていたティアが堂々と胸を張り挨拶する姿は愛おしい。

ティアは勇敢だ。人を助けることが出来る。困っている人にどうしたの?と声をかけるのはすごく勇気がいることだ。
力を貸す、自分の身体を盾にする。
そして寂しさを人一倍理解している。
ティアは可愛がられるだけの女ではない。

「俺はティアに惚れている」

真っ直ぐなレミィの告白にティアは嬉しそうに笑った。

「ティアも、レミィにほれぼれする!」

ふっと無邪気なティアを見てレミィも笑う。いつもの皮肉げな笑みではない。

「あらー、二人のラブラブタイムを邪魔したくないけどぉ~~……エメラルド特製エビフライカレーが完成したわよ!」

バァン!と勢いよくエメラルドが寝室の扉を開いた。

「えびふりゃーーー!!」

ティアはエビフライが大好きだ。すごく嬉しそうなティアを抱き上げるとレミィは食卓へと足を向けた。
エメラルドの洋館は目を瞑って歩いても迷わないくらい馴染みがある。
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