サンダルで駆け抜ける異世界ライフ

medaka

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Season 2

第十八話:春の工房と仲間たちの風 (Season2 最終話)

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エリクサの春は花々が咲き乱れ、雑貨屋クロノスの工房は活気に満ちていた。アリスとデイジーは、貴族向けトレッドミルの生産に追われていた。

ワイバーンの鱗と骨のフレーム、虹色サラマンダーの魔石を埋め込んだベルト、紫と金の装飾を施す作業は、想像以上に手間がかかった。デイジーが「魔石の調整が難しい…一歩間違えると、ベルトが暴走するの」と汗を拭いながら呟くと、
アリスが「でも、みんな頑張ってくれてる。貴族たちも喜んでるよ!」と励ました。

マカロン・ルミエールも商会から職人を手配し、素材調達をサポートしていた。「ワイバーンの鱗は高騰してるけど、ルミエールの商会なら抑えられる。納期は厳しいが、俺たちならできる!」と緑の目を輝かせた。職人たちが夜遅くまで作業し、アリスは皆にジャイアントボアの串焼きを差し入れながら、「本当にありがとう。みんなのおかげだよ」と感謝した。

貴族向けトレッドミルの生産は大変だったが、皆の協力でなんとか納品を終え、評判は上々だった。冒険者ギルドでもトレッドミルの噂が広がり、ガルドとミャウはアリスの仕事仲間としてすっかり定着していた。冬の試走会での二人のやり取りを思い出すと、アリスはくすっと笑ってしまう。あの時、暖炉のそばでマタタビ茶を飲みながら、ガルドがミャウに「笑ってるお前、すげえいいな」と素直に伝え、ミャウの尾がそっとガルドの腕に触れた瞬間――二人は少しだけ、心の距離を縮めていた。

あれ以来、ガルドの視線はミャウに優しく、ミャウのツンとした態度も少し柔らかくなっていた。ガルドはトレッドミルを活用してマラソンのトレーニングに励み、シャツの袖をまくり上げて鍛えた腕の筋肉を見せつけながら、「アリス、このマシン…俺を少し、強くなった気がするよ」と控えめに笑った。その視線は自然とミャウの方へ向き、「ミャウ、一緒に…走ってみないか?」と少し照れくさそうに声をかけるようになった。

ミャウは雑貨屋クロノスの店番を担当し、商品整理や接客で活躍していた。アリスが「ミャウ、店番助かるよ。ちゃんとバイト代払うからね」と笑うと、ミャウは尻尾を軽く振って、「ふーん、猫族の私はお金よりマタタビ茶がいいんだけど…まあ、ガルドが一緒にいるなら、悪くないよ」と呟いた。試走会後の変化で、二人は自然とペアで行動するようになっていた。

アリスは1日8ルミネのバイト代を渡し、ミャウは店の一角で器用に働いていた。
しかし、ミャウにとって悪い知らせが届いた。雑貨屋クロノスの在庫を確認していたミャウが、ショックを受けた声で叫んだ。
「アリス、マタタビ茶葉が…もう無いんだ! 在庫、全部使い切っちゃった!」

アリスが「えっ、マタタビ茶って、そんなに使うの?」と驚くと、ミャウは「猫族の私には必需品なの! 試走会の時も、ガルドと飲むのが…楽しみだったのに」と尾をしょんぼり下げた。

ガルドがそっと近づき、「ミャウ、心配すんな…俺が、一緒に探しに行ってやるよ」と少し声を低くして胸を叩くと、ミャウは少し頰を赤らめ、「…ふん、ガルドがそんなに頼もしいなら、いいよ」と受け入れた。

二人の関係は、試走会後の告白めいた言葉で、少しだけ前進していた――ガルドのヒーロー気取りの裏にあるシャイな優しさとミャウの照れ隠しが、穏やかな絆を生んでいた。
ミャウはしばらく考え込み、「マタタビの木をもっと増やしたらいいんだ! どこかで魔法の植物成長促進剤の話を聞いたことがある」と閃いた。

彼女は冒険者ギルドの掲示板で情報を集め、成長促進剤の材料リストを見つけた。メインの材料は「ブロッサムウルフの骨の粉」で、他にも「春華キノコ」や「花弁の結晶」が必要だった。
ミャウは「私が材料集めに行ってくる! ガルド、一緒に来る?」と誘い、ガルドが「…ああ、任せろ。俺が、守ってやるよ」と少し顔を赤らめながら即答。二人で冒険に出かけた。

ミャウとガルドはエリクサの北、花畑に囲まれた「花狼の谷」へ向かった。ブロッサムウルフは春の魔獣で、鋭い牙と花びらの嵐を巻き起こす強敵だ。ミャウは猫族の軽やかな身のこなしで草原を進み、ガルドが剣を構えてフォロー。

「ミャウ、俺の後ろに…いてくれ。こいつら、なんとかするよ」と守るように立つ。ブロッサムウルフが花びらの嵐を放つが、ミャウは素早く跳び上がり、木の枝から枝へと飛び移って攻撃をかわした。ガルドが剣でウルフを斬りつけ、「今だ、ミャウ! …俺の援護で、行け!」と声を張り上げつつ、少し息を切らして連携。鋭い爪で群れのリーダーを倒すと、他のウルフは逃げ出した。

ミャウは「さすが猫族の私! …でも、ガルドの剣さばきも、悪くないよ」と息を弾ませ、ガルドに微笑んだ。
ガルドは頰を赤らめ、「…お、おう。ミャウのおかげだよ」と照れくさそうに骨を集めた。ブロッサムウルフの骨の粉は、暖かな輝きを放つ貴重な材料だった。
さらに、二人はブロッサムウルフの肉を切り分け、「これ、アルフレッドが喜びそう」と荷物に詰めた。谷の花畑で少し休憩し、ガルドが「ミャウ、冬の時みたいに…これからも、一緒に冒険しようか」と手を差し伸べると、ミャウは尾を絡めて「…ふん、ガルドのその優しさ、嫌いじゃないよ」と囁いた。

二人の関係は、試走会のぎこちない告白から、互いの信頼を基にしたパートナーシップへ少し進化していた。
次に、春華キノコを探して谷の洞窟へ。洞窟内は花の香りに満ち、キノコは壁に張り付いていた。ミャウは「暖かいけど、マタタビ茶のためだよ」と爪で慎重に採取し、ガルドが周囲を警戒。最後に、花弁の結晶を集めるため、谷の頂上へ。春風の中、結晶が花の中に埋もれているのを発見し、二人は協力して掘り出した。「これで全部揃った! 早く帰って、マタタビの木を増やすよ!」とミャウは意気揚々とエリクサに戻った。
ガルドが「ミャウの笑顔…春の花みたいだな。俺の胸を、温かくするよ」と呟くと、ミャウは耳を赤くして「バカ、そんなベタなセリフ、どこで覚えたのニャ!」とテンパりながら尾で軽く叩いた。

帰還後、ミャウは英雄の食卓を訪れ、アルフレッドにブロッサムウルフの肉を差し出した。
「アルフレッド、これ、ブロッサムウルフの肉だよ。猫族の私は肉よりマタタビ茶が好きだけど…ガルドと一緒に狩ったんだ」と尻尾を振った。

アルフレッドは青い瞳を輝かせ、「おお、ムシュー・ミャウとムシュー・ガルド、これは珍しい食材だ! ブロッサムウルフの肉は、花のような爽やかな風味が特徴だ。ステーキにすれば、冒険者たちの胃袋を掴むよ。感謝する」と微笑んだ。

アルフレッドはその肉を調理し、英雄の食卓の新メニューとして提供。冒険者たちに大好評となり、1皿50ルミネ(Lum)で飛ぶように売れた。

エリクサに戻ったミャウは、雑貨屋クロノスの裏庭で成長促進剤を調合した。ブロッサムウルフの骨の粉、春華キノコ、花弁の結晶を混ぜ、魔法の触媒を加えると、ピンク色の輝きを放つ液体が完成した。
ガルドがそっと見守り、「ミャウ…俺、信じてるよ。きっと上手くいく」と少し声を低くして励ます。ミャウは小さなマタタビの苗木に促進剤をかけ、「これでいいよね?」と呟いた。

すると、苗木がみるみる成長し、数時間で立派なマタタビの木に育った。葉から甘い香りが漂い、ミャウは「やった! マタタビ茶がまた飲める!」と尾を高く上げて喜んだ。ガルドが「…よし、一緒に祝おうか」と手を差し伸べ、二人は木の下で初めての「二人きり」のティータイムを楽しんだ。

ミャウの頰がピンクに染まり、「…ガルド、ありがとう。冬の時より、なんか…ドキドキするニャ」とテンパりながら素直に漏らすと、ガルドは頰を赤らめて「それは…俺も、同じだよ」と優しく頷いた。二人の関係は、試走会の告白から、互いの弱さを認め合うパートナーへ少し深まっていた。

アリスが「ミャウ、すごいよ! これで店でもマタタビ茶を売れるね」と褒めると、デイジーが「成長促進剤、魔道具の技術に応用できるかも。植物の成長を加速するなんて、面白いアイデアだね」と目を輝かせた。
マカロン・ルミエールが「マタタビ茶、ルミエールの商会で扱えば、猫族の冒険者に売れるよ。ミャウとガルドのコンビ、いい宣伝になるな!」と緑の目を細めた。

試走会の成功を受け、アリスとデイジーは一般向けトレッドミルの開発に動き始めていた。デイジーが「貴族向けは高価すぎるから、ゴブリンウルフの革を使ってコストを抑えよう。一般の人にも走る喜びを届けたい」と提案した。

マカロンは「素材と工賃を考えると、1台5ソル(Sol)…つまり500ルミネくらいが妥当だ。魔法の杖(初心者用)が5ソルだし、トレッドミルはそれ以上の価値がある。冒険者なら手が届く価格だ」と提案した。デイジーも「その価格なら、品質を保ちつつ、一般の人にも手に届く範囲になるね。貴族向けは20ソルで売れたから、それより安くても十分利益が出る」と頷いた。

アリスは少し考え込み、「待って、個人向けの販売は考えなおそう。エリクサの住人の多くは2階以上の集合住宅に住んでる。トレッドミルは場所を取るし、騒音が問題になりそう。個人で買うのは厳しいかも…」と口を開いた。
アリスは皆の視線を集め、提案を続けた。
「トレーニング施設、たとえば冒険者ギルドの訓練所に売り込むのはどう? 何台かを無料で設置してもらって、利用料で回収するの。みんなが気軽に使えて、健康を広められるよ!」

デイジーが「いいアイデア! 訓練所のスペースなら、個人住宅よりぴったりだね。安全装置も強化して、みんなが安心して走れるようにしよう」と目を輝かせた。

マカロンは緑の目を細め、商会主らしい視点で考え込んだ。「アリス、面白いな。個人販売は確かに住宅事情でハードルが高い。ギルドの訓練所なら、冒険者たちの集客が見込める。無料設置で信頼を築いて、利用料で長期的に回収か…。1回の利用料は、2ルミネくらいが妥当だと思う。1日何回も使いたい冒険者には月額パック、例えば50ルミネで無制限とかもいいかもな。商会として、設置後のメンテナンス契約も提案して、安定収入に繋げられるぜ」と具体的に意見を述べ、皆を納得させた。

アリスは「マカロン、さすが! それならみんなが喜ぶし、トレッドミルがエリクサの定番になるよ。ギルドマスターに相談してみよう!」と意気込んだ。

その夜、雑貨屋クロノスの裏庭で、アリス、デイジー、マカロン、ガルド、ミャウはマタタビ茶を飲みながら未来を語り合った。工房の窓から花咲くエリクサの街を見ながら、アリスは微笑んだ。仲間たちと共に、新たな季節が待っていた。

    
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