サンダルで駆け抜ける異世界ライフ

medaka

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Season 2

第十話:雑貨屋クロノス、開店

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マラソン大会から2ヶ月、エリクサの朝は静かな活気に満ちていた。アリスはいつものようにジョギングに出た。心地よい風が頬を撫で、公園の小道を軽快に走る。魔法の花が朝露に輝き、遠くで市場の喧騒が聞こえる。エリクサンダルの成功で街は健康と絆に満ち、彼女の心も新たな夢で膨らんでいた。

街の中心部を走る中、アリスはふと足を止めた。古びた木造りの建物が目に留まった。かつて本屋だったらしい空き店舗は、埃をかぶりながらも可能性を秘めているように見えた。「これなら、私の夢が叶うかも…」と呟き、彼女は雑貨屋を開く決意を固めた。エリクサンダルの成功で得た資金を元手に、異世界の文化と健康を繋ぐ店を。

その夜、宿泊スペースでアリスは計画を練った。クロノスの鍵を手に、彼女は新たな冒険を予感した。鍵が金色に光り、壁に鍵穴が現れる。「来た…!」と呟き、財布をバッグに詰め、ポータルへ足を踏み入れた。  
目を開けると、そこは室町時代の京都だった。木造りの家々が立ち並び、石畳の道には着物姿の人々がゆったりと行き交う。市場から漂う茶の香り、遠くで響く三味線の音色が風情を添える。アリスは驚きながらも、異世界の美しさに引き込まれた。「ここは…?」と呟き、エテルニアで役立つ商品を探すため、足取り軽く歩き始めた。

市場は活気に溢れ、陶器、布地、刀が所狭しと並ぶ。アリスはまず茶屋に立ち寄った。竹の暖簾をくぐると、抹茶の香りが漂い、和やかな会話が聞こえる。彼女は一息つくため、畳に座った。
そこにいた商人が、好奇心に満ちた目で声をかけた。「おや、見慣れない顔だな。どこから来た?」
「エテルニアから来ました。この時代の商売に興味があって」とアリスは答えた。

商人は笑みを浮かべ、「面白い。何か仕入れるつもりか? 茶、刀、陶器が人気だ。だが、商売は商品を並べるだけじゃない。知恵が必要だ。」
アリスは興味をそそられ、「どんな知恵ですか?」と尋ねた。
商人は茶をすすり、語り始めた。「面白い話がある。将軍様が『屏風の虎が暴れて困る』と仰った。ある小僧が『捕まえますので、虎を屏風から出してください』と言い、将軍様が『出せ』と命じると、『出てくるのを待つしかありません』と答えた。将軍様はその知恵に感心された。」

アリスは笑い、「それ、一休さんの話ですよね?」
商人は頷き、「その通り。もう一つ話そう。『このはしをわたるべからず』と書かれた橋で、一休は橋の端ではなく真ん中を渡った。『はし』を『端』と解釈せず、真ん中を通った知恵だ。商売も同じ。顧客の意図を読み、価値を提供するんだ。」

アリスは深く頷いた。「人々の心を理解して、必要なものを届ける…それが商売の基本ですね。」
商人は続けた。「人を知り、商品を知り、自分を知ることだ。人とは顧客の心、商品はその価値と歴史、自分は強みと信用。たとえば、屏風の虎の話は、将軍様の真の問題を見抜いた知恵だ。君も、顧客が求めるものを考えなさい。」

アリスは決意を新たにした。「一休さんの知恵を活かし、顧客の心を理解して商売したい。エテルニアで役立つ商品を教えてください。」
商人は微笑み、「茶は心を落ち着け、陶器は美を、布は実用を、刀は力を与える。君の目で選べ。知恵と信用があれば、どんな時代でも成功する。」アリスは一礼し、市場へ向かった。  

市場は色と音で溢れていた。アリスは陶器の売り場で、青白磁の茶碗に目を奪われた。滑らかな白に淡い青が溶け、異世界でも愛される美しさ。10個を慎重に選び、「エリクサで喜ばれるはず」と確信した。
次に布地の売り場へ。1疋(約10メートル)の最高級染め布を選んだ。深紅と金の文様は、エリクサンダルの装飾や新たな商品に活かせそうだった。「これで豪華なアイテムが作れる」と呟いた。

最後に刀の売り場へ。美しい鞘に収まった刀が並ぶ。アリスは一振りずつ手に取り、刃の輝きと鞘の金細工に魅了された。「この刀、エリクサで注目される!」と一振りを選んだが、予算が足りない。

彼女はエリクサンダルを差し出した。「代金の一部にこれを。エテルニアの特別な靴です。」商人は興味深く見て、「珍しい履物だ。高く売れる。よし、刀はこれで」と頷いた。アリスは茶碗、布地、刀を包み、クロノスの鍵が光るのを待った。  

◇◇◇


エリクサに戻り、アリスはルミエール商会へ向かった。マカロンが迎え、彼女の計画を聞いた。「雑貨屋? 面白い! 異世界の商品なら商売が広がる。どんな商品だ?」
「室町時代の陶器、布地、刀。それに、日本風のお菓子や健康食、手芸品を考えています」とアリス。マカロンは目を輝かせ、「いいな。資金と協賛は私が調整する。店の改装も手配しよう。」

次に、英雄の食卓でアルフレッドに相談。「雑貨屋か! 食事と健康は商売に欠かせない。開店パーティーで料理を出し、商品に合うメニューを考えよう。」彼はエリクサメイト(3~5ルミネ)を手に、「これを主力商品にどうだ?」と提案。

アリスは頷き、新商品の乾燥海藻を思いついた。エリクサは海から遠いが、日本の乾物屋の知識を活かし、昆布のような海藻を出汁用に。「これで料理に風味を!」と意気込んだ。  

開店準備が始まった。アリスは空き店舗を改装し、前部を商品展示エリア、後部を住居スペースに。室町時代の商品用に木製の棚を設け、魔法のランタンで照らした。商品戦略も練った。陶器と刀は高級品、エリクサメイトは冒険者やランナー向け、乾燥海藻は料理人向け。ロープ、ランプ、バックパックはバンドル販売で冒険者に訴求。エリクサンダルは定番商品として継続。

開店パーティーは盛大に計画。アルフレッドが抹茶風のドリンクや海藻スープを用意し、マカロンが協賛者を集めた。アリスはパーティーでクロノスの鍵の物語を語り、異世界の商品を紹介するつもりだった。  

開店の日、店は魔法の花の飾りで彩られた。アリスは緊張しながら笑顔で叫んだ。「ようこそ、雑貨屋クロノスへ!」扉が開くと、青白磁の茶碗、輝く刀、鮮やかな布地が並び、エリクサメイトと乾燥海藻が香る。アルフレッドの料理が会場を盛り上げ、冒険者が「エリクサメイト、遠征に最適!」と買い、料理人が「海藻の出汁、革命的だ!」と驚く。エリクサンダルと限定カラーも注目を集めた。

初日は大盛況。住民が異世界の文化に触れ、笑顔が溢れた。アリスは客の反応を見て、商人の言葉を思い出した。「人を知り、商品を知り、自分を知る。」彼女は顧客の心を理解し、価値を提供できた。  


夜、店を閉め、アリスは商品を整理した。クロノスの鍵を手に、次の仕入れを思案する。陶器は追加で、布地で新商品を、刀は冒険者向けに。エリクサメイトと海藻はさらに改良を。彼女は呟いた。「私がこの世界でできること…異世界の知恵と絆を繋ぐこと。」クロノスの宝物庫は、彼女の新たな冒険の拠点だった。その夜、鍵が微かに光り、次の旅を予感させた。アリスは新たな夢に胸を膨らませ、眠りについた。  
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