悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第一章 悪役令嬢は動き出す

8.悪役令嬢は更なる商品を提案する

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 この世界のこの時代には様々なソースが既に存在していた。

 豚……というか猪みたいなボア系の魔獣や牛のようなビッグホーンという魔獣の肉がメジャーであり、肉を焼く時に出る血や油を使った、前世でいうグレービーソースやハーブと油を混ぜたソース。後は数日間野菜を煮込みドロドロにした物にハーブを混ぜたソースなどがあった。

 香辛料が非常に高価なので、王家でも晩餐会などでしか香辛料を用いた料理は出ないといわれるほどに普及していないし、普及させるには高すぎる代物だった。

 胡椒が本当に高価なんだよね。比較的安価で手に入るのはバジルみたいなハーブ類や山椒あたりで、公爵領の山奥付近ではワサビ――んー、ラディッシュに近い感じの物。調味料だと、海岸沿い塩田を古くから運営しているので公爵家では塩に関しては自由に使える。

 豆類も豊富なおかげで、大豆を使った商品も検討可能だ。これで醤油、味噌にも手を出せる気がする。

 酒類は葡萄酒、蜂蜜酒が一般的ではあるけど、麦の流通が多いことを考えるとビールなんかも作ってそうではあるんだけど、無いっぽいんだよね。噂では西方諸国では米が栽培されているらしいので、そちらもなんとか手に入れて研究したいところ。

 そんな事を考えている間に、皆はマヨネーズを色々な食材に付けて食べながら、意見を交わしていた。

「やはり、味付けされていない葉物との相性はよいけれど、山菜とは合わないわね」

 これはお母様の意見だ。葉物野菜には合うけど、灰汁や癖が強い山菜にはイマイチなのは実験過程で分かっている。

「お母様、こちらもお試しになって頂けますか?」

 と、私はゆで卵とマヨネーズを和えた小鉢をお母様に勧める。

「卵……ですか?」
「はい。茹でた卵にマヨネーズ、塩などを足して混ぜ和えた物です。葉物野菜の上に乗せて食べたり、パンに挟んで食べても美味しいです」
「……なるほど。これは……様々な可能性を秘めているようですね」
「ええ、炒め物を作る時に調味料として使う事も出来ると思います」

 私がそう言うと、既に料理長が事前に作っている物を小皿にとりわけ、テーブルに並べる。

「お嬢様の指示でこちらを……」

 今回はアスパラガスに似た野菜をマヨネーズで和え、バターで炒めた物になる。

「食が豊かになるというのは素晴らしいな。このマヨネーズは王都でも売れるのではないか?」

 お兄様がそう言って美味しそうに食べつつ、から揚げの皿からさらに幾つか取って口に運んでいる。

「残念ながら、輸送面を考えると厳しいと言わざるを得ません」

 と、私が言うと皆の視線が私に集まる。小さく息を吐いてからその理由を話す。

「残念ながら、常温での保存ではそこまで日持ちしないのです。氷室を持つご家庭となると、かなり限られた者という事になります」
「それは確かにだな。王都には氷室と同じ効果を生む魔道具を研究している者がいたハズだが、うまくいっていないようだしな」

 それに関しては私も既にダナンから聞いている。魔道具は簡単に言えば魔法の効果を込めた魔石を利用した道具で基本的に一つの事しか出来ないと考えられている。冷蔵庫や冷凍庫を作ろうと思うと、氷を作り出して箱の温度を下げ、それを維持することが必要になる。私もまだ理解は出来ていないけど、この世界には魔法と魔術に理論が分類されていて、魔法は様々に融通が利き、効果も高い。代わりに制御が難しく、術者の能力に依存される。魔術は術式を基礎に構築され魔法と似たような効果を齎す仕組みで魔法に比べて必要な魔力量が少なく術者の能力より術式の完成度が優先される。

 魔道具を作る時は魔法ではなく、魔術を使用するのだけど、ひとつの術式で使用できるのは一つの魔法で、魔石に込めれるのも一つ。そこをどうにかしないと、先へは進めない。と、いうのが現状らしい。

「私、この2年の間、お勉強にもかなり力をいれてまいりました。そして、魔法……いいえ、魔術に関して気が付いたことがあるんです」

 と、言って私は傍に控えていたエルーサに視線を向けると、エルーサはひとつの箱をテーブルに静かに置いた。

「これは?」

 お父様が不思議そうにその箱を見つめる。

「これは新しい商品を小型にしたサンプルです」

 と、言ってニヤリと笑って見せた。
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