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第一章 悪役令嬢は動き出す

37.悪役令嬢はゲームの時系列を共有する

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 『とにキラ』の1作目と2作目は同時期の別の国が舞台となっている。正確にはミストリアの隣国であるスーリアルが舞台で隠しルートでは1作目のキャラが少しだけ登場するサプライズ付きの良作だった。

 ちなみにリメイクのDLCでは脇役で2のキャラがチラりと登場するシーンがある。ただ群衆のスチルにいるってレベルの内容だったので、分かる人には分かる的な演出になっていた。

「ウィンディ様、3の時代設定と舞台を教えて頂けますか?」
「は、はいっ。ただ……実際のゲームは未プレイなのですが、一応、設定だけはチェックしたので覚えています。3は1と2のように隣国というわけではありません。3作目は内容も章立てになっていて、ゲームパートも前半は学園モノ、後半はシミュレーションと以前の作品より凄くお金の掛かったゲームになっていたみたいです。因みにその時、凄くお金が無かったので泣く泣く買うのを止めた記憶があります」
「それは災難だったわね。私もそういう経験あったわ」

 と、アリエル。ウィンディ嬢は小さく苦笑して息を整えてさらに口を開く。

「舞台設定の方ですが、聖イーフレイ帝国とその周辺地域が舞台となっているんですよね。前半の学園編では帝都の学園で仲良くなった相手の国へ後半所属することになって、他のキャラが所属する国との戦いにそうです」
「ハーレムエンド絶対許さないマンがいたみたいね」
「あー、何となくわかります。同じプロデューサーなんですよねソシャゲ。どのタイミングか忘れましたけど、配信でハーレムエンド嫌いだから絶対にやらない的な話をしてましたよ」
「配信でいうのはちょっとダメ系プロデューサーじゃない?」
「まぁ、そうですね。正直、私もあの人は人としてどうかと思います」

 アリエルとウィンディ嬢は脱線しつつも楽しそうにしている。が、正直、プロデューサー云々の話など別に聞きたいわけじゃない。

「脱線しているわ。続きをお願い」
「あ、えっと、すいませんっ。実はそれ以上のところはネタバレ情報を掴みたく無かったので情報持ってないんですよね。あ、でも……噂では本当に後半の後半で東側の国から魔王が攻めてくる的な話になるらしい……ですけど、本当かどうかは分からないです」

 東の国から魔王が攻めて来るのね。一応、確認はしておいた方がいいかなぁ。

「ウィンディ様。ソシャゲの設定は3作目の後という話でしたわよね?」
「そうなんです。舞台は聖イーフレイ帝国に新たに造られた学園がはじめの舞台なんですけど、既に魔王は打ち取られた後の世界だったハズです」
「攻めてきた魔王は侵攻に失敗したのね」
「それがですね……帝国まで攻めてきて周囲の国は魔王の国となっていたらしいです。その後、現れた英雄達によって魔王の圧政から解放された……的な話だったと思います」

 やっぱり、そういう事なんだろうなぁ。この国のシステムがようやく分かったわ。王家がいるのに王国じゃない。各国は帝国から自治権を委任されている令制国りょうせいこくなんだ。そもそも、魔王もその仕組みに従っているハズで、そうじゃないと聖イーフレイ帝国は滅ぼされていないとおかしい。

 これに関してはリンリィ嬢は気が付いているかもしれないわね。と、私が視線を向けると彼女は静かに頷いた。

「ねぇ、エステリア。なにリンリィと分かったような雰囲気出してるのよ……」

 アリエルが少し不貞腐れたようにそう言った。ちょっと不貞腐れた感じは可愛らしいと思ってしまい、思わず笑ってしまう。

「何よぉ、笑うことないじゃない」
「ごめんね。ちょっと子供っぽいと思っただけよ」
「って、酷いわね。……と、いうか私達大概子供よ」

 おお、確かにそうだった。ハッキリ言って七歳の子供達が集まって何の話をしてるんだ。と、いう感じではある。多分だけど、監視している保護者達も目を回しているかもしれないわね。

「で、説明してよ」
「はぁ、仕方ない王女様ね。私が疑問に思ってた事をまず説明するわ」
「はーい、お願いしまーす」

 と、アリエルは子供っぽく言った。あざといな……などと思いつつ全員の視線が私に向き、私は一呼吸置いてから話し始める。
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