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第二章 悪役令嬢は暗躍する

55.悪役令嬢はお出かけ先の話を聞く

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 実のところ、お出かけ先に関しては事前にお父様から資料を頂いているので、地形や確認されている魔物などは大まかには把握済みだ。でも、何度も狩りに出向いているウィンディ嬢から話を聞くことは資料には見えてこない気付きがあるかもしれないのだ。

「まず魔導洞窟ダンジョンの名称ですが、クラスタリアム魔坑道です。元々は鉱山だったのですが、魔導洞窟ダンジョン魔核コアが見つかり事故かどうかはわかりませんが、魔核コアが起動され鉱山が魔導洞窟ダンジョン化した場所になります」

 未だに魔導洞窟ダンジョン内では鉱山として採掘が行なわれているらしい。魔導洞窟ダンジョン化して魔物が出てくる危険な場所で採掘なんてリスクが高すぎる気がするのだけど、リンガロイ伯爵家恐るべし。

「出現する魔物はラットや蜘蛛等の魔物とスケルトン等のアンデットが中心です。上層ではあまり魔物がいないので、今回は上層の探索がメインになると思います」

 その辺りは当然よね。初めての魔導洞窟ダンジョンアタックになるわけだからね。因みにすでに冒険者登録は王都の冒険者ギルドにて済ませてある。


「リンガロイ伯爵領にある魔導洞窟ダンジョンには街を形成しているものが3つあって、その一つがクラスタリアム魔坑道ですが、ここは特に上層部分は鉱山としても使えるようにかなり人の手が入っていますから、本当に初心者向けの魔導洞窟ダンジョンだと思います」
「因みにだけど、ウィンディはどこで狩りをしていたの?」
「わ、私の場合は領都にあるガルファロイ大洞窟です。あそこも上層は初心者向けといえる場所ですからね」

 確かにそれは資料にもあったので知っているけれど、ウィンディ嬢は中層から下層に掛けて魔導洞窟ダンジョン探索をしていると記載があった。冒険者ランクは【銀】だと聞いているけど、資料には【金】相当ではないかとあった。ポジションは前衛か攻撃役で得意なのは身体強化系の魔法だ。私は後衛の支援・回復で動くつもりだけど、余裕があればを使って援護射撃ね。アリエルは純粋な攻撃役だから、ウィンディ嬢には前衛を頼むのが一番よさそうね。

「クラスタリアム魔坑道での注意点は?」
「あ、はい。上層は整備されているので、そこまで注意が必要というわけでは無いですけど、元々鉱山だったので、細かい坑道があって時折ですが足元が崩れることがあります」
「因みにウィンディはどこまで行ったことがあるの?」
「えっと、中層までは事前に回ってきました。虫系の魔物が結構いるので、そこが注意どころですね……見た目がアレなのと、糸や粘液みたいな罠を作っていたりするので」

 虫が平気かどうか――が、ポイントになってきそうね。ちなみに蜘蛛は平気なんだけど、芋虫とかはダメよね。あ、蛇とかもダメね。でも、魔物ってそういうのが結構いるハズよね。

 アリエルは大丈夫かしら? と、彼女の方に視線を送るとどちらかと言えば冒険に期待を抱いているって感じだった。と、いうかちょっと前のめりになりすぎじゃない?

「なんだか、凄い楽しみだわ。でも、魔導洞窟ダンジョンって狭いわよね? 魔法とかの種類ってある程度制限されるものなの?」
「そうですねぇ。広域系の魔法は使わない方がいいと思いますよ。そういえばアリエル様は属性的にはどれが得意なんですか?」
「んー、身体強化と炎、雷……後は風かなぁ」

 と、言うとウィンディ嬢は驚きの表情を浮かべる。あら? アリエルは不得意な属性が無いのを知らないみたいね。そもそも魔法においては魔力のある人間は基本的に全ての属性を扱う事が出来るけど、得手不得手みたいなのがある。普通は一つの属性が得意で他はそこまでか、もしくは扱うのが苦手な属性が幾つかあるようなパターンだ。

 因みに魔術理論を理解していくと、属性という考え方が少し変わってくるのだけど、そこに関してはお母様からまだ誰にも話してはいけないと言われている。

「でも、結局のところさ。私達が好き勝手出来る感じではないよね? 凄腕の護衛も来るって話だしさ、どのあたりが判断ラインなんだろう?」
「普通に考えたら、危険な事はさせないだろうから、お膳立てされた獲物を狩る的な感じじゃない?」
「それはあんまり面白くないわね」
「はじめは仕方ないんじゃない? ある程度、実力が分かってきたらそれに合わせてくれると思うわよ」

 今回は魔導洞窟ダンジョン体験という感じでしょう。それでも異世界に転生して初めての冒険なのだから、楽しみなのは仕方ないわよね。
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