悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第二章 悪役令嬢は暗躍する

69.悪役令嬢は暑苦しい兄妹を拾う

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「本日は御前を失礼致します」

 と、私は言うとクリフト殿下は鷹揚に顎で去れと控室の扉の先を示した。私は臣下の礼を儀礼的に行い、素早く、そして優雅に去ることにした。因みに殿下は冷たい表情を崩さずに感情を見せないようにしていたけれど、舌打ちしたい気分みたいな雰囲気を出していた。

 なんだか、あからさまに嫌われているのも気分が良いものでは無いんだけど、これから学園生活も始まるわけで殿下と会う事も増えるのに私は耐える事が出来るだろうか? うーん、癒しが必要よね。

 そんな事を考えながら王城の廊下に出るとエルーサがスッと私の後ろに付く。

「ご苦労様で御座いました。離宮の方で姫殿下がお待ちで御座います」
「アリエルが? 一体、何かしら?」

 私は仕方ないな。と、思いつつ離宮の方に向かって歩を進める。すると、途中で私を待つ者達がいた。

「あら、グラファス侯爵のご兄妹じゃありませんか。どうされたのです?」

 すると、彼らは臣下の礼を取る。その所作は非常に美しく思わず息を飲んでしまう。脳筋だと思っていたけれど、こういう所作とかには拘りを持っているのかしら。

「面を上げて下さい。私に臣下の礼は不要です」
「いいえ、私達は王家に使える騎士であり、王位継承権を持っている者に対する礼というのも知っているつもりで御座います」
「兄の言う通りで御座います。それに私の主は貴女だと決めております!」

 うん、やっぱり思考回路は脳筋系なのね。まぁ、ここで彼らを味方にしておくのは悪くない話だけど、出来ればアリエルの騎士になっておいて欲しいところよね。

「残念だけど、私にグラファスの剣は必要としていないわ。これから私に着いて来てください。もっとも貴方達に相応しい人物がいるわ」

 そう言って私は彼等の先を静かに歩いていく。正直言って現状の実力だとエルーサの方が強いし、私はもっと強いのだ。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 離宮の入口に入ろうとすると、グラファス兄妹が声を上げた。

「お、お待ちください。こ、こちらは……」

 私はニッコリと圧を掛けて黙らせる。そして、近衛騎士に挨拶をして中へ入っていく。

「あら、遅かったわね――って、おまけが付いてるんだけど?」
「そういうアリエルも、なんだが色々と人が多いわね」

 待ちくたびれと言わんばかりのアリエルの後ろには数人カチコチに緊張している者達もいる。うーん、私の取り巻きちゃん達は可哀想ね。ファルリオ君とマリーは隣同士で座ってイチャついてるし――爆ぜろ、とか思わなくもないけど――ファルリオ君は私に気が付いて立ち上がり、それに続いてマリーも立ち上がり、私の方にやって来る。

「エステリア様、先程はクリフト殿下の機嫌を害してしまったようで、申し訳ありません」
「気にしなくてもいいわよ。マリーも婚約おめでとう」
「あ、ありがとう……」

 くっ、嬉しそうにしやがっ――落ち着け私。今後の計画を考えるとマリーとファルリオ君が上手くいっている方がいいのだから。

「ホント、ラブラブで困る。私の部屋にピンクのオーラを解き放つのは止めて欲しいところね。ま、冗談だけど。仲が良いのは本当にいいことよ。とりあえず、後日にアンネマリーから根掘り葉掘り聞かせて貰うつもりだから覚悟しておいてね」

 アリエルがそう言うとファルリオ君は苦笑しながらも、どこか嬉しそうに微笑んだ。ま、私はマリーから色々と聞いているので、再度聞くのは胸焼けしてしまいそうなんだけど。

「で、グラファス侯爵のところのマルコと――ルアーナだったか。エステリア、どういう事か説明して貰える?」
「ええ、こちらに向かう途中で挨拶をされたの無理に連れてきたわ。それにルアーナは私を主とするよりもアリエルに付いた方がいいと思ってね」

 敢えてマルコの名は出さずにルアーナだけを推す。これにはちゃんと理由がある。マルコはそもそもグラファス侯爵からクリフト殿下に付けと言われているハズだからだ。これからしばらくは派閥的にクリフト殿下と私が婚約者として存在する間はアリエルとの力関係がクリフト殿下側に傾き過ぎる。

 回避するなら見た目だけでもマルコとルアーナはクリフト殿下、アリエルと別れて仕えた方がいい筈だ。

「なるほどね。ルアーナ、私の元に付くので問題ないか?」
「ハッ、身命に変えましてもアリエル殿下に仕えたく思います」
「分かった、その旨、我が母にもグラファス侯爵にも伝えておこう」
「あ、あの――」

 と、マルコが不安そうな表情を浮かべて声を出した。

「マルコは侯爵から兄上に付けと言われているのであろう?」
「は、はい……そうで御座います」
「うむ、だが――私と敵対する必要も無い。それはグラファス侯爵家が最も分かっていると思うのだが?」

 王女モードのアリエルは幼い女王キャロラインという風な威圧感だ。ここ数年で随分とモード切替出来るようになって偉いぞアリエル。

 ちなみにグラファス侯爵家はバリバリの保守派というよりも王族派で王に忠誠を誓う騎士の代表といった立ち位置だ。誰がどの派閥に近しい者が上に立ったとしても、その王に付き従うことを由しとする脳筋一族だ。なので実は派閥争い的な部分からも特別枠扱いされているが故に、今いる立太子候補の二人の内、どちらかに偏るような事が起こる方が私達的には困るのだ。

 ただ、兄妹で敵対関係となる可能性も考慮はしておかないといけないので、出来るだけ平和的解決を目指すところではある。

「わかりました。私はクリフト殿下に付くように致します。アリエル王女殿下、妹をよろしくお願いします」
「ええ、私の手足として存分に働いて貰いましょう。今日のところは帰るといいわ。貴方達の家の人達も心配するでしょうし、キチンと話は通しておくから近々連絡が行くと思って待つといいわ」
「ハッ! それでは我々は失礼致します」

 そう言って、グラファス兄妹は去って行く。それを確認してから、アリエルはボソリと呟いた。

「暑苦しい一族よね」

 それは仕方ない。昔から戦となれば先鋒、撤退となれば殿を自ら名乗り出るくらいに脳筋一族なのだから、その熱量は半端ないハズだ。でも、ミストリア内で王家に対しての忠誠心で言えばどの家にも勝ると言っても過言ではない。それは過去の資料などにも書かれているし、お母様もあそこは暑苦しい人達だと幾度も言いながらも、王家に対しての忠誠心だけは本物だから、上手く使わなければいけないと話していた。

「ともかくよ。ここに集まった者達でお茶会の二次会をしたいなって思ってたのよ」

 と、アリエルは悪戯っぽくそう言った。
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