悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
82 / 314
第二章 悪役令嬢は暗躍する

82.悪役令嬢の男親達の密会

しおりを挟む
「公、私は娘達を使って情報を得るというのは……違うと思うのです。いや、手段としてするなと言っているわけでは無いのです。ただ、危険な勢力争いに子供達を巻き込むのが心苦しいだけなのです」

 そう言ったのはスティーブ・リンガロイ伯爵だ。彼は熊のような見た目だが、心優しい男なのは知っている。当然、彼はそう言うだろうというのも想定済みだ。

「スティーブ。そういう心配より、子供を魔導洞窟ダンジョンに連れて行く方が危険ではないのかね?」
「い、いやぁ、それを言われますとね? 我が共にすれば危険など微塵も無いのですが……」
「君の娘は随分深いところまで狩りに行くらしいね。私としてはそちらの方が危険だと思うよ?」
「しかし、今の派閥争いは裏で色々と動いている奴らのやり口があまりにも陰険じゃありませんか。公だって公の奥方様も幾度も命を狙われているのは私が一番分かっている」

 そういうのは私が彼女と出会う前からあまり変わっていない。常にさらされている危険だ。しかし、娘達は勝手に色々としてくれるが故に守る為には巻き込む方が動きが見えて楽なのだ。この男は何度説明しても分かろうとしない脳筋族だからなぁ。まぁ、彼が色々な場面で護衛に付くと楽なのも事実で私やランパード閣下の護衛といえば彼を招集すると仕事が本当に楽に片付く。

「君の心配は最もだけどね、私としては見えるところで動いてくれる事が重要なのも幾度も話をしているだろう。何かね? 君の例のが告げているのかい?」
「いや、そういうわけじゃないですがね。まぁ、公の姫様や王女殿下は逸脱しているとは思ってますが、それでもら姑息で執念深い事を考えると、やはり心配になりますよ」

 そう言ってスティーブは手に持ったグラスの中身を飲み干し、喉から酒精のこもった息を吐いた。良い酒なのだが水の様に飲むのは止めてくれないかな。そんな事を思っていると黙って酒を楽しんでいたオールバックの真紅の髪に随分と白髪が混じって来た印象のキザ野郎が口を開く。

「なんにしても――彼を止める手立てを考える必要はありますね」
「残念ながら、リブロス卿。我には無理だからな。アレは狡猾だ。尻尾など見せないし、多くの尻尾を持っておるからな、ただの尻尾切りになってしまうのは明白だ」
「当然、そんな事は分かっている。卿の苦手分野だということは知っている。我々の付き合いは長いのだから、改まって言われてもな。ウィングレーとしては先にどこを抑えに掛かるのが正解と思っている?」

 いつもながら、キザっぽい幼馴染の動きにイラつきながら考える。とにかく、情報を広げるところ押さえるところは明確にしておかなければいけない。

「継続して考えねばならない問題は大きく二つ。ひとつは外部勢力、もう一つは例の過激派の件だ。当然、妻達も動いている。我々が表に立つ場合と裏で動く場合の取り決め含め、どこまで根を張るかも」
「西方諸国では随分と教会が力を伸ばしている。ハッキリ言って、調査を始めた頃より比べたら数倍以上の勢いだ。逆に神殿は裏で協力を取りつけれそうだ。帝国側でも色々とあるようだからな」

 幼馴染のキザ野郎はこういった仕事に関しては国内で右に出る物はほぼ居ない。リブロスの奴も縁を結びたいと上手く動いたみたいだ。っつーか、リブロスの息子とキザ野郎の娘は随分と仲が良いという話だな。我が愛娘が、よく分からないが爆ぜろと言っていた。

「とりあえず、これからも派閥争いについてはを牽制出来る状態を保つのと、外的要因を排除するだけである程度は解決する」
「しかし、外的要因といっても、教会とイスパスやブリタスの連中を抑え込むのは今の国府連合じゃ無理だし、元々天帝は動けない。ミストリア内だけでも……とは思うが、貿易などの面でも可能な範囲というのはある程度限られてくるぞ?」
「わかってはいるが、ある程度という状態でもいいんだ。多少貿易などで痛手を喰うかもしれんが、国を荒らされるよりはマシだ」
「交易で一番流入が激しい我々がもっとも痛手を喰うわけだが、致し方ないか……」

 そう言って彼はキザったらしく、グラスに入った酒を煽った。私も同様にグラスに入った酒を呑み干し、新たな瓶を手にする。

「そういえば、我が愛娘から新作を貰ったのを忘れていたよ」

 と、その場にいた全員からの羨望のまなざしが私の手にする酒瓶へ集まるのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!

くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました! イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。 あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!? 長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!? 二人共あの小説のキャラクターじゃん! そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!! へっぽこじゃん!?! しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!? 悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!! とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。 ※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。 それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください! ※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい ※不定期更新なります! 現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...