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第二章 悪役令嬢は暗躍する
83.悪役令嬢と辺境伯の商談
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私はディルヘルト・セイス・ティルムス・クーベルト。人はクーベルト辺境伯と呼ぶ。実際の爵位は侯爵なのだが、その辺りは色々と複雑な事情がある為に辺境伯でよしとしている。因みに人にはよく老けていると言われる事がある。非常に不快なのだが、私はまだ十代後半なのだが何故か二十代そこそこだと言われたり、場合によると三十代だと勘違いされる。正直、全く持って分からない。
それはいいとして、私が上級冒険者『黒狼』である事を知る者は少ない――我が家の一部の者達と、女王と王配である我が年の離れた異母兄であるランパード、ハーブスト公爵の妙な友人達と、アリエル王女殿下、リンガロイ伯爵の娘ウィンディ嬢、そしてハーブスト公爵令嬢であるエステリア嬢だ。
そして、近年は月に一度、必ずハーブスト公爵家へ『黒狼』として訪れるようにしている。目的は色々とあるが、名目上はハーブスト公爵家で開発された武器のメンテナンスだ。
通された客間で最近、巷で流行り出している『紅茶』なるお茶の香りを楽しみつつ待っていると扉が開き、公爵夫人であり、女王キャロラインの双子の姉であるステファニー様とその娘で、私にあの面白い武器を与えてくれた少女エステリア嬢が入ってくる。
「お待たせしました。『黒狼』殿もお元気そうで」
「ステファニー様もいつもながらお美しく。エステリア嬢も本日も輝いておられる」
「『黒狼』殿、そこらかしこでそういう事を言っているのではありませんよね?」
「いえいえ、私は無骨物にてそんな事はありませんよ」
と、ステファニー様には妙に冷たい視線を浴びせられてしまう。うむ、難しいことこの上ない。それにしても、まだ10歳とは思えないほどに美しいエステリア嬢もクリフト殿下と婚約なされたとか……世の中、アレよな。いかん、冷静さを失ってはいけない。
「『黒狼』様、いつものことですが……」
「ああ、お願いする」
私は傍に置いていた例の武器が入った箱をテーブルに置く。それをエステリア嬢が箱を開け、中の物を手にする。
「いつもながら、扱いが荒いですわね」
「すまないな。どうしても剣の代わりに攻撃を受け止めてしまうクセがあってね。それでもガタが出ないところ考えると非常に扱いやすい武器だと、本当に感謝しているよ」
エステリア嬢は私の武器の扱いが悪いといいながらも、楽しそうにしているので怒られているわけでは無いようだ。それにしても、私の戦闘スタイルに非常に向いている武器に逆に使えなくなった時が大変そうだ。
「前回預かった物をお返ししますね。今回の物は強度面も強化しておきましので……」
と、彼女はテーブルに箱を置き、開けるとその中身を私に渡してくる。私はそれを受け取り、手に持つと以前の物より重量感が増したような気がして銃身を手で触りながら物を確かめる。
「まさか、魔白金で銃身が造られているのか……いや、しかし、これではとんでもない価格になるのでは?」
「か……ん、んっ、『黒狼』様が持っている剣と同様に魔白金を使わせて頂きました。当然、価格的には随分とお高くなりますけど、そこは気にしなくても問題ありませんわ。これによって魔法触媒としても使用可能です。逆に『黒狼』様の戦い方ですと、記憶できる種類より、記憶できる術式の大きさを主軸にしております。超級までの術式を記憶できるようにしてます。ただ、銃弾が専用になりますので、こちらのポーチの物をお使いください」
彼女は今までのポーチより随分と小さくなった物をテーブルに置く。少し前から気が付いてはいたのだがポーチと中身の量が全く噛み合っていないのだが、それがどういった仕組みなのかさっぱり分からない――いや、予想は出来ているのだが、それを口に出してよいのか分からないというのが正確だ。
「『黒狼』殿。ここでは口にしても問題ありませんよ。ただし、外では絶対に知られぬように」
と、ステファニー様はニコリと微笑み言った。その圧は女王などよりも、どちらかと言えば天帝様を前にするほどのモノで、私は思わず身を固くする。
「お母様、『黒狼』様が固まってしまわれましたわ。話したくとも話せないのではありませんか?」
「あら、まだまだ精進が足らぬようですね」
「も、申し訳ない……と、いうか、これはもしかして空間魔法が付与されているのですか?」
私の言葉に二人は似たような微笑みを浮かべて揃ったようにお茶に口をつける。
なるほど、沈黙が答え。私の想像に任せるということか……と、いうか彼女達の扱う魔道具は既に【失わし遺産】の域を超えている。色々とヒントをエステリア嬢から貰っているが、私の思う答えが合っているかは未だに分かっていない。
「因みに、今回の銃弾は1発あたり、金貨100枚。3千発用意しております」
「金貨30万枚――して、支払いは如何様にすればよいでしょう?」
ひと月で使用する弾数を考えてもあまり余裕は無い……が、威力や素材の値段も含めれば確かに高くは無い。しかし、中々の出費となるな。銃自体の借款が無いだけマシとも言える。魔白金は魔法金より価格が圧倒的に高い。それを使った武器は1本で城がいくつも建てれるほどだ。
それ以上に、この付属のポーチは隠蔽しなければいけない物だ。まさかの空間収納とは……なんとも、胃が痛くなるな。
「支払いはいつものように、魔導洞窟での素材や魔石の提供と武器使用のレポート提出をしていただければ」
「了解した。今回、前回の支払いについては冒険者ギルドの方に割符を出していただければ指定額を預けているので、回収いただければ」
と、私は割符をテーブルに置く。それをステファニー様が受け取り「確かに」と、彼女はそれをメイドに渡し「いつものように」と、だけ言った。
「そう言えば、以前にエステリア様から出されていた宿題の答えなのだが、これから答え合わせをお願いしても良いだろうか?」
私がそう言うと、二人は視線を合わせてから楽しそうに「是非に」と、少女の様に――いや、一人は確実に少女なのだが――微笑んだ。
それはいいとして、私が上級冒険者『黒狼』である事を知る者は少ない――我が家の一部の者達と、女王と王配である我が年の離れた異母兄であるランパード、ハーブスト公爵の妙な友人達と、アリエル王女殿下、リンガロイ伯爵の娘ウィンディ嬢、そしてハーブスト公爵令嬢であるエステリア嬢だ。
そして、近年は月に一度、必ずハーブスト公爵家へ『黒狼』として訪れるようにしている。目的は色々とあるが、名目上はハーブスト公爵家で開発された武器のメンテナンスだ。
通された客間で最近、巷で流行り出している『紅茶』なるお茶の香りを楽しみつつ待っていると扉が開き、公爵夫人であり、女王キャロラインの双子の姉であるステファニー様とその娘で、私にあの面白い武器を与えてくれた少女エステリア嬢が入ってくる。
「お待たせしました。『黒狼』殿もお元気そうで」
「ステファニー様もいつもながらお美しく。エステリア嬢も本日も輝いておられる」
「『黒狼』殿、そこらかしこでそういう事を言っているのではありませんよね?」
「いえいえ、私は無骨物にてそんな事はありませんよ」
と、ステファニー様には妙に冷たい視線を浴びせられてしまう。うむ、難しいことこの上ない。それにしても、まだ10歳とは思えないほどに美しいエステリア嬢もクリフト殿下と婚約なされたとか……世の中、アレよな。いかん、冷静さを失ってはいけない。
「『黒狼』様、いつものことですが……」
「ああ、お願いする」
私は傍に置いていた例の武器が入った箱をテーブルに置く。それをエステリア嬢が箱を開け、中の物を手にする。
「いつもながら、扱いが荒いですわね」
「すまないな。どうしても剣の代わりに攻撃を受け止めてしまうクセがあってね。それでもガタが出ないところ考えると非常に扱いやすい武器だと、本当に感謝しているよ」
エステリア嬢は私の武器の扱いが悪いといいながらも、楽しそうにしているので怒られているわけでは無いようだ。それにしても、私の戦闘スタイルに非常に向いている武器に逆に使えなくなった時が大変そうだ。
「前回預かった物をお返ししますね。今回の物は強度面も強化しておきましので……」
と、彼女はテーブルに箱を置き、開けるとその中身を私に渡してくる。私はそれを受け取り、手に持つと以前の物より重量感が増したような気がして銃身を手で触りながら物を確かめる。
「まさか、魔白金で銃身が造られているのか……いや、しかし、これではとんでもない価格になるのでは?」
「か……ん、んっ、『黒狼』様が持っている剣と同様に魔白金を使わせて頂きました。当然、価格的には随分とお高くなりますけど、そこは気にしなくても問題ありませんわ。これによって魔法触媒としても使用可能です。逆に『黒狼』様の戦い方ですと、記憶できる種類より、記憶できる術式の大きさを主軸にしております。超級までの術式を記憶できるようにしてます。ただ、銃弾が専用になりますので、こちらのポーチの物をお使いください」
彼女は今までのポーチより随分と小さくなった物をテーブルに置く。少し前から気が付いてはいたのだがポーチと中身の量が全く噛み合っていないのだが、それがどういった仕組みなのかさっぱり分からない――いや、予想は出来ているのだが、それを口に出してよいのか分からないというのが正確だ。
「『黒狼』殿。ここでは口にしても問題ありませんよ。ただし、外では絶対に知られぬように」
と、ステファニー様はニコリと微笑み言った。その圧は女王などよりも、どちらかと言えば天帝様を前にするほどのモノで、私は思わず身を固くする。
「お母様、『黒狼』様が固まってしまわれましたわ。話したくとも話せないのではありませんか?」
「あら、まだまだ精進が足らぬようですね」
「も、申し訳ない……と、いうか、これはもしかして空間魔法が付与されているのですか?」
私の言葉に二人は似たような微笑みを浮かべて揃ったようにお茶に口をつける。
なるほど、沈黙が答え。私の想像に任せるということか……と、いうか彼女達の扱う魔道具は既に【失わし遺産】の域を超えている。色々とヒントをエステリア嬢から貰っているが、私の思う答えが合っているかは未だに分かっていない。
「因みに、今回の銃弾は1発あたり、金貨100枚。3千発用意しております」
「金貨30万枚――して、支払いは如何様にすればよいでしょう?」
ひと月で使用する弾数を考えてもあまり余裕は無い……が、威力や素材の値段も含めれば確かに高くは無い。しかし、中々の出費となるな。銃自体の借款が無いだけマシとも言える。魔白金は魔法金より価格が圧倒的に高い。それを使った武器は1本で城がいくつも建てれるほどだ。
それ以上に、この付属のポーチは隠蔽しなければいけない物だ。まさかの空間収納とは……なんとも、胃が痛くなるな。
「支払いはいつものように、魔導洞窟での素材や魔石の提供と武器使用のレポート提出をしていただければ」
「了解した。今回、前回の支払いについては冒険者ギルドの方に割符を出していただければ指定額を預けているので、回収いただければ」
と、私は割符をテーブルに置く。それをステファニー様が受け取り「確かに」と、彼女はそれをメイドに渡し「いつものように」と、だけ言った。
「そう言えば、以前にエステリア様から出されていた宿題の答えなのだが、これから答え合わせをお願いしても良いだろうか?」
私がそう言うと、二人は視線を合わせてから楽しそうに「是非に」と、少女の様に――いや、一人は確実に少女なのだが――微笑んだ。
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