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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

113.悪役令嬢は旅行する その1

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 夏の長い休みがやって来ましたよ。

 ちなみに宿題? 何それおいしいの? ってくらい、小学でも上級貴族のクラスにはそんなものはありません。と、いうかビバル氏って自分の研究がメインで生徒のことなんてどうでもよいのでしょう。まぁ、ほとんどは10歳までに家庭教師から習う事ばかりなので、小学には勉強というのはあまり意味が無いと改めて感じるわけですが。

 ともかく、夏休みに入ってはじめの一週間は自分の事で忙しくてお出かけとか、一切しませんでした。まぁ、お母様と新たな研究について語り合ったり、マリーと商売の話メインでお茶会したり、リンリィと魔術というか、研究中の件に関して色々と相談したり。

 と、忙しい日々を送ってる間に一週間なんてあっという間だったということ。

 でー、休みに入るまでに色々と調整に調整を重ねて計画された旅行に向かうわけです。行き先は『アンダンテール大洞窟』に決まったわけだけど、まだ夏休み序盤ということで魔導洞窟ダンジョンアタックの後は王都に戻ってくる事になった。くっ、ハーブスト公爵領に行くのに向こうの家に戻れないとは……とほほだよ。

 まぁ、計画としては公爵家の中で速度に自身のある馬車を使って『アンダンテール大洞窟』のある街、リーニアンへ向かう。日程的には朝早く王都を出て、途中、直轄領のバラダインという街で一泊、翌日の夜にリーニアンに到着予定。

 次の日に魔導洞窟ダンジョンへ向かって、『アンダンテール大洞窟』で3日程度過ごして、同じ経路で馬車に乗って帰る計画だ。ちなみに今回、秘密兵器の馬車を三台用意してある。

 先頭車両にはアリエルの専属メイド、ナスターシアと私の専属メイド、エルーサを乗せる。2両目が私達が乗り込み、3両目は物資を積んだ馬車となる。因みにほとんどの荷物は空間収納アイテムボックスに入れて持ち運ぶので、3両目はフェイクだ。

 まぁ、アクシデントだけ無いように気を付ければ、そこまで問題になる事は多分ないでしょう。そんな事を考えながら、私は明日からの準備も終わらせて再チェックをしている最中だ。

「お嬢様。もうすでに5度も確認をしています。そろそろ寝て下さい」
「うっ、そ、そんなにしてたかしら?」
「楽しみなのは分かりました。さっさと寝ないと明日からが大変ですよ?」

 くっ、確かにそうだ。私は渋々荷物のチェックをするのを止めて、ベッドに潜り込んだ。

「あー、なんだか……寝れない……わ」

 と、言いながら即座に意識を放棄してしまった――

「……お嬢様。起きて下さい」

 私が意識を取り戻したのはエルーサの声だ。んー、超眠いんだけど。

 二度寝をしよう、などと考えつつムニャムニャとベッドの中を転がっていると、今日から旅行だった事を思い出して思わず飛び起きる。

「きょ、今日からだった!!!」
「そうですよ、お嬢様。早く起きて準備をして下さいませ」
「はぁーい」

 私は急いで起きて、エルーサに着替えさせて貰い彼女を連れて食堂へ向かった。まだ早朝だけど、夏場なのでもう既に日は出ているので外は明るい。私が今日から出かけるので、使用人達も早くからバタバタと動きを見せている。

 食堂に入ると食卓には頼んであった料理が幾つも並べられていた。

「さぁ、空間収納アイテムボックスに仕舞ってしまいましょう」
「私の持ち分は既に収納してありますので、こちらにある分はお嬢様の物となります」
「あら? そうなの」

 と、私が言うとエルーサは静かに「はい」と答えた。とりあえず、さっさと仕舞っちゃおうっと。

 数日分の食料を確保して、私達はエントランスへ向かった。

 エントランスでは既にお父様とお母様が待っており、お母様が両手を広げたので私も両手を開きお母様とがっしりハグをした。

「気を付けて行くのですよ」
「はい、お母様――」
「絶対に帰ってくるように」
「分かっています」

 お母様が心配そうにしながらも小さく微笑み、両腕の力をソッと緩め、私はお母様から離れる。当然だけど、お父様とも同じようにハグをする。

「君の実力は知っているけれど、油断は絶対にしないように」
「はい、お父様――」
魔導洞窟ダンジョンは魔境とも呼ばれているところだ、危険だと思えば逃げる事を優先に動く事。後、アリエル王女殿下にも絶対に無理をさせないように」
「分かっております、お父様」
「では、気を付けて行っておいで」
「はい」

 そうして、両親に見守られて屋敷を出た。
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