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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
159.悪役令嬢は裏切者の意図を語る
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「とりあえず、皆、落ち着きなさい」
と、私は出来るだけ落ち着いた雰囲気を見せてそう言う。アリエルはムッとした表情を崩さない。まぁ、随分お怒りモードだけど、キレ散らかさないだけ成長したと思うし、ウィンディは驚きのあまりにポカンとした顔をしている。ナスターシアはかなり落ち込んでしまっているが、致し方ない。
「まだ憶測の域を出ない話ではあるけれど、裏切者は誰かに依頼されたか、自分達もそういう思想を持っているか分からないけれど、私とアリエルのどちらかを亡き者にする。もしくはどうしようもないレベルで関係を悪化させるのが目的なのは間違いないと思うわ」
「でも、王家の影がそんな事をして利がある?」
アリエルは腕を組んで難しそうな顔をしてそう言う。まぁ、普通はリスクばかりでどう考えても何してんの? って話になるだろう。
「まぁ、王家の影で裏切った者達も理由はそれぞれだと思うけど、それをやらせた者達にとっては意味はあるんじゃない?」
「しかし、王家の影は王家に連なる者でしか命令出来ないし、そうなると母上か伯母上、父上か伯父上あたりが命令したことになるんじゃない?」
たぶん、そうやって疑心暗鬼にさせるのも重要なポイントなのかもしれない。だが、正直言ってそれもあり得ないと私は思っている。
「裏切者はどこにでもいる――可能性があるって事は常に考えておかないといけないわ。でも、さすがにお母様や陛下がそんな事を考える理由がマズ思い浮かばない」
「それは確かに――って、ことは王宮に随分と入り込める立場にいる者が黒幕って事になるけど、意外と多いわね」
「そ、どこから入り込んだか? よりも今は誰が得するか。って、ところを考えた方がいいかもね」
難しくて面倒くさい犯人捜しは両親や陛下達に任せるに限る。ただ、これは王宮内が随分と荒れるだろうし、今後、私達の行動にも随分と制限が付きそうなのが問題かもしれない。
得する相手って、今回のどの条件でも結構いるのよね。
もし、私が死んでいた場合――王家とハーブスト公爵の関係を悪化させる事が出来、且つ第一王子であるクリフト殿下の婚約者が居なくなったことで高位の貴族子女達にチャンスが生まれる。これに関しては各派閥の貴族達の骨肉の争いはあるかもしれないけど、知らん。けど、一番得をするのはパルプスト公爵でしょうね。王家の特に継承権を持つ者が一人でも減れば御の字でしょうし。下手をするとアリエルの廃嫡まで話を持っていかれる可能性もある。
これがアリエルが死んでいた場合――まぁ、貴族派は大喜びでしょうね。でも、一番喜ぶのはクリフト殿下かな。正し、私がいる時点でクリフト殿下は嫌だろうけど。んで、一番得するのはこれもパルプスト公爵なのよね。クリフト殿下の後ろ盾としても確実に地盤固め出来そうだし、王家とハーブスト公爵家の関係をさらに拗らせる手を打ってくるでしょうし、ホント性格悪いな。
そして、私とアリエル両方を失った場合――これも、同様だけど色々王宮は荒れるでしょうね。正直、あまり考えたくは無いけど色んな意味で荒れるのは確実。んで、喜ぶのはパルプスト公爵なんだよね。
ありとあらゆるパターンを考えてもパルプスト公爵は得をする。ま、現状、一番パルプスト公爵がぐぬぬって思うような展開で私もアリエルも生存で、且つ裏切者も見つけて処分は確実。問題はここから、どこまで大本までたどりつけるか? だけど、たぶん無理でしょうね。確実にどこかで尻尾が切られ、そもそも証拠なんて無いみたいな展開で、どう考えてもアイツでしょ? みたいな展開なのに、下手人として捕まえれない。
「ともかく、今回――まぁ、迷惑かけたのは私ではあるのだけど、全員無事で裏切者は捕まえた後で、実行犯の冒険者は中層に閉じ込めておいたし」
と、私が言うとアリエルとウィンディが揃って首を傾げる。ちょっと小動物っぽくて可愛いかもしれん。
「どういうこと?」
「ま、それは明日になったら分かるから。そうだ、エルーサ。ダンに閣下を呼んできて貰って」
私がそう言うとエルーサは「分かりました」と、答え部屋を出ていく。
「忘れてたけど、あれから何があったか教えてくれない?」
「ん? ああ、私達が分断されてからのこと?」
「そうそう。だってクーベルト辺境伯と二人っきりで数日間――まぁ、何かあったらアイツしばくところだけど」
さすがに紳士な閣下は幼女に手を出すような変態さんでは無い。断じて無い。
「ま、気になるわよね――」
と、私は皆に何があったのか、面倒な部分はごまかしつつ話すのであった。
と、私は出来るだけ落ち着いた雰囲気を見せてそう言う。アリエルはムッとした表情を崩さない。まぁ、随分お怒りモードだけど、キレ散らかさないだけ成長したと思うし、ウィンディは驚きのあまりにポカンとした顔をしている。ナスターシアはかなり落ち込んでしまっているが、致し方ない。
「まだ憶測の域を出ない話ではあるけれど、裏切者は誰かに依頼されたか、自分達もそういう思想を持っているか分からないけれど、私とアリエルのどちらかを亡き者にする。もしくはどうしようもないレベルで関係を悪化させるのが目的なのは間違いないと思うわ」
「でも、王家の影がそんな事をして利がある?」
アリエルは腕を組んで難しそうな顔をしてそう言う。まぁ、普通はリスクばかりでどう考えても何してんの? って話になるだろう。
「まぁ、王家の影で裏切った者達も理由はそれぞれだと思うけど、それをやらせた者達にとっては意味はあるんじゃない?」
「しかし、王家の影は王家に連なる者でしか命令出来ないし、そうなると母上か伯母上、父上か伯父上あたりが命令したことになるんじゃない?」
たぶん、そうやって疑心暗鬼にさせるのも重要なポイントなのかもしれない。だが、正直言ってそれもあり得ないと私は思っている。
「裏切者はどこにでもいる――可能性があるって事は常に考えておかないといけないわ。でも、さすがにお母様や陛下がそんな事を考える理由がマズ思い浮かばない」
「それは確かに――って、ことは王宮に随分と入り込める立場にいる者が黒幕って事になるけど、意外と多いわね」
「そ、どこから入り込んだか? よりも今は誰が得するか。って、ところを考えた方がいいかもね」
難しくて面倒くさい犯人捜しは両親や陛下達に任せるに限る。ただ、これは王宮内が随分と荒れるだろうし、今後、私達の行動にも随分と制限が付きそうなのが問題かもしれない。
得する相手って、今回のどの条件でも結構いるのよね。
もし、私が死んでいた場合――王家とハーブスト公爵の関係を悪化させる事が出来、且つ第一王子であるクリフト殿下の婚約者が居なくなったことで高位の貴族子女達にチャンスが生まれる。これに関しては各派閥の貴族達の骨肉の争いはあるかもしれないけど、知らん。けど、一番得をするのはパルプスト公爵でしょうね。王家の特に継承権を持つ者が一人でも減れば御の字でしょうし。下手をするとアリエルの廃嫡まで話を持っていかれる可能性もある。
これがアリエルが死んでいた場合――まぁ、貴族派は大喜びでしょうね。でも、一番喜ぶのはクリフト殿下かな。正し、私がいる時点でクリフト殿下は嫌だろうけど。んで、一番得するのはこれもパルプスト公爵なのよね。クリフト殿下の後ろ盾としても確実に地盤固め出来そうだし、王家とハーブスト公爵家の関係をさらに拗らせる手を打ってくるでしょうし、ホント性格悪いな。
そして、私とアリエル両方を失った場合――これも、同様だけど色々王宮は荒れるでしょうね。正直、あまり考えたくは無いけど色んな意味で荒れるのは確実。んで、喜ぶのはパルプスト公爵なんだよね。
ありとあらゆるパターンを考えてもパルプスト公爵は得をする。ま、現状、一番パルプスト公爵がぐぬぬって思うような展開で私もアリエルも生存で、且つ裏切者も見つけて処分は確実。問題はここから、どこまで大本までたどりつけるか? だけど、たぶん無理でしょうね。確実にどこかで尻尾が切られ、そもそも証拠なんて無いみたいな展開で、どう考えてもアイツでしょ? みたいな展開なのに、下手人として捕まえれない。
「ともかく、今回――まぁ、迷惑かけたのは私ではあるのだけど、全員無事で裏切者は捕まえた後で、実行犯の冒険者は中層に閉じ込めておいたし」
と、私が言うとアリエルとウィンディが揃って首を傾げる。ちょっと小動物っぽくて可愛いかもしれん。
「どういうこと?」
「ま、それは明日になったら分かるから。そうだ、エルーサ。ダンに閣下を呼んできて貰って」
私がそう言うとエルーサは「分かりました」と、答え部屋を出ていく。
「忘れてたけど、あれから何があったか教えてくれない?」
「ん? ああ、私達が分断されてからのこと?」
「そうそう。だってクーベルト辺境伯と二人っきりで数日間――まぁ、何かあったらアイツしばくところだけど」
さすがに紳士な閣下は幼女に手を出すような変態さんでは無い。断じて無い。
「ま、気になるわよね――」
と、私は皆に何があったのか、面倒な部分はごまかしつつ話すのであった。
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