悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
160 / 312
第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

160.悪役令嬢は魔導洞窟の秘密を話す

しおりを挟む
「はぁ?」

 私が話し終えた後にアリエルの第一反応がこれだ。まぁ、納得しがたいのは私も同様なのだ。偶然が偶然で偶然だったのだけど、起動出来たワケだし、元々現代人で且つソッチ系には結構強かった認識のある私には思ったより簡単操作で色々出来る、便利な玩具だったわけ。

「ま、話しただけじゃ信じては貰えないとは思ってる。あ、因みに口外禁止だし、色々と不味い情報が多分に含まれているから、即座に忘れてもいいわ」

 と、一応注意事項もつけておく。ってか賢者サルバトーレ……なんてものを残してくれてんだ。全く!

「そりゃ当然ね。で、証拠的な物品も当然あるんでしょ?」

 流石はアリエル、こういう時は妙に鋭い。そんな事を思いながら、私はとりあえず、ナスターシアには一応断りをいれて多重に防音の魔道具を取り出して、自分で認識阻害の魔法を掛けた後に空間収納アイテムボックスからスマホくらいの板というか、ほぼスマホな板を取り出す。

「はぁ?」

 呆れたような声を上げ、ちょっと王族である威厳も吹き飛ぶようなポカン顔をするアリエル。まぁ、これを見たらそうなるのも分かる。私も閣下が居なかったら確実にやってたハズだ。あの時はよく耐えれたと思う。

「これの使い方は?」
「魔力を通したら起動出来るわよ。スマホとは違うし便利なOSも無いから、どちらかと言うとむかーしにあったPDAみたいな感じかな?」
「ぴーでぃーえー??? なにそれ?」

 私も持っていたわけじゃない――と、思う。一応ボンヤリとした知識として知っているわけだが、普通は皆知らないよね。使い道も、正直言ってクエスチョンマークが浮かぶかもしれない。

「個人向け情報端末、Personal Digital Assistantの略でPDAよ。スマホが出るよりも前に存在してた奴なんだけど、ガジェット好きマニアなおじさんくらいしか持っていなかった世に出すタイミングとマーケティングをミスったある意味凄いヤツよ」
「実物触ったことは?」
「誰か忘れたけど、貸してもらったことはあるかな。でも、スマホでよくね? って、思ったわ」
「ま、そりゃそうよね」

 と、アリエルは笑いながら端末に魔力を通す。一応、アリエルに渡したのは魔導洞窟ダンジョン内の周辺地図を見れるヤツだ。

「で、これって通信機能とかあるの?」
「無いわ。完全にスタンドアロン――と、言いたいとこだけど魔導洞窟ダンジョンの管理室からは通信出来る機能はあるわ」
「なによそれ? やばくない?」

 確かに色々とヤバイことを私は言っているのだが、偶然が偶然で偶然だったのだから何を言われても知らん。と、しか言えない。

「因みに魔導洞窟ダンジョンの管理室は封印してるし、そこへ行くのもかなり手間だし、誰もそこへ行かせる気は私には無いから」
「むぅ~、ズルいぞ~」
「そうですよ~」

 そんな頬をぷっくりと膨らませても知らんものは知らん。と、いうか世に出すには現在では問題が多すぎるし、私にも分からない部分があまりにも多いし、追々研究って感じではあるけど、まずは持って帰れそうな技術――と、いうよりも術式構築に関してだけど、それはお母様と相談してからだ。

「ま、今は無理でも色々と調べて安全が確認出来ないとダメって話よ」
「むぅ、それならば……だな」
「ですね」

 アリエルもウィンディも素直で宜しい。

「まぁ、詳しい話はまた今度キッチリとしてあげるし、この技術が分かれば目指している物が作れるようになるかもしれないし、今は我慢して待っていてね」

 私の言葉に「それは楽しみだ」と、アリエルは上機嫌でウィンディも楽し気に頷いた。まぁ、とりあえずはここから帰ってからの話になるから、ここでのやり残したことをキッチリとこなしてからだ。

「とりあえず、この魔導洞窟ダンジョンから出たらただの板ってことだけ忘れないでね」
「おっけーおっけー。とりあえず、見せてね」

 そう言ってアリエルは端末に魔力を通して起動させる。ただの金属の板に見える物の表面に魔力光が走って、3次元的に現在のマップが映し出される。

「おおっ、三次元映像! ってか、ここってファンタジー世界よね? すごくSFなんだけど――ん? 表示されてるマップってなんだかおかしくない?」
「ああ、それね。映し出されているのは魔導洞窟ダンジョンとして認識されている内部が映されているわけなんだけど、ここってダンジョンの中に外の物を持ち込んで勝手に町にしているわけじゃない?」
「ああ、なるほど。こっちに勝手に持ち込んだ建物とかはダンジョンとは別扱いだから、これには表示されていないってことか」

 アリエルは納得した様子でさらに端末を弄ってマップをくるくると回しつつ、色々と調べていく。

「んー、人がどこにいるかとか分かるのってヤバイよね。それにこれって魔力量とかでデータ判別しているって感じ?」

 さすがのアリエル、理解が早い。管理者からは魔導洞窟ダンジョン内にいる者を判別する大きな点は魔力量で、この『失われた遺産アーティファクト』は管理室で全情報を統合しているわけだけど、そこからデータが送られて表示されている。これも技術的によく分からないのだけど、魔力をどういう風に判別しているか……と、いう部分と情報をどういった形で送っているかが分かれば色々と革新的な技術革命が起こるだろう。

「魔力量だけでは無くて個人が持つ魔力の波長なども判別しているっぽい?」
「なんで、疑問形?」
「だって、よく分かってないから」

 そう言うとアリエルは微妙そうな表情を浮かべる。まぁ、気持ちは分かるけど、技術的にどうやってそれを判別しているか全く分からないんだから仕方ないじゃない。

「ともかく、しばらく預けておくから、アリエルも一緒に考えてよ」
「うし、りょーかい!」

 アリエルは良い笑顔でそう言った。うん、いつもながらいい笑顔ね、この娘。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...