悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

181.悪役令嬢の母親は長男と話をする

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 現在、公爵邸の執務室――正確には長男アイザックの執務室ですが、それと公領の家令としてアイザックを補佐しているリンバーレン・デイドリアス子爵がアイザックの側で凛とした雰囲気で立っている。

 デイドリアス子爵はハーブスト公爵家の直臣貴族の一人で、王宮にも幾人も役人やメイドを輩出している官吏としては名家といえる家の当主で、旦那様の忠実な配下の一人です。

「母上、お久しぶりですね」
「ええ、昨晩は予定と違いゆっくりと挨拶をしている時間でも無く、バタバタとして申し訳なかったわね」
「いえ、エステリアの事が絡んでいるというのは先触にて知っていたので、問題ありませんよ。いつもの事ではありませんか」

 アイザックは父である旦那様によく似た甘いマスクでそう言った。少しだけ、この子は優しすぎるきらいがある。まぁ、悪い事ではないのですが、次期ハーブスト公爵としては少し心配がある――と、いうくらいで、私と旦那様の子なので当然と言っても良いほどに優秀なのは間違い無いのです。

「それにしても、また何か新しい事を始めるのですか? まぁ、我が家が潤う事を考えれば悪いとは言いませんが」
「悪いわね。でも、残念ながら自重する気は無いわ。アイザックには苦労を掛けるかもしれないけれど、貴方なら大丈夫だと信じているわよ」

 と、私が言うと彼は小さく苦笑した。

「そう言ってくれるならいいんだけどね。母上、収支報告はキチンと父上にも出しているから、知っているとは思うけれど、今回はそういう理由で来たって感じじゃないよね?」
「――ええ、旦那様と話し合って出来るだけアイザックに任せる方向で私達は見守るだけにするというのは変わらないわ。今回は本来エステリアの商会からの資金を動かすよりも、我が家が出すべきだという案件があったの」

 そう、本来は執務室には来る予定は無く、今日はエステリアが齎したアレの解析を進めるつもりだったのだけど、エステリアとリンリィから出た話を実現化する為の下準備をするつもりで、アイザックの執務室へやって来たのだ。

 本来は王族からも出資を――とも、思ったのだけど、色々と後で面倒がありそうなので、後から王族からの承認という形を取った方が良いと判断した結果で、まずは我が家が金を出す。と、いう部分が大事だと考えた結果よ。

 旦那様とも一応、連絡を取った上で許可を取っている。

「それは一体?」
「高度な専門的学術研究を行う学舎――そうね、『ハーブスト魔術大学園』とでもしましょうか。高学では教えない、応用学や【失われた遺産アーティファクト】の研究、新規魔術の開発や魔導技術に関する学園。高学の上である大学の設立よ」

 と、私が言うとアイザックは興味深そうな視線を向け、家令のデイドリアス子爵は不可思議といった視線を向けて来る。

「奥様。宜しいでしょうか」
「ええ、何かしら?」
「現在、南方からの国々との貿易も制限しており、アンダンテール大洞窟も封印。お嬢様が名目上持っておられる商会からの税金が多く入ってはいますが、公領のみの資産で言えば、今後を考えると不安が多い状況で御座います。それに東方諸国に良からぬ動きがみられると報告がありますし、急ぐべき案件とは到底思えないのですが?」

 デイドリアス子爵のいう事は最もではあります。しかし、現状、我が家が持つ技術というのはミストリア内でも逸脱している状況になりつつあり、私やエステリアが生み出す技術がある程度ミストリア内に広がらなければ、これ以上の発展は厳しい――と、いうよりも、我が家だけが目立ちすぎる状況というのを避ける為の目くらましとしても必要なのです。

 貴族というものは特に嫉妬深い者が多い。より多くを持っている者を見れば、自分も欲しがるのだ。それが簡単に手に入らないとなると、今まで味方でいた者さえも敵になる可能性がある。

 そして、私が応用魔術理論を発表してこなかった理由の一つでもある。ただ、王家も重用し始めている魔道具の彼是が既に噂として広まり、一部、冷凍や冷蔵関連の商品など生活を便利にする魔道具も流通し始めている状態だ。

「我が家に近しい家では既に流通上、冷蔵馬車や冷凍馬車が多く出回っているでしょう? 王都でも目ざとい貴族家には空調の魔道具など、手に入れれないか? その技術がどうなっているのか? 話題になって来ております」
「――なるほど。我が領が狙われている。と、いうことですね。しかし、大学などを作ればさらに言われるのでは無いですか?」
「そこはある程度はあるとは思うけれど、そこでそういった魔道具に使われている技術体系を学べるとなれば、多少は緩和されるでしょう?」
「しかし、それも誰彼構わず教えるというのは問題が多いのでは?」

 それは当然だ。エステリアとリンリィの話によれば、高学より上の位置づけなので当然、高学を卒業している事が最低条件。そして、入るにも当然、ある程度理解出来ている基礎学力があるということを示す為の試験制度を設ける。

「いいえ、高学卒業者で且つ、大学入試の試験を受けて合格した者のみが入れる学舎にします。そして、大学課程を全て納めた者には魔導学士を与える――と、いうことを考えています」
「かなり大規模な話ですね。なるほど、今から準備しても実際に設立までは数年掛かりそうですね」
「ええ、それに私が持つ知識を教えられる者を育てる時間も必要です。今回はあくまでも私がそういう事を考えている。と、貴方達にも分かって貰えればよいのです。ただし、出資金については即座に検討を始めるように。こちらは他にも方法はあるのですが、我が領の価値を高めつつ、我が領へ簡単に手出しをするなよ? と、いう策でもあるのです」

 我が長男と家令の二人は私の言葉に真剣な瞳をこちらに向けて小さく頷くのでした。
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