悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第四章 悪役令嬢は王女と共に戦場を駆ける

281.悪役令嬢は捕虜達に握らせる

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 アンサルド砦を破壊してから約三日経ち、本日は超好待遇した捕虜たちを逃がす決行日となり、アンサルド砦の広場に捕虜たちを集めた。

 当然、不安そうな表情をした者達ばかりで、周囲には武器を持った者達に囲まれているわけだから、当然と言えばその通りなのよね。普通の感覚なら、今朝食べた食事が最後の晩餐かと思った者も多くいるでしょう。因みに今朝の捕虜たちのメニューはあらびきハンバーグとポテトサラダ、葉物野菜のスープ、デザートはプリンだ。なお、私達は朝食はサンドイッチと軽めにした。流石に朝からハンバーグは重い。

 そして、ずずいっとアリエルが前に出て高らかに言うのだった。

「さて、これより君達に色々と選択させてやろうと思う」

 彼女がそう言うとナスターシア達が次々と帝国共通金貨が入った袋を積み上げていく。敢えて、音がするようにちょっとだけ乱暴な扱いなのがポイントなのよね。金貨特有の音が響き、彼らは何が行われるのかさらに不安が増していく。

「君たちは戦に負け、我々の捕虜として数日経つわけだが、我々はこれから進軍を開始して城塞都市パーレンダムを攻略する予定だ。この砦を破壊したのはこの私の魔法だが、我々はあの程度の魔法であればいくらでも放つ事が出来る。正直、君達のスーリアルでは我々と相対することさえ敵わぬだろうな。あまりにも弱い、弱すぎて驚くほどだ。それにこの戦は君らが仕掛けて来た戦だ。国境まであのような大軍を動かすとはあまりにも愚か、愚かしすぎる」

 と、アリエルの言葉に捕虜の一部は怒りにも似た雰囲気を見せるが、多くの者は何か恐ろしいモノを見ているような感じで戦々恐々としている。

「まぁ、そんなことは君らには関係ないな。我々は進軍するにあたって、多くの捕虜の面倒を見るという事は止めようという意見があってな。当然、私もそれを支持した。我々は君らをこれ以上食わせる気は無い! と、いうことだ」

 そう言うと捕虜の中から「ふざけるな!」とか、「殺すならさっさと殺せ」みたいな声が上がる。まぁ、確かにふざけてはいるんだけどね。中には絶望した表情で「やはり最後の晩餐だったか……」と、呟く者もいたわけだけど、アリエルはそんな者達を見下すように笑う。

「くっくっくっ、殺す? そんな面倒な事をする意味は無い。我々は君らを解放しようと思っている」

 アリエルの言葉に多くの者達が呆けたような顔をして黙る。まぁ、普通に考えると何を言ってるんだ? って、なるわよね。

「でだ、流石に着の身着のままの状態で君達を放り出すというのも、我々としては忍びないので、私は非常に心優しいからな。ここに積まれている金子の入った袋を持っていくが良い」

 その言葉に多くの者達がゴクリと生唾を呑む。が、不審に思っている者も多いだろう。中身が見える訳でも無く、音としては硬貨が入っていることは確かだけど、それが金貨とは限らないわけだし。そして、アリエルはその中の一袋を手に取って、袋を開けて中に入っている帝国共通金貨約30枚を地面に振り落とした。

「――おっと、一歩でも動いたら殺す。スーリアルでも使えるように帝国共通金貨を用意した。30枚もあれば、しばらくは生活にも困らぬだろう。この国では戦で負けた兵士達は奴隷落ちなのだろう? それを持って、逃げれると良い。これから、名を呼んでいく。私は優しいからな、これからどうしたいかを質問する。その答えいかんによって、金貨の入った袋を手にここから出て行って貰おう」

 と、彼女は魔力の籠った圧を掛ける。まぁ、相手が気絶しないくらいの加減が出来ているところはアリエルの優しさというところでしょうね。そして、名簿を受け取ったアリエルは捕虜の名前を呼ぶ、呼ばれた者は緊張した面持ちで彼女の側にやって来る。

「さて、お主はどうしたい?」
「あ、あのっ、お――わ、私は、い、いえ……あ、あの……本当に金子を頂けるのでしょうか?」
「ああ、そうだなぁ、方々で我らミストリアの栄光と脅威を語ってくれるのであれば、喜んでやろうではないか」

 アリエルは中々に邪悪な可愛らしい笑みを浮かべてそう言った。なんとも、見ていて思わず吹き出しそうになったけど、なんとか我慢出来たわ。

「ははっ! 貴女様の仰る通りにさせて頂きますぅ!!!」
「うむ、これを持って、早々に立ち去るが良い」

 と、男は金貨の入った袋を手にして、何やら喜びの声をあげながら速足で砦から出て行く。そうして、同じようなやり取りをほとんどの者として、捕虜の大部分が砦から出て行く。

 が、数十名の者が出来ればミストリアに行き、市民権を得たいという旨の申し出をしてきた。まぁ、これもある程度は予想通りではあった。そして、彼等は奴隷だった者であり、天涯孤独の者だった。

 まぁ、彼等にもキチンとした教育と仕事を与える約束をして、後方へ送った。

「さて、これからどうするかな? スーリアルの者達は……」

 と、アリエルが楽しそうに言うのだった――けど、このままだと、スーリアルを滅ぼしかねないのよね。と、私は小さな不安を感じていた。
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