α上司の最善ではない恋

空気綺麗

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はじまりは偏見から

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 俺が入社した会社、青栄システムズは、ITソリューション提案やDX導入支援を行う中堅SIer企業だ。
 就活のとき、将来困らなさそうな業種がいいと思って、なんとなくIT業界を志望した。

 機械系みたいな理系学部出身だったわけでもない。
 ただの経済学部卒で、一般教養でプログラミングの授業を少し取っていたくらいだ。
 コードが書けるわけでもないし、「ITって、今の社会どこでも必要だから、無くなりそうにない業界だな」くらいのふわっとした印象で選んだ。

 研修期間を経て、営業に配属されたときも驚きはなかった。
 文系で、技術に詳しくもない俺が採用された理由なんて、営業の枠だろう。
 それくらいのことは、なんとなく察していた。


 研修最終日、同期との打ち上げの飲み会では、配属先の話で持ちきりだった。
 うちの会社では、新卒の配属先は営業職かエンジニア職に分かれる。研修中もなんとなく職種ごとにグループができていて、この場でも乾杯の挨拶が終わると自然と分かれて座っていた。

 営業職の中でも、担当はそれぞれ異なる。新規か既存か、企業か団体か、業種は何か。
 今日渡された名刺には営業部以下の所属まで記載されていて、それを眺めながら、みんな自分の配属先について推測混じりに語り合っていた。

 俺の所属は「法人営業課 DX推進室」。
 説明会とかでの話を聞く限り、中小企業向けの営業がメインの部署らしい。

「――あ、その部署、説明会で話してた人のとこだ」

 隣に座っていた新山が反応した。研修中のグループが同じで、いま一番気楽に話せる同期だ。

「え、どんな人だった?」

「なんかすごそうな人。転職してすぐ、案件いくつも取って、若くして室長になったって。学生に“年功序列じゃない、若手でも努力次第でチャンスのある会社”だって印象づけるために、たぶん前に出されてたんじゃないかな」

 そんな会話をしていたとき、横から酔った声が飛んできた。

「いや絶対そいつαじゃん! αだからすぐ出世出来たんだろ。 俺らβじゃそんなの無理無理、ノーチャンだって。」

 ――松田。
 同じ営業職の同期で、リーダーシップがあり積極的に話を進めてくれるものの、思ったことをすぐ口に出すタイプだ。軽く酔っているとはいえ、相変わらずのデリカシーのなさだ。

 でも、誰もが心のどこかで思っていることでもあるのだろう。
 かくいう俺も、室長がαだと知って、正直やりづらいなと思っていた。

 その後も飲み会では、他の同期たちの配属や担当業務の話を聞いてはいたものの、俺はどこか上の空だった。
 ずっと頭の片隅に残っていたのは、室長の存在。
 若くして出世出来る能力が実力ゆえだとしても――いや、実力だからこそ、俺とは住む世界が違う気がして、
「……配属先、変わんねぇかな」
 なんとなく、そんなことを思っていた。

 その気持ちは、出社するまで、いや出社してもずっと続いていた。
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